2011年10月24日

教えて、のばす!発達障害をかかえた子ども~幼児期のABAプログラム~(ブックレビュー)

井上先生の「家庭で無理なく楽しくできる生活・自立課題36」ときれいに対照をなす本。
知的障害のある自閉症の幼いお子さんに、ABAでじっくりと基礎スキルを教えるための道しるべとして最適な本です。

 

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教えて、のばす!発達障害をかかえた子ども~幼児期のABAプログラム~
平岩幹男 監修、宍戸恵美子 著
少年写真新聞社

まえがき
第1章 発達障害をかかえた子どもの子育て
 発達障害をかかえた子どもの子育てとは
 いつからできるのか、いつまでやるのか
 どうやってほめるのか?
 初期課題の見取り図
 声かけは大切
 日記をつけましょう
第2章 言葉を引き出す
 まねっこ(動作模倣)
 もっとまねっこ
 子どもが触られるのをいやがる場合
 口のまね(口形模倣)
 まねして言ってみよう
 もっとまねして言ってみよう
 欲しいものはなに?
 要求あといくつか
 発語になかなか結びつかないときのヒント
第3章 日常生活でやってみよう
 バンザーイ
 指さしのやり方
 2つの物から選ばせる
 指示と要求
 頭をゴンゴンするのを止めるには?
 しかるのはいけないこと?
 道順へのこだわりをどうしたらいい?
 かんしゃくを起こしたらどうしたらいい?
 たたく、かみつく 
第4章 遊びながらやってみよう
 リンゴちょうだい
 フライングをとめるには?
 はじめよう、終わろう
 物のマッチング
 こんなマッチングも
 みみはどこ?
 遊びを教える(自己刺激を減らす)
 子ども本人が自分の感情に気づくためには
 他人の感情を知るために
第5章 ちょっと専門的な話
 カレーライスの話
 簡単な3つの要素
 ちょっと専門的な話
 食べ物のごほうびの話
 音に強い子、見た目に強い子
 脳の話
 行動介入グラフの話
第6章 落ち込みそうなときに
 目標はなにか
 落ち込みそうなときに
 迷わない育児はない
あとがき
付録1 プログラムリスト
付録2 行動介入を提供する民間の会社(エージェンシー)
参考図書
さくいん
知っておきたいQ&A


ABAの本です。
ABAの本というと、つい先日、井上先生のABAシリーズ第3弾、「家庭で無理なく楽しくできる生活・自立課題36」をご紹介したばかり(レビュー記事)ですが、こちらは、井上先生の本と対照をなす、というか、きれいにお互いに補完する内容になっています

井上先生の本には、こうありました。
つまり、思春期には獲得が難しい部分とそうでない部分を見極め、得意なところは伸ばし、苦手なことは環境の工夫や周囲の援助など、なんらかの別の手段でカバーし、解決するという発想に切り替えていくことが必要なのです。つまり、獲得したい(させたい)発達的な目標を設定し、スモールステップで子どもの能力のその目標まで近づけていく、という「ボトムアップ」の発想から、その子どもに役立つと思われるスキルを今すぐ実現することを目標にし、できないことに関しては、環境の工夫や周囲の力を借りて最短ルートでの達成を目指す「トップダウン」の発想への転換を少しずつ図っていく時期というわけです。
(「家庭で無理なく楽しくできる生活・自立課題36」初版17ページ)

思春期以降であったり、あるいはそうでなくても、障害がある程度以上重いために発達課題を1つずつクリアしていくよりも「目の前の課題」を優先する必要があるときには、井上先生のいうところの「トップダウン」の療育が必要になります。
トップダウンの療育とは、要は「個別の生活・社会上の『やりたいこと』を、さまざまな創意工夫と支援とのあわせ技で最短距離で自活的にできるようにすること」だと言えるでしょう。

