帰省中に、ある程度作業を進めることができました。
自閉症児と絵カードでコミュニケーション -PECSとAAC-
著:アンディ・ボンディ ロリ・フロスト
二瓶社
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今日は、第7章です。
第6章から第8章は、本書のキモとなっている部分で、具体的なPECSの療育法についてかなり詳しく解説されているところ(そして当然、親としてはこの部分を読んで実際の療育に取り組むことになります)なのですが、残念ながらこの部分は特に誤訳が多いのです。
率直に言って、文章を理解できずに直訳で逃げているとしか思えないところも何か所かあります。
これらの章では、それによって療育の手順や心構えが微妙に変わってしまう、あるいは「具体的に何をすればいいのか」が分かりにくくなっている、と私が判断した場合は、多少細かい修正もあえて指摘しています。同様に、意味の通じにくい直訳を「意訳」するという修正を施した部分もあります。
そのために、リストがかなり膨大になってしまいました。(これでも、私の「好み」で直したいと感じた部分は全部削ったつもりです。)
第7章 そらパパ版日本語訳「修正案」
P113 2行目 シンボルの背景に斑点パターンを入れました → 絵シンボルの領域ほとんどを占める斑点を描きました
P115 表7-1の「身体部位」 バンドエイドを貼ってある位置など → キャラクター人形、バンドエイドを貼ってある部位、ローションのついた部位など
P121 19行目 普通 → 普段
P121 21行目 おもちゃが変なところにあること → 落っこちたおもちゃ
P122 4行目 コミュニケーションブックの表紙に貼った「見える」を意味するアイコン → コミュニケーションブックの表紙の左寄りの位置に貼った「私が見たのは(I see)」のアイコン
P122 7行目、8行目 「見える」 → 「私が見たのは」
P122 8行目 「欲しい」 → 「私が欲しいのは」
P122 17行目~P123 2行目
このレッスンを学習するときには、子どもが自発的に要求する機会と質問に応じて要求する機会とを、どちらも設定しておくことが大切です。そのために子どもは、「何が欲しいの?」「何が見えるの?」といった質問と、それらに対応したアイコンを弁別する必要があります。 →
このレッスンを学習している間は、子どもに(自発的および質問に応じて)要求する機会をあわせて確保しておくことが重要です。それによって、子どもが「何が欲しいの?」と「何が見えるの?」という質問を区別し、それぞれに対応したアイコンを弁別しなければならないように仕向けるのです。
P123 3~6行目
このとき、子どもの自発的なコメントを促すために、指導方法を少し変える必要があります。周囲の変化や興味の引くものだけが子どものコメントのきっかけとなりますので、基本的に、子どもへの質問はなくしていかなければなりません。質問文を省略して、徐々に短くしていきます。 →
ここまできたら、子どもの自発的なコメントを促すために、さらにもう一段階指導方法を変える必要があります。周囲の変化や興味の引くものの存在だけで子どものコメントが自発されるようにするため、本質的に、子どもへの質問はなくしていかなければならないのです。そのため質問文を省略して、徐々に短くしていきます。
P123 8~10行目
最終的には、直接的な質問をする前に、「見て!」「あっ!」「すごい!」などの感嘆表現を用いるようになったら、それ以後は感嘆表現だけにして、質問はしないようにします。 →
質問文の前に「見て!」「あっ!」「すごい!」などの感嘆表現を用いていたとすれば、最終的には、感嘆表現を残して、質問は省略してしまうこともできます。
P123 15行目 自発的また質問に応じて → 自発的または質問に応じて (誤植)
P124 15~17行目 そのシステムの使用を制限したり、大人の準備はできているのにコミュニケーションブックの使用を制限すると → 大人が対応できるときだけこのシステムを使うことを認める、あるいはコミュニケーションブックを出してきてやるといったやり方では
P124 23~24行目 トレーニングのフェーズIIでは、家庭でもPECSを用います(最初は学校で教えるかもしれませんが)。 → トレーニングを学校で始めた場合、その第2段階は、家庭でPECSを用いることになります。
P124 25行目 子どもを励ますべきです。 → 子どもに働きかけていかなければなりません。
P125 2~4行目
子どもが学校でPECSを用いるのは、どんなときでしょうか? 学校での支援チーム(教師、補助教師、言語聴覚士、両親も含め)はすべての活動を分析して、それぞれの活動に関連する教材に注目します。 →
どのような環境を用意すれば、子どもが学校でPECSを使えるようになるでしょうか? そのためには、学校での支援チーム(教師、補助教師、言語聴覚士、両親も含め)はすべての活動について、それぞれに関連する教材を列記しながら、分析するのがいいでしょう。
P126 19行目 家族一人ひとりが自分だけの特別な日課を持っているとよいでしょう。 → どの家庭にも、自分たちだけの特別な日課というものがあることでしょう。
P127 9行目(タイトル) 友だちやきょうだいに対するPECSの使用 → PECSを友だちやきょうだいとの間で使うこと
P136 表7-3の位置 ”「いいえ!」の言い方と「いいえ!」という生活”の途中 → ”「いいえ!」の言い方と「いいえ!」という生活”の前
P136 2行目 「いいえ!」 → 「ダメ!」 (2回)
