2011年06月13日

絵カード・コミュニケーション(アプリレビュー)

シンプルさと低価格が魅力の絵カードプラットフォーム。今後のバージョンアップにも期待。



絵カード・コミュニケーション - Noriya Kobayashi

絵カード・コミュニケーション
315円(税込)
iPhoneアプリ
パンダパパさん制作


当ブログで初めての、スマートフォン用の「アプリ」のレビューです。

本アプリは、ブログのコメント欄やTwitterでも交流のある「パンダパパ」さんが制作された絵カードアプリです。
このアプリは「iPhoneアプリ」ですので、iPhoneやiPad、iPod Touchなどで利用できます。私はiPod Touchで使っています。


iPod Touch 8GB / 32GB
Apple


この手のアプリは価格帯がかなり高い(数千円クラス)のが普通ですが、このアプリはこのレビューを書いている時点で315円(税込)と非常にリーズナブルです。

実は、うちの娘の場合、手にとったもの(とりわけ、気に入ったもの)をくるくる回すクセがあり、その勢いで何度も床に落としてしまうので、スマートフォンのような精密機器を渡すことが難しい(さらに言えば、スマートフォンには特定の操作をしないと当該アプリにたどりつけないモーダルな操作性がどうしても残ってしまうので、知的に重い子どもだと支援者の手助けなしでアプリを使いこなすのが難しい)ため、これまでにあった高価な絵カードアプリを購入しようとはなかなか思えませんでした。
ただ、こちらのアプリはとても安価ですので、とりあえず「絵カードアプリってどんな感じだろう?」あるいは「親が子どもに絵カードを見せたいときには使えるかな?」といった気軽な気持ちで購入してみることができました。
(ですので、今回のレビューでも、子どもが自ら使いこなすアプリとしてのレビューはできていないことをご了承ください。)

さて、そんなわけで本アプリはとても安価な絵カードアプリですが、その代わり、機能的は非常にシンプルなものになっています。

アプリを起動すると、横画面の上2/3に絵カードの一覧が、下1/3に緑色の帯が表示されます(起動時に緑色の帯だけが表示された場合は、画面右上の下矢印をタップすると、こちらの画面になります。)



ここで、使いたい絵カードを指でなぞって移動させ、緑色の帯のエリアに配置します。



絵カードを並べ終わったら、画面左側にある人のマークをタップすると、絵カード選択画面が消え、表示が緑色の帯の部分に並べた絵カードだけになります。



この状態でメッセージを伝えたい人に画面を見せることで、絵カードを使ったコミュニケーションが成立する、という仕立てになっているわけです。

ちなみに、上2/3の絵カード一覧のエリアは左右にフリックすることで別ページに移動できますので、かなりたくさんの絵カードを「語彙」としてストックしておくことができます。
また、設定画面では絵カードのサイズを「大」「中」「小」から、文字の位置を「上」「下」「なし」から選べるので、普段使っている絵カードに近いデザインにカスタマイズすることも可能でしょう。


↑カードサイズを「小」、文字の位置を「上」に変更した場合のイメージです。

絵カードの追加は、「カード管理」画面から行ないます。
カメラロールの写真を使うオーソドックスな方法はもちろん、Googleの画像検索からイラストや写真を拾ってくることもできるようになっています。


↑絵カード追加画面

ただ、かならず写真中央部分を正方形で切り取ってくるようになっているようで、写真をトリミングしたり中央以外の部分を利用したりすることは現時点ではできないようです。

しばらくいじってみた感想として、このアプリのユニークな点は、絵カードコミュニケーションの単なる「プラットフォーム」になっているところかな、と思います。
つまり、単に絵カードをライブラリとして用意しておいてそれを並べて誰かに見せるという仕組み、それだけが用意されていて、この仕組みをベースに、どんな絵カードを使って、どんなやりかたでコミュニケーションしたり「療育」したりするか、ということにまったくコミットしていないということです。

言ってみれば、このアプリは「トランプ」のようなものです。その「トランプ」を使って、どんなルールでどんな遊び方をすればいいかは決められていないわけです。

ですから、このアプリを使って、某有名な絵カード交換コミュニケーションの療育をやることもできるし、スケジュール系の絵カード(時間とか行き先とか活動とか)を用意しておいて親が子どもにスケジュールを提示する目的でも使えるし、単純に子どもが好きな絵をたくさん用意して並べて遊ぶだけのおもちゃとして使うこともできるでしょう。

そういう自由度こそが、このアプリの最大の特徴であり、魅力なんじゃないかな、と感じました。

そういった「汎用的な絵カードプラットフォーム」としてみたとき、シンプルさを維持しつつ、今後のバージョンアップが期待されるポイントがいくつかあります。

・絵データ取り込み時のトリミングの自由度アップ
・絵カードに音声を録音できる機能
・VOCAモード(緑色の帯をなくして、絵カードも動かないようにして、タッチすると音声が出るだけのモード)
・縦画面モード(たくさん絵カードを並べない限り、横画面である必然性はあまりないと思います)


個人的には、「緑色の帯に絵カードを移動する」「さらにそのうえで、帯の部分だけの表示モードに移行する」という操作性は必ずしもスマートフォンアプリとしてベストではないんじゃないかと感じたので、この部分は自由度を増したほうがいいかな、と思います。
たとえば、ずらっと並んだ絵カードをタッチしたらその絵カード1枚だけになり、もう一度タッチしたら元にもどる(ずらっと並んだ状態に戻る)という操作性のほうが、「重い子」には向いているかもしれません

