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2006年10月16日 [ Mon ]

新しい認知心理学から自閉症を考える(7)

脳の学習における「抽象化」と「一般化」とはどんなものなのかについて、詳しく説明してきました。

「抽象化」「一般化」の情報処理イメージ
↑「抽象化」「一般化」の情報処理イメージ

ここまでの議論をふまえれば、「抽象化」の能力が弱く、情報量が過少であるときに「一般化」がうまくいかないことは当然に理解できるでしょう。
それは簡単にいえば、個々の個別事象の経験が「情報」として蓄積されていない状態を意味しています。情報が十分になければ、その情報から一般化されたルールを導き出せないのは当然のことでしょう。

ここで一瞬、このケース(簡単にいえば、記憶障害)から自閉症を説明したくなる誘惑に駆られますが(実際、「記憶の障害」で自閉症を説明しようとする仮説も結構ありますね)、冒頭にご紹介した「個別的な記憶が優れている」「記憶を司る脳領域が発達している」などの二重解離の問題を解決できませんから、不適切な仮説だと判断せざるをえません

では、逆のケース、つまり「抽象化された情報が多すぎる」と、どうなるのでしょうか?

コネクショニスト・モデルのシミュレーションで、一般化モジュールが扱うのに適正な量を超える「多すぎる」情報を与えられると、一般化モジュールはオーバーフロー(処理能力超過による誤った挙動)を起こします。
それによって起こることは、大きく分けて、次の3つのうちのどれかだと考えられます。

1) 過剰な適応
2) 誤ったルール化
3) ルール化の失敗


これも、前回使っていた「名前を呼ばれて振り返る」という例でかみ砕いてみましょう。

1) の「過剰な適応」とは、本来除くべき「余計な情報」まで飲み込んだ形でルールが形成され「一般化」されてしまうことを言います。

これは例えば、「居間で」「母親が」名前を呼んだときしか振り返らない、といった状態に相当します。「居間で」とか「母親が」といった、一般化の際に除かれるべき事象まで含めてルールを作るという「過剰な適応」が起こってしまっているわけです。
こうなると、外で名前を呼ばれたり、母親ではなく父親や先生が名前を呼んでも振り返りません。これは、一般的な療育のシーンでは「汎化の失敗」と呼ばれる状態であり、自閉症児の療育において極めてしばしば直面する問題です。

2) の「誤ったルール化」とは、正しくない手がかりに基づいたルール化が起こってしまうことを言います。

この例では、本来最も重要なはずの「名前を呼ばれる」がルールから除外されて、例えば「手を叩く」ことに対して「振り返る」という行動が学習され、名前を呼ばれるだけでは何の反応もない、ということが起こりえます。
これも自閉症児の療育においてしばしば見られる問題で、例えば人を区別するのに、本来参照すべき顔のパーツではなくメガネや服装といった手がかりを参照してしまうとか、課題などをやらせようとしても、教材の関係ない要素(背景とか枠とかゴミなど)にばかり注目して肝心の要素に基づく学習が進まないといったことがよく起こります。

3) の「ルール化の失敗」とは、本来経験を重ねることで収束していき、「ルール」が作られるはずの一般化モジュールの処理容量がまったく足りずに発散して、ルールが作られず、「なかったこと」になってしまうことを言います。

先ほどからの例で考えると、「振り返る」という行動がどの個別要素ともつながらなくなり、学習されずに消えることを指します。
これも、さまざまな行動の学習が極めて困難だったり、一度習得したはずの行動が容易に消えたりする、自閉症児の姿とダブって見えます。

こうやって見ると、一般化モジュールがオーバーフローした場合に起こるネットワークの挙動と、自閉症児が実際に見せるさまざまな学習上の困難との間に数多くの共通点が見られることが分かります。
これだけでも状況証拠としては相当強力ですが、次回からは、このシリーズ記事の冒頭で紹介したさまざまな二重解離の難問や、その他の自閉症の謎についても、この仮説から説明していきたいと思います。

[関連文献]:今回の内容に最も近い本はこちらです。(再掲)

脳 回路網のなかの精神―ニューラルネットが描く地図
マンフレート シュピッツァー
新曜社 (レビュー記事

(次回に続きます。)

posted by そらパパ at 22:48 はてなブックマーク | コメント(0) | トラックバック(1) | そらまめ式
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