その一方で、「ボトムアップの療育」というものもあります。
これは、スポーツでいえば基礎トレにあたり、具体的・個別的な「目の前の課題」ではなく、より一般的な発達上のスキルを地道に教えていくことで、汎用的な意味での「できること」「わかること」を増やしていく、息の長い取り組みです。
具体的には、「模倣(まねっこ)ができること」「発話ができること」「要求すること」「大小や数の概念がわかること」「身体や心の状態(病気、けが、感情など)を説明できること」などが、ボトムアップの療育(の初期)の課題の例になります。

そして、先の井上先生の本は「トップダウン」の療育の本でしたが、今回ご紹介している本は、典型的な「ボトムアップ」の療育を取り扱っています
ボトムアップの療育は、幼児期~就学前~小学校低学年くらいの期間に主に取り組むべきものだと言えます。その期間のあいだにできるだけ「基礎力」をつけて、そこで培った基礎力をベースに、徐々に具体的な課題への「トップダウン」な取り組みに比重を移していくことになるはずです。

この本の画期的なところは、「知的障害のあるお子さん向けの、ボトムアップの療育本」になっているところです。
これまで、ボトムアップ的なABAの本といえば、「ロヴァース法的な早期集中介入」の本であることが多く、その対象は(明示されていなくても、実際には)知的障害がない(またはほぼない)お子さん向けのものになっていました。(例の井上先生シリーズの第2弾も、やはりそうでした。)

でも、この本は違います。
この本の対象となるのは、幼児期で、おおむね新版K式発達検査などで発達指数が50~75くらいのお子さんを想定しています。もしも運動系や目の見え方に著しい障害があるときは、この本ではカバーしきれないと思いますが、その場合でも、基本の原理は同じです。
(初版10ページ)

このようにはっきりと「軽度知的障害のある幼児期のお子さんが対象」と明言されています。

軽度とはいえ、知的障害があることを前提としたABAの幼児期のボトムアップ療育(=早期介入)のテキストというのは珍しいです。

ちなみに、我が家の娘の場合、幼児期の発達指数はおおむね30前後で「重度」でした(幸い、いまは少しだけですが改善しています)。
少なくとも当時は、そんな娘に向いた、いいABAのテキストはほとんどありませんでしたから、知的障害のない子むけのABAプログラムをアレンジしたり、当時はまだ日本ではポピュラーではなかったPECSをペーパーバックを取り寄せて勉強したりして、苦労しながら「娘のためのABA」を試行錯誤して実践してきました。

本書を見ると、当時、私たちの家族が苦労して何とか形にしていった「知的障害がある子どものためのボトムアップのABA」に近いものがとても分かりやすくまとめられていて、いまこの本を手にとってABAを始めることができる親御さんはとてもいいスタートラインに立てるだろうなあ、としみじみ感じます。

もちろん、本書でまとめられている「軽度」むけのプログラムを、そのまま「重度」のお子さんに適用できるということは(当然ですが)ありません。
ある程度のアレンジが必要になるでしょう。

端的にいうと、この本で「音声言語」を使っている部分をほぼすべて「絵カード(PECS)」に置き換えれば、「重度」のお子さん向けの標準的なABAプログラムとしてだいたいワークすると思います。
ただし、それでも、「重度」のお子さんにとってはかなりハードなプログラムになるでしょうし、それこそ何年もかけて一歩一歩前進していくような息の長い取り組みになると思います(そして、もちろん、個々のお子さんに応じたさらなる細かいアレンジも必要です。)
「中度」であれば、「絵カードと音声言語のハイブリッド」という感じになるでしょうか。

本書が想定する、「ボトムアップ療育」の初期課題の見取り図は、このようになっています。



(初期課題の)ゴールが「言葉を使う」になっているところが、いかにもロヴァース式ABA的です。
ここは、ある程度以上知的障害が重い場合、「音声言語だけでなく、絵カード等を含めたコミュニケーション手段を会得する」と読み替える必要があると思います。

でも、そこに至るまでのサブゴール(この図の上の部分に示されている課題)そのものは同じと考えることができますから、それぞれの課題で使う「道具」や「やり方」の少しの工夫で、この見取り図を有効に活用することができると思います。
いずれにしても、ロヴァース式ABAに近い枠組みでの初期ABAトレーニングを、知的障害のあるお子さんに適用するための方向性、こなすべき課題のイメージが示されているところにこそ、本書の最大の価値があると言えますね。

