2011年09月19日

自閉症児をもつ家族のためのセカンドハウス(5)

これまでの記事では、私が家族のためにセカンドハウス購入を決意するにいたった経緯と、実際に買って経験したことについて、簡単に触れました。

今回からは、私自身の実際の「購入活動」に沿いながら、「失敗しない『自閉症児と一緒に泊まる』セカンドハウスの選びかた」について書いていきたいと思います。

ただ、「不動産を買う(ないしは賃貸などで利用する)」というのは、それ自体非常に個別性の強い行為でもありますし、ましてやそれが、さらに個別性の強い個々のお子さんなり家族にとってメリットがあるかないか(有効活用できるか否か)というのは、まさにそのご家族にしか分からないことだと思います。
以下、あくまで一般論として書いていきますが、その内容は私が個人的に経験したことをベースにしたものであり、最終的な判断は皆さん自身がじっくりと検討したうえで行なっていただくということを、改めて強調しておきたいと思います。



さて、それでは本題に入りますが、何よりもまず最初に、セカンドハウスを購入する際に絶対に押さえておきたい「出発点」を書きます

それは、

「元が取れるか、取れないか」という発想を捨てること

です。

旅館やホテルに泊まる宿泊費と金銭面だけで比較するなら、まず間違いなくセカンドハウスでは「元は取れません

最初にかかる不動産取得費(物件価格、仲介手数料、登記等諸費用、不動産取得税、火災保険料、最小限の家具・寝具・家電購入費など)もありますし、ローンを組んだ場合はその金利負担もあります。
仮にそれらをすべて無視してランニングコストだけで比べた場合でも、シーズン関係なく1年中毎月1回使って、やっとリーズナブルなホテルに「毎月」泊まるのとトントンくらいだと思いますし、自分で掃除をしたり食事の準備をしたりふとんの上げ下ろしをしたり、シーツ等を洗濯する手間もかかります

また、旅館やホテルはいつも違う場所に泊まれて新鮮な気分で観光できますが、セカンドハウスは「いつ行っても同じ場所」です。エリアにもよるとは思いますが、同じ観光地に泊まることを5~10回も繰り返せば、一般的な意味ではまず「飽き」ます

また、リゾートマンションなどの資産価値は一般に低く(だから安く買えるわけですが)、キャピタルゲイン(売買での利益)も期待できません。

ですから、セカンドハウスを買うときには、「安く泊まってやがて元を取ろう」「ただで泊まれるからホテルより安い」といった発想を捨てて、最初から「セカンドハウスでなければ実現できない付加価値にお金を投資するんだ」と考える必要があります

じゃあ、具体的にどんな「付加価値」があるのか? といえば、自閉症児をもつ家族にとっては、意外とたくさんあります

・いつも同じ場所に泊まるので、子どもが「新しい場所」に対してとまどったりしない。
・子どもの調子の悪いとき・天候が悪いときなどに急きょ宿泊をとりやめたり、逆に調子のいいときにいきなり出かけたりできる。
・子どもに合った寝具・家具等を自ら用意できる。また、部屋を構造化したり、壊れやすいものを置かないといった工夫も自由。
・おむつ、絵カード、おもちゃ、あるいはウインタースポーツやマリンスポーツ用品、バーベキュー用品など、かさばる荷物や子どもにとって必要なグッズをいちいち持ち運ばずに部屋に設置しておけるので、出かけるときの荷物を削減できる。
・階下に居室のない部屋を選べば、走り回ったり床でドンドンしたりといった子どもの行動にあまり神経質にならないで済む。しかも常にそういう部屋が確保できる。
・パターンに強くこだわるお子さんであっても、同じ場所に繰り返し遊びに行くことで「パターン化した観光」ができる可能性がある。
・マンションは一般的にホテルの部屋より広いので、ゆったりと部屋に滞在することができる。
・毎月1~2回といったかなり高い頻度で外泊させることができ、「違う環境で生活すること」のトレーニングになる。




このような「付加価値」が、セカンドハウスを購入し維持費を払い続けるコストとリスクに見合うものかどうかを総合的に検討し、購入の可否を判断してください。

次回は、これまでにも何度か触れている、セカンドハウス、とりわけ「リゾートマンションのリスク」について、その最も危険なものについて書きたいと思います。

(次回に続きます。)
posted by そらパパ at 20:53| Comment(2) | TrackBack(0) | 療育一般 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。

以前もコメさせていただきました。
この3連休で山梨の別荘に行ってきました。

突然行かれる、急なキャンセルも大丈夫。

パターン化した観光が出来る。

というのがほんとうにありがたいですね。

こだわりがとってもキツイですが初日に息子のパターンを一通りこなすと
翌日からは、こちらに付き合ってくれたりします。

行く前調子悪く自傷が多かったですが、行きの車からニコニコになりました。

以前ホテルに泊まろうとして、予約の電話の際、あらかじめ事情を説明して、あからさまに、迷惑そうな態度をされ・・・・「やっぱりやめますわ」と言ったら喜ばれました。

我が家も外へ外へ・・・を心がけ沢山の経験を!と積極的なつもりでいましたが、大きくなればなるほど、難しいですね。(コワがられてしまう、とか)
ピリピリした空気は本人も感じとりますから。
近所の市民プールも難しくなってしまいました。

ほっと出来る場所・・・はとっても大切です。
Posted by もんた at 2011年09月20日 15:04
もんたさん、

コメントありがとうございます。
我が家も、この3連休は避けましたがその前の週末にセカンドハウスに泊まってきました。

やはり「いつものパターン」を作りながら、そこに少しだけ新しいことや、親の側も楽しめることを入れていくことで、家族全員が楽しめる観光を作っていくことができますよね。

外へ気持ちを向け続けることは、大切だということが分かっていてもだんだん難しくなるにつれ苦しくなってきます。
それを打破する1つのやり方として、我が家ももんたさんと同じく、「拠点をもつ」という選択をしてみた、ということだと考えています。

Posted by そらパパ at 2011年09月21日 23:09
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