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2011年06月27日 [ Mon ]

殿堂入りおすすめ本・まとめて再レビュー(10)

過去に「殿堂入り」として強くおすすめした本を、現在の視点から改めてレビューしつつ、まとめなおすシリーズ記事の10回目です。
今回も、前回にひきつづき、「ABA(応用行動分析)」に関連する実践的な殿堂入り本の続きです。

2.ABA(応用行動分析)・行動療法についての本(続き)

<殿堂入りおすすめ本>(続き)



家庭で無理なく楽しくできるコミュニケーション課題30(レビュー記事)

前回ご紹介した、「家庭で無理なく楽しくできる生活・学習課題46」の続編という位置づけの本ですが、実際にはまったく別の本と言ってしまっていいと思います。

この本は、(ちょっと語弊があることを承知で、あえて)一言で言ってしまえば「ロヴァース法を家でやるための本」です。

私は、「日本における自閉症療育のためのABA」には、大きく分けて2種類あると思っています。
1つは、「早期集中介入、ロヴァース法的なABA」であり、もう1つは「それ以外のABA」です。

ロヴァース法というのは、アメリカUCLAのロヴァース博士が開発したABAセラピーで、机に向かわせて課題をやらせるスタイルのABAを、できるだけ子どもが幼い時期から開始して、2年間毎週40時間という超過密スケジュールで徹底的に実施するという、端的にいえば「スパルタABAセラピー」です。
その後、さまざまなABAの療育技法が提唱されていますが、幼い子どもに集中的にABAを実施するというロヴァース法の基本スタイルは脈々と継承されており、それらはまとめて「(ABAによる)早期集中介入」と呼ばれます。

そして、このロヴァース法(および関連するABA技法)による家庭療育に取り組む親御さんの会として「つみきの会」というNPO法人があります。
この会の創始者かつ代表で、自らも自閉症児の親御さんであるのが藤坂龍司氏であり、本書は、その藤坂氏がこれまでに「つみきの会」で培ったノウハウをまとめた「日本の家庭療育用にアレンジした、ロヴァース法的アプローチによる言語・コミュニケーショントレーニングの本」になっているというわけです。(実際、共著者である井上氏のブログ記事によると、療育プログラムの部分はほぼ専ら藤坂氏によって書かれたものであるとのことです。)

ちなみに、本書のシリーズ前著となる「家庭で無理なく楽しくできる生活・学習課題46」ですが、こちらはロヴァース法的な「早期集中介入」のニュアンスはほとんどありません。「無理をせず、楽しく、できることを伸ばしていきましょう(そのためにABAをうまく活用しましょう)」といったニュアンスが前面に出ています。
ですから先ほどの大雑把なカテゴリ分けで言えば、前著は「ロヴァース法以外のABA」に属する本だと言ってしまっていいでしょう。

つまり、同じシリーズの2冊でありながら、1冊めは「非ロヴァース法的なABA」の本となっていて、こちらの2冊めは「典型的なロヴァース法的ABA」になっているというわけです。

ちなみに、なぜロヴァース法的なABAとそうでないABAというところで「線引き」するのか、といえば、家庭での療育の「ポートフォリオ」(どんな療育にどの程度のリソースを投入するか)を考えるときに、この二者の扱いがまったく異なってくるからです。

ロヴァース法的ABAを選択する、ということは、家庭での時間すべてをそれだけに捧げるということを意味します。週40時間というのは、簡単にいえばサラリーマンの法定労働時間に近い時間、ずっとセラピーに取り組む、ということですから、当然です。他の療育も一緒にやるというのは考えにくいでしょう。
そして、それだけの負担がかかるということは、親御さんがストレスから抑うつ状態になってしまうとか、子どもが耐え切れなくなるとか、セラピストを雇う場合にはとんでもない金銭的負担がかかるとか、そういうリスクを抱えることも意味します。
確かに大きな成果がでる可能性もあるとされている療育法ですが、「それだけにかかりっきり」になってしまって、失敗すると療育が根底から崩れてしまうということもあって、「ハイリスク・ハイリターン」な特殊な療育法である、というのが私の考えです。

それに対して、「ロヴァース法的に取り組まないABA」は、日常生活でのかかわりを工夫する、毎日の短い時間だけABAでの課題(セラピー)に取り組む、というものであって、他の療育法と共存させつつ、「家庭療育のポートフォリオ」を安全に組むことができます。

そんなわけで、私は基本的にはABAのおすすめ本をご紹介するときは「非ロヴァース法的なABA」の本を選んでいるのですが、こと本書に限って言えば、多くの親御さんが特に関心のある「どうしてもことばを話すようになって欲しい」というテーマに真正面から取り組み、1つのパターン化された(しかも成功例のある)トレーニング法が詳細に掲載されているという意味で、極めて高い価値があることは間違いありません。

使い方はちょっと難しいですが、殿堂入りにふさわしい、「貴重な情報満載の本」です。

(次回に続きます。)

※ブックレビュー一覧をまとめた記事はこちら

posted by そらパパ at 22:49 はてなブックマーク | コメント(2) | トラックバック(0) | 療育一般
この記事へのコメント
初めまして。いつも楽しく読んでおります。
子供の発達障害がわかって、最近療育について学び始めた初心者です。

そらパパさんのようにロヴァース式のリスクをちゃんと説明してあるところは、少ないんじゃないかなと感じております。
ロヴァース式の団体がそんなこと説明したら、入る人が減ってしまうという問題があるでしょうけど

療育初心者がちょっとネットで調べただけだと「ロヴァース式しか子供がのびないらしい」「他の療育は効果が全くないらしい」と誤解をしかねないのでは、と思っています。
某会のHPでは、ロヴァース式だけがDQ等の数値が改善した、という報告書も載せられてたりしますので。

感覚統合、teacch、pecs等、アプローチの仕方や働きかけるところがそれぞれ違うので、DQ等の数値変化だけで比較できるものではないし、それぞれを必要とする子供がいると思うのですが。

なので、リスクをきちんと説明してくれている、このブログはとても貴重だと思います。
Posted by tama at 2011年06月28日 05:15
tamaさん、

コメントありがとうございます。
ご返事が遅くなりすみません。

ロヴァース法、確かに喧伝されている効果だけを見ると、唯一無二の素晴らしい方法であるようにも感じられますが、同時に、親にとっても子どもにとっても、コストもリスクもかなり大きな方法であるということも事実だと思います。

(また、ロヴァース法で大きく伸びるのはどちらかというと「軽い子」であって、「重い子」はそれほどでもない、という傾向もあるようです。)

ともあれ、療育というのは子どもを巻き込んだ後戻りのできない取り組みなので、単にハイリターンを追いかけるというのではなく、リスクやコストまでを考慮に入れて、むしろ「あまりうまく行かなかったとしても大きく失うことがないような」療育のポートフォリオを組んでいくことが大切なんじゃないかな、と思っています。

大事なお子さん(と家族)の療育を、「ああ、失敗しちゃった、残念だったね」で終わらせるわけにはいかないわけですからね。

ABAそれ自体は療育にとって必須といってもいいノウハウですから、TEACCHの技法や考え方、絵カード療育の技法などと組み合わせてお子さんにとって最適な療育のポートフォリオを組んでいきたいですね。

これからもよろしくお願いします。
Posted by そらパパ at 2011年07月01日 23:23


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