そして、この見取り図に示されている初期課題の1つ、「バンザーイ」は、こんな感じです。



大人が「バンザーイ!」と言ってバンザイし、それを子どもがまねすればOK、ごほうび(強化子)をあげる、というトレーニングです。
しかも最初は、もう一人の大人(ぜひ夫婦で取り組みましょう(^^))がバンザイの手の動きを100%アシストして、それで「できたこと」にしてごほうびをあげる、そこから始めます。

どうでしょうか。
相当簡単な課題から始まっていることが見て取れるのではないでしょうか。

これなら、かなり知的障害が重く、こちらからの働きかけに対する反応が弱いお子さんであっても、「じっくり取り組めば、何とかできそうだ」と感じていただけるのではないでしょうか。

ただ実際には、「重度」だと、こういったごく簡単に見える課題でも、いきなり取り組むと実はそんなに簡単ではないと思います(有目的的なからだの動きが作るところから始めなければいけないことが少なくないと思います)。
ですから、すぐにうまくいかなくても悲観せず、じっくりと取り組んでいきましょう
1つ、2つ、こういったABA的な課題ができるようになると、そこからはぐっと療育がやりやすくなり、個々の課題ができるようになるまでの時間も短くなってくると思います。

知的障害がある程度以上重いお子さんにとって、「幼児期の療育」にどう取り組むか、というのはとても大切で、またとても難しい問題だと思います。

そんななかで、私は、「幼児期にこそ、可能な限り時間をとって、ボトムアップ型の療育にじっくりと取り組むのがいいんじゃないか」と考えています。
それは決して、「週ウン十時間」みたいな極端にハードなものじゃなきゃいけない、ということではありません。
でも、できる範囲で継続的に(できれば毎日、30分でも15分でもいいので)、「目の前の問題」ではない、「先を見据えた基礎的なスキルトレーニング」にも時間をとること、これが、「幼児期の療育」の1つのポイントじゃないかと思うのです。

先ほどの「バンザイ」にしても、バンザイできたからといってそれがすぐに生活の何かのスキルに結びつくわけではありません。
でも、この「バンザイ」は、大人の行動を模倣するスキル、身体を動かして何かを表出するスキルとして、やがては「ことば」、コミュニケーションのスキルへと(時間をかけて)つながっていきます。

そういう、時間をかけて基礎力をつけていくための療育に最も適している時期が幼児期であることは間違いありません。
そして、そこで培った「基礎力」が、それ以降のお子さんの成長、さらには人生のQOLの向上につながっていくのではないか、と考えています。

療育という視点からみて、幼児期にしかない大切な時間がある。それは事実だと思います。

その大切な時間に何をすればいいのか。
知的障害を伴った幼い自閉症のお子さんを抱えた親御さんにとって、本書はその道しるべとなりうる貴重な1冊です。

文字も大きく文章も平易で、イラストもたくさん盛り込まれていて、明確に親御さんを読者としたわかりやすい本に仕上がっています。

こういう本を待っていました。
最近ちょっと連続していますが(というか、そういう本しか読まなくなっているからですが)、この本も自信をもって殿堂入りです!

※その他のブックレビューはこちら
posted by そらパパ at 21:13| Comment(12) | TrackBack(0) | 実践プログラム | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。「教えてのばす!」丁寧に載せてくださり、ありがとうございます!殿堂入り、なんて言ってくださって、うれしいです。
そうなんです、DQ50~75というのは、実際にこの方法が使えたお子さんがだいたいこの範囲に入っていたからなんです。
あと、これから来年にかけて「あしたばケースレポート」を作る予定なんですが、そこにはDQ50以下のケースがひとり入ります。
もちろんここにある以外の行動介入の方法やアプローチがあってそれも徐々に公開していきますが、まだまだ進歩していくと思います。これからもよろしくお願いします。
Posted by 宍戸恵美子 at 2011年10月26日 09:09
宍戸先生、

