2011年06月20日

殿堂入りおすすめ本・まとめて再レビュー(9)

過去に「殿堂入り」として強くおすすめした本を、現在の視点から改めてレビューしつつ、まとめなおすシリーズ記事の9回目です。
今回も、前回にひきつづき、「ABA(応用行動分析)」に関連する殿堂入り本の続きですが、より「応用・実践」に近いものが登場します。

2.ABA(応用行動分析)・行動療法についての本(続き)

<殿堂入りおすすめ本>(続き)



家庭で無理なく楽しくできる生活・学習課題46(レビュー記事

これから紹介するABAの殿堂入り本は、ABAの「実践」のためのテキストが中心になってきますが、重要なポイントとして指摘しておきたいのは、ABAの「実践」というのは、あくまで実践「例」であって、それ以上でも以下でもない、ということです。

実践例で紹介されているのは、特定のお子さんに対する特定の接しかた、ないしは「一般化されたケース」を想定した「一般的な取り組みかた」であって、実際に皆さんの目の前にいる、自分が対応しなければならないお子さんに対する働きかけとしてそのまま適用できるものではありません。
この点が、俗にいうカリキュラムやマニュアルとは本質的に異なります。

まあ、もちろん、「紹介されている一般論が個別のケースにそのまま適用できるわけではない」というのは、療育(だけでなく教育や、人とかかわるすべての問題)全般について言えることではあるのですが、ABAがそれらと異なるのは、「その背後にある『行動原理』は、一般論に限らず、個別のケースにまで適用できる」という点です。

つまり、ことABAについては、「個別の実践例」を読むことで実践を学ぶ、というよりは、まずは理論的な教科書を読んで「行動原理」を学んで、あとは実際に子どもにその「原理」を適用し、試行錯誤することで実践を学ぶことが基本になります
そして、本書をはじめとする「実践例」は、その試行錯誤のプロセスにおける参考、あるいは「達人の技」を学ぶことによる(もっと高度な意味での)自己研鑽、という位置づけであるべきだと言えます。

ちょっと難しい言い方をするならば、ABAの個別具体的な療育は、さまざまな実践例から「帰納的に」導かれるというよりは、行動理論から「演繹的に」導かれ、試行錯誤によって検証されるものであって、これが他の経験論的な療育法とは決定的に異なる点だと言えるわけです。

・・・能書きが長くなっていますが、要は何を言いたいのかといえば、今回紹介するような「ABAの実践書」は、まだABAの基礎がよく分かっていない段階でいきなり読んで、そこからABAのテクニックを実践的にマスターしよう、と思ってもうまくいきにくいだろう、ということです。
そうではなく、既にABAの基本を(前回までに紹介したような教科書的な本で)学んで、実際にお子さんに対して試行錯誤を始めているような人が、「達人の技・アドバイス」として読んで、初めて最大の力を発揮するわけです。

たとえば本書には、46の基本的な生活・学習課題が登場し、それぞれに具体的な指導方法が掲載されています。
でも、ABAについての前提知識がなければ、おそらくそれらはばらばらなテクニックとしてしか理解することができず、「なぜ(他のやりかたではなく)そういう指導方法を採用するのか」「子どものスキルや状態などによって掲載されている指導法が適用できないとき、どう修正するのがいいのか」といったことが見えてこないでしょう。
逆に、ABAの理論的側面を理解していれば、掲載されている指導法のどの部分に「著者ならではのノウハウ」が盛り込まれているのかも分かるでしょうし、「行動原理だけでは『何に取り組めばいいのか』という方向性のみえないABAという療育法に、著者がどのような『方向性』をつけて療育をしようとしているのか」という、まさにABAの「実践書」から学ぶべき一番重要なポイントを理解することができるはずなのです。

本書の具体的な内容については、以前書いたレビュー記事で触れていますので省略しますが、本書の最大の特徴は、とかく「ハードな訓練を乗り越えよう」「早期集中介入で大きく伸ばそう」といった、スパルタ教育的な側面が強調されがちな「自閉症児へのABA療育」について、それらの風潮とは対照的に、「家庭での療育は、無理をせず、楽しく、前向きに取り組んでいきましょう」というソフトなメッセージをはっきり前面に打ち出している点にあると思います。

この本から、ABA療育の実践を始める親御さんは幸せだと思います。
ABAによる家庭療育の最大のメリットは、「大きく伸びる」とかそういうことではなくて、自閉症のお子さんと接するときに親御さんが最も困難を感じやすい、「親子のかかわりが作りにくい」「反応性が低くて子育てに張り合いを感じられない」といった問題について、具体的な「かかわりかた」を教えてくれるところにあると思っています。
その部分にしっかりと焦点を当てて、「楽しく、やさしい療育」を推進する本書は、まさに「殿堂入り」にふさわしい本だ、と、改めて感じます。

ただ、繰り返しになりますが、いきなりこの本を読むよりも、これまでにご紹介したような「行動分析の基礎の教科書」的なものを先に読んだ方が、理解がぐっと深まると思います。本書は、ABAの基礎を学んだ後に読む「具体的なABA療育メソッド」として読んでこそ、より活きてくるのだと確信しています。

(次回に続きます。)

※ブックレビュー一覧をまとめた記事はこちら
posted by そらパパ at 21:08| Comment(0) | TrackBack(0) | そらまめ式 | 更新情報をチェックする
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