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2006年07月28日 [ Fri ]

PECS特別講義(3)−続・PECSとロヴァース式の違い

※今回のシリーズ記事は、先日受講したPECS特別講義の内容を、私なりに解釈・再構成して書いているものです。誤解している部分もあるかもしれませんし、講義で触れられなかった内容を私が勝手に追加している部分もあります。内容についての文責はすべて私にあります。

ボンディ先生の特別講義の中で、PECSと「これまでの(ABAによる)コミュニケーション療育法」の違いが、チャートによって非常に鮮やかな形で示されました。

(以下のチャートは、前回の記事から、個別のステップの解説を除いたものです。)

1.PECSの場合
@マンド/タクト
Aマンド
Bイントラバーバル/マンド
Cイントラバーバル/タクト
Dタクト


2.これまでのコミュニケーション療育の場合
@先習行動
Aエコーイック
Bイントラバーバル/エコーイック/タクト
Cイントラバーバル/タクト
Dタクト
Eイントラバーバル/エコーイック/マンド/タクト
Fイントラバーバル/マンド/タクト
Gマンド/タクト
Hマンド


両者を比較すると、PECSのほうがはるかにシンプルかつ効率的で、子どもにとって重要な「マンド(要求表現)」が最初に身につくという点でも優れていることが分かります。
これは、音声言語にこだわらず、絵カードを使うという「パラダイムチェンジ」によって初めて得られるメリットです。(参考記事

そして、この2つのカリキュラムを比較すると、もう1点とても重要なポイントがあります。ボンディ先生も、むしろこちらの方を強調していました。

それは、PECSでは言語行動の要素の追加・削除が、カリキュラムの1ステップにつき1つしかないということです。

例えば、PECSのステップ@からAでは、「タクト」が消える(見えているものの要求から見えないものの要求へ)という1つの変化がありますし、AからBでは「イントラバーバル」が増える(親の「何が欲しいの?」という質問(実際には絵カードを示すことによって行なわれるようです)に答える訓練となる)という1つの変化があります。BからC、CからDも、変化はつねに1つだけです。これによって、子どもにとっての療育のステップアップの難易度を下げている(スモールステップ)というわけです。

それに対し、「これまでの方法」では、AからBでは「イントラバーバル」と「タクト」の追加という2つの変化が起こりますし、DからEでは「イントラバーバル」「エコーイック」「マンド」という3つもの要素が追加されます。
こういった変化が大きく整理されていないカリキュラムでは、各段階の移行の際に子どもが混乱してしまう可能性が高くなり、効果的な療育が難しくなるのではないか、とボンディ先生は指摘していました。

この2つのチャートは、PECSと「これまでの方法」(端的には、ロヴァース式)とで、親にとっての療育の難易度、そして子どもにとっての療育の効率がいかに違うかということをはっきりと示していると思います。

・・・ただし、です。
実はそれでも、「これまでの方法」には、意義は残っています。
それは、絵カードではなく音声によることばを療育するには、やっぱり『これまでの方法』によらざるを得ないからです。

PECSによるコミュニケーション療育は、音声言語の代わりに絵カードを使うことで、ある意味「理想的な」カリキュラムを構成することに成功していると思います。
その一方で、純粋なPECSでは、音声言語へのフォーカスは強くありません。
これは、PECSでは音声言語が身につかない、療育されないということではなく、まずは「コミュニケーション」そのものを身につけさせ、そのコミュニケーションが多様化・複雑化していく流れの中の必然性として音声言語への移行を目指すのです。
具体的に言うと、子どもが使いたい単語が200語くらいのオーダーを超えてくると、どうしてもカードではかさばって不便になるため、音声言語を使う必然性も出てきて、子どもにとっての動機づけもされるようになってきます。実際、PECSをやっている自閉症児がこの水準まで伸びてくると、かなりの確率で音声言語を身につけるのだそうです。(逆にいえば、ここまで行かない場合は、絵カードを使うのがその子どもにとってベストのコミュニケーション法だということも言えるわけです)

ただ、それでも、どうしても音声言語にももっと力を入れたい、トレーニングをしたいと考える親御さんもいると思います。そうなると、(多少改善はできるにせよ)「これまでの方法」を採用するしかないのです。

ここで大切なことは、「これまでの方法」による音声言語のABA療育を実施するにしても、PECSを同時に使わない手はない、ということです。
音声言語のABA療育に力を入れる立場からも、並行してPECSを教えることは、短期間にマンドのコミュニケーションが習得できることでコミュニケーションすることのメリットに気づくことができること、ひいてはそれが「これまでの方法」での療育への動機づけにもなることなど、メリットがたくさんあります。
もう1つ言えることは、「これまでの方法」は途中で挫折する可能性がかなりあるということです。「これまでの方法」の途中で挫折すると、マンドが身につかない状態になるため、せっかくの訓練の成果は速やかに消去されていってしまうでしょう。
そのときに、PECSの側でマンドが獲得されていたらどうでしょうか? 仮に「これまでの方法」で挫折しても、子どもが絵カードを持ってくるときにエコーイック(音声模倣)をさせるなど、土俵際で踏みとどまって音声言語の療育を継続できるかもしれませんし、子どもがそもそも「コミュニケーション」をやめてしまうというリスクも抑えられます。

「これまでの方法」で音声言語にこだわる立場を選ぶとしても、PECSを並行して療育することには大きな意味があると考えられるのです。

(次回に続きます。)

posted by そらパパ at 22:33 はてなブックマーク | コメント(0) | トラックバック(0) | 理論・知見
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