著者の方からのじきじきのコメント、ありがとうございます。恐縮です。

「殿堂入り」した本については、「当ブログのおすすめ」として常時ブログの右サイドバーに表示されるようになります。
実際、「娘の障害がわかったときにこの本があったらよかったのになあ」と思わずにはいられない、素晴らしい本だと思っています。

娘は、DQ50-75にははるかに届かない、重度の知的障害をもっていますが、それでも、この本で紹介されているようなごく簡単な動作模倣やマッチングなどからじっくりABAに取り組み、またPECSを併用することで、いまでは片言の音声言語と絵カードを使ってかなりの意思の疎通ができるようになりました。

ですので、(相当のアレンジは必要ですが)本書は知的障害のある子ども全般に対するABAのガイドとして参考になる内容になっていると感じています。

中度~重度のお子さんのための(ボトムアップ的な)ABAプログラムみたいな企画も、機会があればぜひご検討いただければありがたいです。
こちらこそ、これからもよろしくお願いします。
Posted by そらパパ at 2011年10月27日 21:54
私の高校2年になる息子も発達障が遅く歩き出したのが1才8ヶ月と遅く1才半検診で出ている言葉が少ないと言われ町の療育センターへ。
幼稚園は普通の幼稚園に通えたが友達と遊べずに一人でいる事が多かった。

小学校に入ってからも友達が一人しかいずけして活発とはほど遠い子供だった。
しかし中学生になる頃から徐々に活発になっていき今は友達もどんどん増え部活に勉強に遊びにと青春を息子なりに謳歌しています。

子育て中は不安だらけで私も時に八方塞がりになった事が多々あるが結局子育ては続けて辛抱強く経過観察して行かなければならないんだなと実感出来た。
今 小さいお子様をお持ちのお母様 子供には可塑性と言うものがある。

どうかお子様を信じてあげてその子の持っている可能性にかけてください。 陰ながら応援しています。
Posted by 参考になりました at 2012年05月17日 03:57
参考になりました さん、

コメントありがとうございました。

おっしゃるとおり、療育はあまりに短期的な結果を焦らず、子どもの成長を信じて、細く長く続けていくべきものだと思います。

娘も、ことばどころか外界の刺激への反応そのものがほとんどなかったような状態から、先日は自分の体調が悪いことを「びょういん、びょういん」と音声言語を発して訴えるところまで伸びてきてくれました。

これからも子どもを信じて、細く長く、子どもの成長を支えていければと思っています。
Posted by そらパパ at 2012年05月18日 22:19
この書評で言及されている「井上先生シリーズ第二弾」(コミュニケーション課題30)の共著者です。

私たちの本に関してそらパパさんが誤解をされていると思いますので、一言コメントさせていただきます。

そらパパさんは私たちの本(だけではありませんが)に対して「(明示されていなくても、実際には)知的障害がない(またはほぼない)お子さん向けのものになって」いる、とおっしゃっていますが、私はこの本を高機能児よりもむしろ重度を含めた知的障害のある子どもたちを対象に書いたつもりです。

そらパパさんがご察しのとおり、「コミュニケーション課題30」のプログラム部分はほぼ「つみきBOOK」のダイジェストです。そして「つみきBOOK」の元はロバース博士の「ミーブック」です。そのロバース博士は「ミーブック」を、重度の自閉症児も念頭に置いて、ゼロベースで、つまり言葉も模倣も何もできない子どもを前提にして書かれました。ですから私も同じくゼロベースでこれらの本を書いているつもりです。

宍戸さんの本はその点で「軽度」の子どもたちに対象を限定されています。ですからそらパパさんが「コミュ30」を含めたこれまでのABA本に対して、宍戸さんが初めて知的障害を持つ自閉症児を対象にしたABAボトムアップ本を書いた、と位置付けたのは、誤りであると思います。
Posted by 藤坂龍司 at 2013年03月11日 00:21
藤坂さん、

コメントありがとうございます。

このような素人のブログにコメントくださり、恐縮しています。(^^;)

