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2006年11月07日 [ Tue ]

新しい認知心理学から自閉症を考える(20)

前回、前々回で、「弱い一般化処理」のモデルに適合するカナー型自閉症児への療育の3本柱として、以下のものを示しました。

@構造化
A(方法論的)行動療法
B無理な汎化を求めない


驚くべきことに、TEACCHの理念や方法論とほとんど重なってしまいました。特に、Bのような「療育哲学」に近いようなものまで重複しているという事実は、現場の深い経験から導かれたTEACCHの考え方の妥当性、合理性、先見性について、理論面から新たな光を当てるものなのではないかと思います。

さて、それでは最後に、アスペルガー型の「強すぎる抽象化処理」のモデルが適合する自閉症児への療育アプローチについても考えてみましょう。

「強すぎる抽象化処理」の自閉症への介入モデル

実は、「強すぎる抽象化処理」に該当する自閉症児への働きかけも、先ほどの「弱い一般化処理」の場合と大きくは違いません。

構造化、行動療法、無理な汎化を求めないといった「3本柱」もそのまま適用できるでしょう。

ただし、この3つの「重みづけ」と、目指すべき目標の高さが違ってくると考えられます。

このモデルでは、脳の「処理能力」だけを考えると、健常児と比べて劣っている部分はどこにもありません。もちろん、このモデルは単純化された『極端な例』ですから、実際には脳の処理能力全体にある程度のダメージを抱えているケースのほうが一般的だと考えるべきかもしれませんが、少なくとも最大の問題は「処理能力のアンバランス」にあるのであって、「処理能力そのもの」にはないのです。
ここが、先の「弱い一般化処理」のモデルとの最大の違いです。

ですから、このモデルに当てはまるお子さんの場合、構造化・行動療法・無理な汎化を求めない、という3本柱の意味合いも、純粋な意味でのTEACCHとは多少異なり、よりアグレッシブな意味合いを持たせることができるのではないかと考えられます。

@構造化
 余計な情報の遮断が中心になるでしょう。イヤーマフやタオルケットなどを使った感覚遮断や静かな環境を用意することで、課題に集中できる環境を作ったうえで、必要に応じてTEACCH的な空間・作業の構造化についても配慮します。
 子ども本人へのインタビューや行動観察から、どのような感覚異常、知覚異常の傾向が強いかを評価して必要な対応を行ない、分かりやすく見通しのもてる療育スケジュールを設定して子どもが楽しく課題を遂行できる環境を整えましょう。

A行動療法
 適切なフィードバックと環境の整備を行なうことによって、理想的には健常児と同等の「大きなフィードバックループのサイクル」を回すことができると考えられますので、本人の適性に合わせながら、行動療法的な働きかけを積極的に行なっていくのが望ましいと思います。
 特に机に座って集中するようなフォーマルトレーニングへの適性が高い場合は、いわゆるハードなABA、集中介入によって大きく状態を改善できる可能性があると考えられます。
(私個人はいわゆるロヴァース型の早期集中介入にはあまり肯定的ではないのですが、彼らが示す「目覚しい効果」をあげた自閉症の子どもというのは、恐らくここでいうモデルに当てはまった子どもなのではないかと推測します。)

B無理な汎化を求めない
 基礎的な日常生活や簡単な会話に関しては、特に慎重な配慮がなくても、十分汎化が進んでいくでしょう。おそらく残されるのは、コミュニケーションの問題や、複雑な社会性の問題だと思われます。(別の言い方をすれば「深い階層や条件構造を持つ非線形分離課題」です。)
 この仮説が示す方向に従うとすれば、RDIのように、こういった複雑な問題にまで無理に汎化を求めるよりは、ソーシャルストーリーのように、さまざまなシーンを個別のルールとして単純化して教え、適応度を上げる方向性のほうが正しい可能性が高いことになります。恐らく、このタイプの子どもは普通の子どもよりはるかに多くの「ソーシャルストーリー」を記憶する力を持っているはずです。
 この説が正しければ、ソーシャルストーリーとは社会的行動の「汎化」を目指すというよりは、むしろ複雑な社会的行動の汎化が難しいことを前提にした療育として位置付けるべきだということになります。

