今回からは、ABA以外の療育法について書かれた本のご紹介です。
3.その他の療育法についての本
<殿堂入りおすすめ本>
発達障害のある子とお母さん・先生のための思いっきり支援ツール―ポジティブにいこう!
武蔵 博文・高畑 庄蔵
エンパワメント研究所(過去のレビュー記事)
ABAの「殿堂入りおすすめ本」の次がいきなり「その他の療育法」になっている、ということでお分かりのとおり、実は当ブログではTEACCHに直接関係する本で「殿堂入り」にしている本がありません。
これは、こちらの記事のコメント欄でも議論されているとおり、TEACCHというものが、療育の体系としては必ずしも整備されておらず、そのために、決定版と呼べるほどの本が出ていないという事情があります。
ただ、既にご紹介した殿堂入り本「自閉症のすべてがわかる本」は、TEACCHを日本に広めた佐々木正美氏が監修しており、TEACCHの観点からの自閉症入門だとは言えます(ただし、特にTEACCHを詳しく紹介した本ではありません。)
ところで、TEACCHを参考にして療育をやっている教室・施設などをイメージしてすぐに思い浮かぶのは、構造化された教室、整然と並べられた課題、絵カード・スケジュール表といった、「さまざまな教材・支援グッズ」です。
こういった支援グッズを家庭でもとりいれることができれば、子どもにとって家での生活がきっとより安定して充実したものになると期待できますが、本書は、そういったさまざまな「支援グッズ」を集めて体系化し、1冊のなかにぎっちりと詰め込んだ、「支援グッズ事典」になっています。
ですから、この本は「TEACCHの本」ではありませんが(どちらかというと著者はABAに近い人たちです)、TEACCH的な、さまざまな支援グッズを活用することで子どもをとりまく環境に働きかけ、子どもにとって過ごしやすく、状況を理解しやすい空間を作っていく、といった取り組みのためにとても参考になる情報を提供してくれるものになっています。
実際に、どのような支援グッズが掲載されているのか、どのように「体系化」されているのかは元のレビュー記事に詳しいです(写真も多数掲載しています)ので、ぜひそちらをあわせてご覧ください。
この本は、内容に対して値段がかなり抑えられているのも特長です。
1800円(+税)というプライスがついていますが、内容を考えれば、2倍の値段がついていてもおかしくない本ではないでしょうか。
ABAを中心にやっていこう、という方にも、TEACCHや絵カードに力を入れていこう、という方にも、「日常生活に取り入れることができる、さまざまな支援グッズの事典」としての本書は手元においておく価値があるでしょう。自閉症療育にとっての必携本といっても過言ではないと思います。
当ブログで多数紹介している「殿堂入り本」のなかでも、本書はダントツで実用性が高く、特におすすめできる特選本だと考えています。
(次回に続きます。)
※ブックレビュー一覧をまとめた記事はこちら。