2012年02月06日

自閉症児をもつ家族のためのセカンドハウス(20)

これまであまり前例のない、「自閉症児と家族のためのセカンドハウス選び」というシリーズ記事の、第20回です。
今回と次回は、実際の活用について書いていきます。この2回の記事で、このシリーズもようやく終わりを迎える予定です。



7.セカンドハウスを活用する

さて、これまで書いてきたようなプロセスを経て、晴れてセカンドハウスとして観光地エリアのリゾートマンションが手に入りました。
せっかくの高額な買い物ですから、ぜひ積極的に活用しましょう。

まずは、必要最低限の家具や寝具を用意する必要があります。

我が家の場合、家族分の寝具とリビングに小さなテーブル1つだけ、というところから最初の宿泊に挑戦しました。
引越し業者に頼むのも面倒なので、マイカーに寝具を少しずつ詰め込んで、まず私が荷物だけを積んで自宅とマンションを2往復ぐらいして自分だけが泊まる、というのを2回ほど繰り返して、何とか家族分の寝具が運べたところで家族全員で泊まってみることにしました。

最悪、娘が大パニックを起こしてすぐに売却を余儀なくされるかもしれない、と思ってそうした(最小限の寝具だけを用意した)わけですが、そうでなくても、必要なものは実際に活用しながらだんだん分かってくるものですから、最初からいきなり豪華な家具を揃える必要はまったくないと思います。

実際、購入から5年以上たった現在でも、リビングには最初に買ったテーブルと小さなテレビ(最近、地デジチューナーと余ったPCモニタという構成に変えました)、カラーボックス1つくらいしかありませんし、寝具も増えていません。実に殺風景な部屋ですが、このほうが身軽で使いやすいです。

私たちの目的はリッチなリゾートライフにあるのではなく、「自宅以外の活動練習、外泊練習の拠点」なのですから、むしろ普通の生活感のある環境を作っていくほうがいいですよね。

ちなみに、寝具を揃えるときは、「カビにくいもの」「水分を含みにくいもの」を選ぶほうがいいと思います。
とにかくリゾート物件(というより、定住しないセカンドハウス全般)は、カビ問題の発生を避けることが重要です。
我が家では、敷布団の代わりにマットレス、掛け布団は通販で売っている安い羽根布団や羽毛布団、毛布は化繊、というようにして、綿の寝具をを徹底して避けました。

利用を始めてしばらくは、あまり無理をせずに、子どもの様子をうかがいながら、少しずつ慣れていってもらうのがいいと思います。
子どもの調子がよさそうなとき、天候がいい日に、たまたま余裕ができた日にすぐに思い立って外泊できることこそがリゾートマンションのメリットです。
逆に、お子さんの調子がよくないときには無理せず予定をキャンセルして、お子さんだけでなく、家族全員が「成功体験」をうまく積み上げていけるように工夫して、少しずつ活動の範囲を広げていきましょう

何度か通って周辺の観光地をひととおり回っていくと、一般的な意味では、そのエリアに「飽きて」くると思います。
観光地然とした施設は、短期間のあいだに何度も通いたくなるようなものではないことが少なくないでしょうし、同じ場所を拠点にして、同じエリアを何度も観光すると、恐らく予想以上に速いペースで、そのエリアの風景が「日常の風景」になり、観光地に初めて訪れたときのような意味での「新鮮さ」は急速に薄れていくことでしょう。

一般的な家庭でリゾートマンションを購入した場合、おそらく、このように予想以上に早く訪れる「飽き」によって、人によってはあっという間に利用頻度が下がっていったりするもののようですが、自閉症児のいる家族の場合、このある種の「陳腐化」の後にこそ、楽しい観光体験ができるようになるケースも多いと思います

我が家は実際にそうでした。

お子さんがマンションに外泊することに慣れ、いくつかの「定番観光地」が決まってそこに繰り返し訪れることができるようになり、多くの場面で見通しをもって落ち着いて行動できるようになってくることで、家族全員がリラックスした気分で観光ができるようになっていく、そういう可能性が期待できるように思います。

セカンドハウスの本当の面白さ、味わいは、「飽きたあと」にこそ始まる、そう思います。

そのためにも、物件選びの段階から、出かけるプロセスにストレスがなく、楽しんで目的地に迎えるような物件を狙っていくことも重要になります。
所要時間が長すぎたり、毎回渋滞にはまってイライラしていては、「飽き」がすすむにしたがって足が遠のいてしまうでしょうから。



(次回に続きます。)
posted by そらパパ at 21:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 療育一般 | 更新情報をチェックする
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