C療育の目標
 環境の整備と適切な介入によって、発達指数・知能指数が同等の健常児の水準にまで状態を改善できる可能性があります。もちろんそれでも、複雑な社会性についてはずっと困難が残るでしょうから、必要なサポートを与える必要はあります。

最後に繰り返しになりますが、「弱い一般化処理」のモデルも、「強すぎる抽象化処理」のモデルも、どちらも自閉症の両極端の姿をモデル化したものですから、実際の自閉症児のほとんどは2つのモデルの混合、ないし中間に該当すると考えられます。
したがって、上記である程度明確に区分して提示した2つのモデルに対する療育方針についても、実際には適切にブレンドして、子どもに合わせた「中間点」を見つけていかなければなりません
幸い、実際にやるべきことは、@構造化、A行動療法、B無理な汎化を求めない、この3つで共通していますから、まずはこの枠組みを構築することを最優先にして、その中でどのような療育を具体的に進めていけばいいのかを、子どもの状態をみながら調整していけばいいのではないかと思います。

[関連文献]
1) アスペルガー症候群の感覚異常に関する本


アスペルガー症候群と感覚敏感性への対処法
著:ブレンダ・スミス・マイルズ 他
東京書籍

2) ハードなABAを志向する本


自閉症を克服する―行動分析で子どもの人生が変わる
著:リン・カーン ケーゲル、クレア ラゼブニック
日本放送出版協会 (レビュー記事

自閉症児の親を療育者にする教育―応用行動分析学による英国の実践と成果
著:ミッキー・キーナン、カローラ・ディレンバーガー、ケン・P. カー
二瓶社 (レビュー記事

わが子よ、声を聞かせて―自閉症と闘った母と子
著:キャサリン・モーリス
日本放送出版協会

3) ソーシャルストーリーに関する本


マイソーシャルストーリーブック
著:キャロル・グレイ、アビー・リー・ホワイト
スペクトラム出版社

お母さんと先生が書くソーシャルストーリー―新しい判定基準とガイドライン
著:キャロル・グレイ
クリエイツかもがわ

ソーシャル・ストーリー・ブック―書き方と文例
著:キャロル・グレイ
クリエイツかもがわ

(次回に続きます。)

posted by そらパパ at 22:32 はてなブックマーク | コメント(2) | トラックバック(0) | そらまめ式
この記事へのコメント
 このシリーズは、今日初めて読みました。
 なぜならば、私の中で、自閉症の構造についての仮説が一つ形をあらわしたからです。
 ある情報を頭の中で{意識}して、{処理}していく機構(解剖学的には基底核の一部)自体が障害されているのでは、という仮説です。先行研究を読み込まなきゃね、と、覗かせていただきました。まあ、動物しか扱っていない私の{仮説}は素人のアマアマちゃんな妄想なんですけど。
 一般化と抽象化の二つの処理工程が興味深いですね。ヒトではそういう二つが分化しているかもしれません。ラットでは、実証しづらそうだなあ。
 また、SSTについてさらりと書いていらっしゃることが、わが子を顧みて、なるほど、と思いました。クイズを通してSST関わりをして、すぐ正答を導き出せるのに、汎化の力が驚くほど弱く、実生活ではまだ殆ど役立たないのです。想像の10倍くらいのソーシャルストーリーのバリエーションを入力してあげないと、彼女のちからになれないのかもしれません。
 まだよんでいきます。
 
Posted by しまなみ at 2013年06月27日 12:23
しまなみさん、

コメントありがとうございます。

これまた古い記事にいらっしゃいましたね(笑)。

ちなみに、このシリーズ記事で書いていることは、さらに整理・発展させて本に書いています。拙著としては1冊目の「自閉症〜「からだ」と「せかい」をつなぐ新しい理解と療育」がそれになります。(ブログ右上にあります)

もし興味をおもちであれば、どうぞ(もしかすると、1冊目はそろそろ入手困難になりつつあるのかもしれないです)。(^^)
Posted by そらパパ at 2013年07月02日 00:05


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