2011年07月11日

殿堂入りおすすめ本・まとめて再レビュー(12)

過去に「殿堂入り」として強くおすすめした本を、現在の視点から改めてレビューしつつ、まとめなおすシリーズ記事の12回目です。
今回で、「ABA(応用行動分析)」に関連する殿堂入り本、7冊の紹介がすべて終わります。

2.ABA(応用行動分析)・行動療法についての本(続き)

<殿堂入りおすすめ本>(続き)



※左がAmazon、右が楽天Books

発達障害のある子の「行動問題」解決ケーススタディ―やさしく学べる応用行動分析(レビュー記事
編著:小笠原 恵
中央法規

ABAの、理論ではなく「実践」に重きを置いた殿堂入り本のなかの4冊目になります。

ただ、前回ご紹介した「自閉症児のための明るい療育相談室」が、徹底して「実践」に特化していて、同じ問題に対しても違う対応があって当たり前、理論がしっかり分かっている人なら当然分かるでしょう、といった感じである意味突き放したスタンスをとっているのに対して、この本は、やはり実際の問題行動を例にとった実践スタイルをとってはいるものの、あくまでもそれらを「ケーススタディ」ととらえ、そこからより一般的なABAの理論を説明しようとしている点が大きく異なります。

本書が、非常に多彩な「問題行動」をとりあげていることは、目次を見ても明らかです。

第1章 人が行う行動の理由を探る
  事例:妹の髪の毛を引っ張ってしまうかんちゃん
第2章 生活を豊かにするアプローチ
 第1節 上手なきっかけのつくり方
  事例:友だちを叩いてしまうかずくん
  事例:状況にかまわず、ゲームのセリフを言ってしまうひろくん
 第2節 行動の理由に適合した対応方法
  事例:体操の時間中友だちの足を引っ掛けたり、床に寝そべってしまうりょうくん
  事例:自傷・他害行動のあるゆうちゃん
  事例:職員に汚言を言ってしまうのりさん
 第3節 行動問題を起こさない環境のつくり方
  事例:教室の電気を消してしまうゆまちゃん
  事例:携帯電話にこだわりをもつこゆちゃん
 第4節 自分の行動のマネジメント
  事例:授業中の空書や手をヒラヒラさせる行動が目立つのりくん
  事例:一方的におしゃべりをするまさくん
  事例:無断外出をしてしまうしげるさん
 第5節 子どもをやる気にさせる手立て
  事例:ワークシステムの順番が守れないこうちゃん
  事例:宿題をしないつよしくん
第3章 包括的なアプローチ
  事例:動きの停止や儀式的な行動がみられる高山さん
  事例:やけ食いがみられるかいくん
  事例:性器いじりをするさだおくん


・・・ざっと見ただけで、私も身につまされて「ああ、確かに娘にもこういう問題行動があるなあ」と思えるものがいくつもあります。

本書の魅力は、そういった「今すぐ解決したい!」と思えるような具体的な問題行動をたくさん取り扱いながらも、実際の中身としては初級~中級レベルまでをカバーするような、意外にもオーソドックスなABA教科書としての構成になっているという点にあるでしょう。
単なる事例・実践の羅列ではなく、ちゃんと最初から順に読んでいけばABAの「理論」が学べるようになっているわけです。

ABC分析や、仮説の検証(本書では「頭のなかのアセスメント」というユニークな手法が採用されています。詳しくはオリジナルのレビュー記事をご覧ください)から始まり、問題行動への対応で欠かせない分化強化やプロンプトなどの考え方もしっかり説明されています。
しかも、それらの説明が教科書的な文章で終わらず、すべて「ケーススタディ」の実践例として紹介されているので、具体的で分かりやすいというメリットも出ています。

そういった意味で、この本は「実践」のカテゴリで紹介してはいるものの、むしろ「理論」を学ぶための教科書として読むことのできる優れた本として位置づけたほうがいいのかもしれませんね。


さて、ところで、この本のように、さまざまなケーススタディを掲載することで、ABAの問題解決への具体的なアプローチを解説していくというアプローチの本が、もう1冊出ています。
こちらも読みやすく、ABC分析をベースとしたABAの具体的取り組みがよく分かるので、おすすめです。



応用行動分析学から学ぶ子ども観察力&支援力養成ガイド―発達障害のある子の行動問題を読み解く!(レビュー記事
著:平澤 紀子
学研 ヒューマンケアブックス

(次回に続きます。)

※ブックレビュー一覧をまとめた記事はこちら
posted by そらパパ at 21:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 療育一般 | 更新情報をチェックする
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