2006年08月22日

「叱ること」について(4)

これまで、自閉症児を「叱る」ことの難しさについて考えてきました。

繰り返しになりますが、こういった「難しさ」は実際にはすべての子どもに当てはまることであり、自閉症児に限ったことではありません。

ただ、健常児の場合には自分が叱られた状況をある程度客観的に理解し、子どもなりに問題を「再構成」することができるようです。また、「叱られていない時間」によって「叱られた時間」を埋め合わせることも比較的容易です。したがって、多少「叱る」ことに失敗していたとしても、その失敗は子どもの側で適切に処理され、問題が表面化してこないことが多いのだと考えられます。

これに対し、自閉症児はそういったことが難しく、叱られるということに純粋に反応して学習を成立させてしまう傾向があるために、「叱る」という行為がよりデリケートになるわけです。

ですので、自閉症児の叱り方のコツを考える前に、まずは「できるだけ叱らない」ことを考える必要があると思います。

幸い、ABAには叱らずに(罰を使わずに)問題行動を抑える方法があります。

1.まずは機能分析。
 子どもが、なぜその行動をするのか、その行動を強化しているものは何かを考えるのが、ABAの「機能分析」です。
 機能分析には、ABC分析というやり方が最も簡単で一般的です。
 これは、ある行動(B)の前(A)後(C)で状況がどう変わったかを検討する分析方法です。「欲しいものがない状態(A)」から、パニックして(B)欲しいものが手に入った(C)なら、パニックによって変わった状況とは「欲しいものを入手できた」ことであり、この「結果」(C)によってパニックという行動(B)が強化されていると判断するわけです。

2.罰よりも「消去と代替行動」のセットを先に検討する。
 機能分析ができれば、何がその行動を強化しているかが判明しているはずですから、その強化子(ごほうび)が、その行動からは手に入らないようにします(消去)。
 それと同時に、その問題行動とば別の、社会的に容認されてしかも同じ強化子が手に入る行動(代替行動)を見つけたり作ったりして、そちらを積極的に強化していきます
 パニックして要求する代わりにPECSで絵カードで要求させるとか、水にこだわりがあり、キッチンを水浸しにするなど不適切な水遊びをする子どもに、風呂掃除を教えて毎日やらせる、といったやり方です。

 問題行動を消去しようとするときは、代替行動の強化とのセットで行なうことがとても大切です。
 「問題行動は無視すれば消える」と単純に考えて、それだけ実行してもうまくいかないことが多いのはこれが原因です。代替行動を示さずに問題行動を消去しようとしても、子どもの欲求が解消されずにたまっていってしまうことになり、結局は別の問題行動やパニックなどにつながってしまうわけです。

3.分かりやすい弁別刺激=構造化の工夫も必要。
 これまで見てきたとおり、私たちが「不適切な行動」だと考えるものの多くは、特定の状況下においてのみ不適切で、他のシーンでは適切な行動です
 例えば、先日ご紹介したように、3時のおやつの時間に棚からお菓子を取り出すのは適切な行動であっても、同じお菓子を夜9時に取り出したら不適切な行動になったりします。また、遊び場で走り回るのは適切な行動ですが、教室で走り回るのは不適切な行動です。
 こういった問題行動は、問題行動を起こした後に叱るだけでは抜本的な解決は難しく、問題行動が起こる前に、その行動をやっていい状況なのかそうではないのかを子どもの側が判断=弁別できる、つまり、ある行動をしてもいいのかいけないのかが子どもにとってよく分かるような環境を作ってあげることが必要になります。
 言うまでもなく、これはTEACCHにおける「構造化」の概念と一致します。
 例えば上記の例では、おやつの棚に○×を表示したりPECSでおやつを食べられる時間をスケジュールとして学習させる、教室と遊び場の場所を分離して一見して違いが分かるようにする、場所とやるべきことをセットにした絵カードを見せて理解させる、といった方法が考えられます。

実は、上記で説明した以外にも、ABAの観点から「叱らずに問題行動をやめさせる方法」は、さらにいくつかあります。それらについて分かりやすく解説した本としては、次のものがおすすめです。(この本も近日中にレビューしたいと思います)

 

うまくやるための強化の原理―飼いネコから配偶者まで
著:カレン プライア
二瓶社


・・・もちろん、このような消去や弁別刺激の明確化を中心にした行動変容がうまくいかないケースもあります。
すぐに禁止しなければならない危険な行動や、「ごほうび」を外から取り除けない自己刺激行動などは、「消去と代替行動」のセットではなく、「罰と代替行動」のセットを使わなければならない場合も多くなります

このように、どうしても「叱る」必要があるときの対応方法については、次回書きたいと思います。

(次回に続きます。)
posted by そらパパ at 21:11| Comment(2) | TrackBack(0) | 療育一般 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。
いつもそのように上手くやりたいと心では考えていますが、なかなか上手くいかず、最終的にはいつも叱ってしまいます。
その度に、自己嫌悪・・・の繰り返しです。
子どもの行動をコントロールする前に、まずは、自分のコントロールができないと始まりません・・・
『うまくやるための強化の原理』のブックレビューと、次回のシリーズを楽しみにしていま~す!
Posted by いっくんママ at 2006年08月23日 15:51
いっくんママさん、こんにちは。

最後の記事でも書きましたが、うちでも決してちゃんとできているわけではないです。(^^;)

ただ、「叱る」ということをちゃんと科学的に理解して、意識をもっているだけでも全然違うと思うのです。
その小さな積み重ねが、自閉症児とつきあっていくときには最終的にとても大きな違いになっていくんじゃないかと思っています。

「うまくいくための・・・」のレビューは、一応、明日掲載の予定です。(^^)
Posted by そらパパ at 2006年08月23日 23:39
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