P136 13~14行目 私がいまできる反応もすべて、たくさんのレッスンによって獲得したものだからです。 → この問題の解決のためにはさまざまな対応方法を使い分けなければならず、それを習得するには多大な経験が必要だからです。
P136 表7-3 II.持続 解決法 2. 一日のあらゆる場面で楽しい場面を作ります。 → 一日のあらゆる場面で強化子を与えられる場面を作ります。
P137 表7-3 III.選択 よくある間違い 2. 好きなものばかりで始めている(たとえば、すべておやつの時間に得られるもの) → 好きなもの同士の組合せで始めている(たとえば、おやつの時間に選べるものすべて)
P137 表7-3 III.選択 解決法 3. シンボルの選択にフィードバックを与えます。 → シンボルを選択したタイミングでもフィードバックを与えます。
P137 表7-3 IVa.文構成 解決法 3. 今はまだです。 → 今はまだですし、「固執」は最後までやってはいけません。
P137 表7-3 VI.コメント よくある間違い 1.教材に退屈している → つまらない教材
P137 表7-3 PECSから話し言葉への移行 解決法 3.話し言葉に対しては比較的大きな強化子を与える。 → 話し言葉に対して「より多くの」強化子を与える(それ以外の反応にも通常の強化子を与える)。
P138 2~3行目 空になった袋を見せます。しかし「ないよ」とは言いません。 → 「ダメ」とは言わずに、空になった袋を見せます。
P138 5行目 代わりのものを → 代わりの選択肢を
P138 8行目 プレッツェルの絵カードを、 → プレッツェルの絵カードを受け取って、
P138 12行目 彼が別の物品を選択するか → 彼がまたその物品を欲しがるか
P138 23~26行目
子どもと交渉する価値があるかどうかを考えてみます。彼が何かとてもよいこと(新しいスキルの学習、部屋の掃除など)をしたのであれば、彼と取り引きをしましょう。この場合、次の章で紹介するトークンシステムを始めるために、彼の要求を利用します。 →
子どもと交渉するということに意味がありそうかどうかを考えてみます。恐らくあなたは、彼が何かとてもよいこと(新しいスキルの学習、部屋の掃除など)をするのだとすれば、喜んで彼と取り引きをしたいと思うのではないでしょうか。この場合、次の章で紹介するトークンシステムを始めるためのきっかけとして、彼の要求を利用します。
P138 27行目 「ないよ」 → 「ダメ」
P139 1行目 (ケガをさせないように) → (あるいは他人をケガさせないように)
P139 14~15行目 そして同様に、子どものコミュニケーション能力を奪うようなこともしないはずです。 → ですから同様に、子どもが私たちとコミュニケーションする能力を奪うことはしてはいけないのです。
P139 16~17行目 当然のことです。 → 自然なことなのです。
P139 20行目 その子ども → お子さん
P139 22行目 あらかじめ対処する → 対処する
第7章の中では、122ページの後半から123ページの前半部分は完全な誤訳だと思われます。
なお、私自身も誤訳、誤った理解をしている箇所がある可能性ももちろんあります。そういった箇所にお気づきの方は、ご連絡いただければ幸いです。
いつも、興味深く拝見させていただいております。
私は障害者の就労支援の仕事をさせていただいて、今年で4年目になります。
就職相談をさせていただいている方には発達障害をお持ちの方も含まれています。
これまでの私の少ない経験の中を振り返ってみると発達障害をお持ちの方は、
充分な理解の下での療育を受けるチャンスがないまま、就労する年齢になってしまった方が多い印象があります。
「もっと違った教育や支援を受けていれば、今とは違った結果になったのではないか」と感じる場面があり、いたたまれなくなる時があります。
その一方で、今の幼少~小中高校生くらい?の年齢層のお子様をお持ちのご両親は、
発達障害への理解と療育、対応等について、とても勉強と努力をされているなー、と
色々なホームページやブログ等を拝見していると感じます(もちろん、その他の年齢層のお子様のご両親にも努力をされている方はたくさんいらっしゃると思いますが)。
このブログもその一つであり、私の貴重な情報源でもあります。
正直な話をしますと、そらパパさんの療育への取り組みを拝見していると、
自分の力不足をとても感じます。
でも、もしかしたら、 いつかどこかで、そらまめさんの就職相談を受ける可能性も0ではないと思ってます。
長い時間をかけて、コツコツと積み上げられた取り組みに対して、
きちんとした対応とサービスでお応えできるように、今から勉強をして頑張っていきたいと思います。
突然の乱文・長文にて失礼しました。
今後も療育、ブログ執筆がんばってください。
自閉症の療育というのは、私自身、とても不思議な世界だなあ、と感じていて、科学的な部分とオカルトの部分、合理的な部分と精神論の部分、冷静な部分と「熱狂的」な部分、そういう対極に位置するはずのものが渾然と入り混じっていて、独特の世界観を形作っていると感じています。
こういう混沌とした世界に「子どもが障害を持っている」と知らされて混乱した精神状態で飛び込んでこなければならない親というのはやはり大変ですよね。
自分自身が試行錯誤しつつ、そういう方にとっての「道しるべ」に多少なりともなればいいな、と思ってこのブログを書いています。
まだ娘の就労なんてことはとても考えられない状態ですが(まずは自分で生活できるようになってもらわないと(^^;))、いずれそういったことに向き合わなければならないときは来るんだと自覚しています。
今後ともよろしくお願いします。