今回ご指摘くださった点についてですが、下記の「コミュニケーション課題30」のレビューにあるとおり、私自身が娘に対して療育を試みた際の「実感」に基づいて書いています。

http://soramame-shiki.seesaa.net/article/149332356.html

これは私の個人的な印象ですが、ロヴァース法や「つみきBOOK」における音声言語のトレーニングは、やはり対象を選ぶ側面が強い、と感じています。
それは、端的にいえば「知的に重い」ということですが、恐らく実際には療育当初は「重」くても、このメソッドで伸びる子もいるのは確かでしょうから、言い換えると「ついていけない子どもがたくさんいるように感じるメソッドだ」と感じている、ということです。

それに対して、こちらのレビューで紹介しているやり方は、相対的には、「ついていけない子ども」が少なそうなアプローチを採用している(その代わり到達地点はそれほど高くないかもしれない)、という印象をもっている、ということです。

著者の意図としてはそうではない、ということは今回いただいたコメントで分かりましたので、コメント掲載という形でその点については広くお伝えできればと思います。

一方で、読者として親として「受け止める側」としては、実際の経験から、やはりそうではない印象はぬぐいきれない、と感じていることもご理解いただければと思います。
Posted by そらパパ at 2013年03月12日 23:20
つみきBOOKやそのもとになるロバース博士のプログラムは、確かにことばの全くないレベルから知的に問題のないレベルにまで引き上げることを目標としているため、課題のレベルがハイスピードで上がっていきます。その途中でついていけない子どもが多く出るのは、その通りです。

しかしだからと言って「知的障害のほぼないお子さん向けのものになっている」と評されるのはどうかと思います。

私としては逆に、井上先生の46や宍戸さんの本は、ややスタート地点が高め、という印象を受けています。宍戸さんのプログラムは動作模倣から始まっていますが、実際に自閉症の子どもたちにセラピーを行ってみると、当初は動作模倣すら難しいことが多いのです。

それに対してつみきBOOKやコミュ30は、「入れて」の課題やマッチングから始めています。これらの物を介する課題の方が、当初は子どもにわかりやすく、また抵抗感が少ないようで、導入期のつまづきを減らすことができます。

つみきBOOKなどのロバース式ABAは、確かに途中でついて行けなくなる子がたくさん出ますが、同時にどのプログラムにもまして、スタート地点を低く設定して、重度のお子さんでもプログラムに乗れるように作られています。

重いお子さんの場合は、そらパパさんのお子さんのように音声模倣でつまづく子が多いわけですが、そのようなお子さんにはロバースもコミュ30も絵カードや手話による代替コミュニケーションへ進むように筋道を示しています。

ですからそのような重度の子どもたちを当初から対象外にしているというコメントだけは、受け入れがたいのです。
Posted by 藤坂龍司 at 2013年03月13日 08:50
藤坂さん、

再度のコメントありがとうございます。

確かに、ロヴァース式の音声言語訓練の「スタート地点」がとても低いところから始まっていて、そこだけに限定してみるならば、かなり重度であってもトライできる内容になっているというのはその通りだと思います。
その点については異議はありません。

ただ、「重い子の場合、途中までは進められるが、どこかでドロップアウトする可能性が高い」というメッセージは、最初から与えられているのでしょうか。
私は、不勉強のせいでそういったメッセージには気づきませんでした。

もしそういったメッセージが与えられないまま取り組み、結果として、やはり途中でついていけなくなった場合、それは当然に「挫折」「やはり難しすぎた」と受け止められてしまうのではないかと思います。

重い子の場合、とりあえず最初のほうは確かに実施できるけれども、やがてついていけなくなる可能性が高いです、という療育法を「重い子向け」と呼ぶことは、私は抵抗があります。
Posted by そらパパ at 2013年03月14日 00:30
 私が昨年このHPを通じて知り、とてもお世話になっている、家庭で(中略)コミュニケーション課題の藤坂先生がコメされているので、論点のずれた横レスですが、一言、と思ってしまいました。うちの子は、高知能・バーバル、社会性は課題が多いタイプで、すんなり{コミュニケーション課題}が合うようです。(論点がずれ過ぎてあかん、と思われたら、そらパパさん掲載見送ってください)

