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2006年10月10日 [ Tue ]

新しい認知心理学から自閉症を考える(4)

認知心理学的自閉症研究が直面する困難は、「人工知能研究の挫折と復活」という歴史的視点から見ると分かりやすいように思います。

つまり、最大の問題は、これまでの認知心理学的自閉症研究が、いまだ「古い人工知能」の世界観(古典的計算主義)から脱却できていないことにあるのではないか、と感じるのです。

これらのアプローチは、環境と関わる主体としての「からだ」を扱わず、感覚器から入力される「感覚」から「知覚」、さらには「認知」と上っていくような、脳内にこもった感覚情報処理モデルを採用しています。特に、バロン・コーエンの「心の理論(マインド・ブラインドネス)」の仮説はそういう傾向が強いように思います。
情報処理過程についても、いくつかのモジュールを固定的なものとして仮定し、その中をデータとしての情報が流れていくという、いわゆる古典的計算主義に立っています。

私は、こういったアプローチを続けている限り、認知心理学から自閉症の問題をこれ以上掘り下げていくことは難しいのではないかという印象を持っています。
特に気になるのが、自閉症が「発達」障害であり、ヒトやモノといった「環境とのかかわり」に困難を持つ障害であるにも関わらず、こういった古いアプローチではこれらの領域をほとんど扱わない(扱えない)という点です。
(恥ずかしながら、私の最初の仮説「知覚の恒常性障害仮説」も、環境の知覚とかかわりの問題に踏み込みかけながら、結局「知覚の恒常性」という、古い「感覚→知覚→認知」の枠組みからものを考えていました。認知心理学者にとって、このマインド・セットから抜け出すことはなかなか大変なことだという気はします。)

では、どうすればいいのでしょうか?

そこで出てくるのが、「認知過程のシミュレーション入門」ほかで語られているコネクショニズムからの自閉症のアプローチに、環境との相互作用する「からだ」の概念を取り入れた、私のオリジナルの仮説、「一般化障害仮説」なのです。

この「一般化障害仮説」は、カテゴリとしては同じ「認知心理学からの自閉症へのアプローチ」に入りますが、中身は相当に違います。
このアプローチにおいてはまさに「発達」と「環境とのかかわり」、この2点に明確に焦点が当てられ、ここから自閉症を説明しようとします。

このような大きな転換の背景には、第一にこの仮説がコネクショニスト・モデルに基づいており、認知心理学における脳の情報処理モデルとしては一世代新しい考え方になっていることがあげられます。
コネクショニスト・モデル自体は必ずしも環境と相互作用する「からだ」を考慮しませんが、私が今回提案する仮説では、その部分にも焦点をあて、既にご紹介したような、昨今のロボット工学に近いアプローチを取ります。

もう1つ、コネクショニスト・モデルによるアプローチでは、コンピュータシミュレーションによってより具体的な仮説検証ができる、場合によってはシミュレーションの結果から新たな発見もできる、という点も見逃せません。
従来の認知心理学的アプローチが本質的に持っていた「机上の空論」「検証不能」「わからないものをわからないもののせいにする」といった問題が、かなり解決されています
もちろん「シミュレーション=現実」ではありませんが、脳が複雑系である以上、現実のモデルとしてシミュレーションを扱うのは正当なことであり、コネクショニスト・モデルによる心理学は、同じく複雑系である気象予報やウィルスの拡散予測と同程度に科学的・実証的であると言うことはできるでしょう。


↑以前ご紹介した、コネクショニズムで扱われるネットワークモデルの一例。

・・・前置き的な文章だけでずいぶん長くなってしまいましたが、自閉症研究における「認知心理学的アプローチ」とはどんなものなのか、そのようなアプローチが現在直面している困難とはどんなものなのか、そしてそれを解決する糸口として、なぜ私がコネクショニズムに基づく認知心理学に強い期待感を持っているのかについて、理解していただけたのではないかと思います。

次回からは、いよいよ「一般化障害仮説」の中身について書いていきたいと思います。

[関連文献]:コネクショニズムに関する入門書


考える脳・考えない脳―心と知識の哲学
著:信原 幸弘
講談社現代新書 (レビュー記事

ロボットの心―7つの哲学物語
著:柴田 正良
講談社現代新書 (レビュー記事

コネクショニストモデルと心理学―脳のシミュレーションによる心の理解
著:守 一雄 ほか
北大路書房

(次回に続きます。)

posted by そらパパ at 22:44 はてなブックマーク | コメント(0) | トラックバック(0) | そらまめ式
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