2006年09月05日

旅行で気づいたこと

今回、久しぶりに実家以外の場所へ「旅行」に行ってみて、気づいたことがいくつかありました。
妻のブログと多少内容がかぶりますが、違う視点から見た娘の様子ということで、書いてみたいと思います。

最初は、旅行とは直接関係ありませんが、妻のブログにも書いてあったとおり、いつの間にか、「がいしょく」という絵カードへの強い(そして狭い)こだわりができていることでした。


↑この写真は今回の旅行のスケジュールではありませんが、「がいしょく」というカードがあることが分かると思います。

今回、旅行初日の午前中は病院での療育に参加して、療育後に病院の食堂で食事をして、それから旅先に向かうという予定を立てていました。
そこで、絵カードは「りょういく」→「がいしょく」→旅行の行き先という順番で掲示していたのですが、これが結果としては良くありませんでした

というのも、どうやら娘にとって「がいしょく」のカードはフードコートやファーストフードのような「お店」で食べることを意味しているようで、療育のあとに病院の食堂に連れて行ったとたんに、普段は喜んで食事をする食堂で大パニック。
結局娘はほとんど何も食べられませんでした。

絵カードによるスケジュールの提示は、見通しを持たせるという意味では確実に効果が出ていると思いますが、今回の経験は、うまく工夫しないとコミュニケーションにずれが生じてしまうという生きた失敗例だといえますね。
食事用のカードについては、別のカードも併用するようにして、この既存の「がいしょく」カードに対してできてしまったこだわりをコントロールしていこうと考えています。

そして、何よりもはっきり分かった娘の変化は、「初めての場所」に強い不安反応を示すようになったことでした。

初日、ホテルに着いて部屋に入ったとたんに、これまで見たこともないくらいのすさまじいパニックが始まりました。母親の体にびったりとしがみついて絶対に離れようとせず、しかもその状態でも不安が解消されないのか、大声で叫びつづけます。(ドアを閉めていても外には筒抜けの大音量)
ここから、30分たってもまったく状態が変わらず、夫婦ともどもこれはさすがに泊まるのはムリかと思い始めたのですが、私のアイデアで、思い切って、あえて娘を母親から「分離」してみることにしました。
というのも、母親にしがみついて泣いている状態では、慣れない部屋にいつまでたっても「慣れていく」ことができません。
どうせ泣くんだったら、泣きながらでも部屋に少しずつ慣れていってもらえば、もしかするとやがて収まってくるかもしれない、と思った私は、娘を母親のひざの上から降ろし(実際、重い娘を抱き続けるのにも限界があったので)、地団太を踏んで泣きじゃくる娘の手をとって、部屋の中をひたすらぐるぐるぐるぐると回りつづけました。
ちょうど、部屋の片隅の床の間のような場所に姿見のような鏡が張ってある部分があったので、部屋を一周するたびに、娘にその鏡を見せました。(鏡は、我が家では「鏡の療育」でいつも活用していて、娘にとっては基本的に精神を安定させる力を持っていると思われます)

そうやってぐるぐる歩き続けるのを、30分くらい続けたでしょうか。
歩き疲れたのか、あるいは多少なりとも部屋に「慣れてきた」のか分かりませんが、やがて娘の状態が「泣きっぱなし」から「泣いては泣き止んで」の繰り返しに変わってきました。
そこで、ちょうど部屋のテーブルのそばで泣き止んだときに、テーブルに用意しておいたおやつを一口与えてみました。(パニック中は好物のおやつすら食べられませんでした)

これを何とか食べてくれて、そこからうまく「おやつを食べる」ことに気持ちが切り替わるように誘導していって、ようやく娘を落ち着かせることができました。
ここまででかかった時間は1時間以上。なかなか大変な作業でした。

実は、2日めも、富士急ハイランドからホテルの部屋に戻ってきたらまた少しパニックが出ましたが、これはごく短時間(10分程度)で収まりました。
これは、先日、実家に帰ったときも同じで、日を追うごとに娘の状態が安定していったのがよく分かりました。
やはり、可能であれば、旅行にいくなら連泊するようにしたほうがよさそうですね。

また、これも妻のブログにも出ていましたが、これだけ娘にとっての不安要素が重なっていたにも関わらず、睡眠だけはかなり安定していました。
普段よりも早い、9時台くらいから寝てしまい、翌朝まで熟睡してくれました。(大人のほうが慣れない布団で寝つけなかったくらいですね(笑))

ともあれ、こういった「気づき」は、実際に娘に「旅をさせて」みなければ分からなかったことです。
正直、去年の箱根旅行が思いのほかとてもうまくいったので、今回もそれほど困らないだろうとタカをくくっていた部分もあったのですが、それは甘かったですね。
1年弱の間に、娘の反応が全然変わってしまっていることを痛感しました。

その「変化」は、残念ながらどちらかというと娘を旅行に連れて行きにくくする、つまり社会適応的には不適応の方向に向かったものですが、これも冷静に考えれば、見ず知らずのものに不安を感じたり、逆に「よく知っている大切なもの・人」に強い愛着を感じてこだわったり、絵カードのような「メッセージ」を理解して見通しを持ったりと、明らかに認知発達が進んでいることを意味してもいます。

親としては大変になる部分ももちろんあるわけですが、それを受け止めて、認知発達の過程で一時的に生じる「社会適応の退化」を乗り越えて、次にくるはずの「社会適応の大きな発展」に向かって努力していく必要があるんだと思います。

今回の経験を生かして、次回は娘にとっても家族にとっても、より「楽しい」旅行の計画を組めるといいなと思います。
posted by そらパパ at 20:48| Comment(2) | TrackBack(0) | 娘の話 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
そらパパさん、こんばんは。
家も最近成長してきたと同時に、今までに無かったような困難が生じてきた所でした。
今回の記事には、激しく共感&感動いたしました!
「社会適応の退化」から、「社会適応の大きな発展」に向かっていけるよう、私もがんばりま~す!
Posted by いっくんママ at 2006年09月05日 23:28
いっくんママさん、

実際に不適応行動を目の当たりにしている瞬間は、(今までできたことができなくなったときはなおさら)動揺して落ち込んでしまいがちですが、基本的には子どもというのは(よほど不適切な強化をしない限り)長い目で見れば着実に発達していくものですよね。

我が家の娘も、ちょうどいま「育てにくさ」がどんどん表面化してきている時期のように感じます。
一筋縄ではいかないと思いますが、おたがいに頑張りましょう。(^^)
Posted by そらパパ at 2006年09月06日 22:38
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