「重い子の場合、途中までは進められるが、どこかでドロップアウトする可能性が高い」というメッセージは、最初から与えられているのでしょうか。
 ここが、現在のABA最先端でどうか、私も教えていただきたいのです。
 私自身が、30代のリハビリ医療関係者です。(ABAは素人です)
 ロバース先生は著書でドロップアウトや他の技法への変更を示唆されているのですね?現在、ABAセラピストは最初期に告げるのでしょうか。
 リハ実施計画書に記載が薦められるような、{骨折転倒の危険があります}などの文面にして、ABAも[途中で他の技法も併用することはあります}などとするべし、というわけではありません。
 方針転換はありえて、敗北でも失敗でもない、というメッセージは、最初期から与えていただけているのなら、{重い}お子さんたちも引き受けてくださっている藤坂先生たちの科学性が老練の域にあるかと。現場では、臨機応変な対応だけで困らないようです、とのことでしたら、それはそれだと思います。リハも10年前は{互いの信頼と現場の調整}でやってけていました。
 杞憂だといいのですが、動作模倣でつまづくタイプのお子さんが、FCなどに流れるんじゃ?というイメージがあって・・・。FCは今も元気に雑誌・大学研究室などで活躍しています。
Posted by しまなみ at 2013年03月14日 13:12
そらパパさん、

「重い子はどこかでドロップアウトする可能性が高い」というメッセージは、確かに「つみきBOOK」にも「コミュ30」にも明示されていません。

しかし「つみきBOOK」にはロバース博士の1987年の論文をかなり詳しく引用しました。そこでは早期集中介入を受けた19人のうち、9人は知的に正常域に達したが、その一方で2人は重度の遅れに留まった、ということを明示しています。
またまえがきでは私自身の子どもが途中で伸び悩み、結局知的な遅れが残った、ということも書いています。
それらから、「すべての子が最後まで行けるわけではない」ということは十分読み取れるのではないでしょうか。

コミュ30にもこのプログラムですべての子どもがことばを獲得できるわけではない、そのような場合は手話や絵カードによる意思表示の方法を教えた方がよい、と書いています(80-81ページ)。

そらパパさんは、コミュ30の書評では、

<本書は決して「知的な水準の高い子のためだけの本」ではありません。でも同時に、「どんな子に適用してもプログラムの最後まで到達できる本」でもないと思います>

と書かれています。これは正当な評価だと思います。

しかしこの評価と、宍戸さんの本の書評の中でコミュ30を含めたいくつかの本に対して与えられている「その対象は(明示されていなくても、実際には)知的障害がない(またはほぼない)お子さん向けのものになっていました」という評価との間には、(少なくともコミュ30に関しては)大きな開きがあると思いませんか。
Posted by 藤坂龍司 at 2013年03月15日 00:50
しまなみさん、

私たちは重度の子どもの親御さんに対して、最初から「ドロップアウトの可能性が高いです」とは言いません。過度の期待を持たせることはしませんが、たいていは「やってみなければわかりません。がんばりましょう」と言います。

実際、私たち自身、どのお子さんがどこまで伸びるか、わからないのです。10年以上この仕事をやってきて、ようやく少しは見極めがつくようになってきましたが、いまでも予想が裏切られることはよくあります。その意味で、私たちは「老練の域」にはとても達していません。
Posted by 藤坂龍司 at 2013年03月15日 00:59
 ありがとうございます。私個人としては、十二分です。論文の年次も教えていただけたので、取り寄せて大事にします!
 なるほど、リハも、過度の期待がうかがえたり、生命自体危ういケースは、やってみなければわからない。やってみて方針転換するのも、経路・結論ともに意義があるのが、こういう科学的治療法かなあ、・・・的な言い方をしています。診断的治療の説明でもありますね。
 それでも、リハ医療も歴史が50年そこらで若い割に対象が複雑化し、予想が的中しないことがあります。
 そらパパさん、お邪魔させていただきました。ありがとうございます。
Posted by しまなみ at 2013年03月15日 10:28
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