まあこの辺りは、別アプリとして、どちらかというとVOCAに近い絵カードアプリとして開発していただけばいいのかもしれませんね。

ともあれ、「とりあえずお試し」するだけの価値のある絵カードアプリです。iPhone, iPod Touchなどをお持ちで、絵カードアプリにご興味のある方は、ぜひどうぞ。
posted by そらパパ at 22:34| Comment(11) | TrackBack(0) | 療育一般 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは、このアプリの開発者です。今回のアップデート(ver. 1.2)で音声吹き込み機能を実装しました。

VOCAモドキになってますので、お楽しみ下さい。
Posted by パンダパパ at 2011年09月01日 20:47
パンダパパさん、

コメントありがとうございます。

また、バージョンアップ&そのご連絡、ありがとうございました。

新しいバージョン、使ってみましたが、音声が出ると印象が全然違いますね!
これで絵カードアプリとしての基本的な実装はいいんじゃないかと感じました。
あとは、アプリ内に最低限の操作方法のマニュアルがあったほうがいいかもしれません。

ちなみに我が家は、まだタッチ&ドラッグとかの操作は厳しいので、よりVOCA的なものだったら使えるかな、と感じています。
(記事でも書いてますが、緑のエリアをなくして、絵カードを押したら音声が出るだけ、というものです。これが別アプリで出たらそちらも購入したいです。)
Posted by そらパパ at 2011年09月03日 09:39
こんばんは、開発者です。
カードを緑の文書バーに乗せないで音声を出すモードとして、VOCAモードは検討しておきます。
緑の文章バーの無いバージョンは、カードライブラリが充実していることが前提になるので、しばらく先ですね。
Posted by パンダパパ at 2011年09月05日 21:10
うちは、アンドロイドです。ぜひぜひ、アンドロイドのほうもよろしくです。
なぜか、apple陣営のみこの手のソフト、アプリがおおいですが、アンドロイド愛用の人もおおいのではと疑問がでてきます。
Posted by rencon at 2011年09月08日 14:02
トーキングエイドが壊れて9月末にipadを購入。使えそうなアプリを探しています。絵カード.・コミュニケーションは、ipad用には無いのでしょうか?
Posted by 中田 とも子 at 2012年11月06日 00:15
中田 とも子 さんへ

パンダパパこと、「絵カード・コミュニケーション」の開発者です。
「絵カード・コミュニケーション」はiPadでも使えます。iPad専用アプリではなく、iPhoneアプリとしてiPadで使えます。
iPadで使うときは、カードサイズを「小」に設定しておくのが良いと思います。そうすればページ上に15枚のカード、文章バー上に5枚のカードが配置できます。

http://pandanote.jp/apps/picturecard-communication.html
がサポートサイトになっていますので、お気軽にお問い合わせください。
と言っても、私のブログなんですけどね。私も自閉症児の親です。
Posted by パンダパパ at 2012年11月06日 21:36
そらパパさん、こんばんは。

パンダパパこと、「絵カード・コミュにエーション」の開発者です。
このレビューは、最初のリリース版(V1.0)の時のモノですよね、改めて読み直してみました。当時のそらパパさんの要望が、結構実現されたなと。現在のバージョンはV1.3 (2011年12月アップデート)です。

・絵データ取り込み時のトリミングの自由度アップ
これは実現しました。

>・絵カードに音声を録音できる機能
これも実現しました。
そうなんですよ、初期リリースには音声機能は付いていなかった。

>・VOCAモード(緑色の帯をなくして、絵カードも動かないようにして、タッチすると音声が出るだけのモード)
これも実現しました。緑色の帯はありますけどね。

>・縦画面モード(たくさん絵カードを並べない限り、横画面である必然性はあまりないと思います)
これは却下^ ^ 。
リリース前の開発版では、縦画面モードがありましたが、世には出さないことにしました。

>絵カードを並べ終わったら、画面左側にある人のマークをタップすると、絵カード選択画面が消え、表示が緑色の帯の部分に並べた絵カードだけになります。
この機能は消しました。そのままiPhoneを人に見せても、見せられた方に混乱はなさそうだし。余計なボタン操作を無くす方を優先しました。

ま、そんな感じです。
では、また!
Posted by パンダパパ at 2012年11月06日 21:59
中田さん、

コメントありがとうございました。
ご質問については、アプリ作者であるパンダパパさんにお答えいただきました。


パンダパパさん、

コメントありがとうございました。
また、当ブログへの質問にお答えくださり、恐縮です。(^^)
Posted by そらパパ at 2012年11月11日 22:39
絵カード(シンボル)を使ったコミュニケーションアプリとして多くの方からお勧めしていただき、操作方法を覚えようとしているところです。

その中でご質問です。
絵カードを追加する際に
「画像変更」>「イラスト検索」が
とても便利だと思います。
ただ、
取り込みは画像を「長押し」
が反応しないことが多いと感じています。

画像一覧表示で試したり、
単一画像表示で試したり
していますがうまくいきません。

私の動作に問題があるのでしょうか?
Posted by kinkin at 2015年12月03日 11:56
kinkin さんへ

絵カード・コミュニケーションの開発者のkobayashiです。
そらパパさんのブログの場を借りまして、アプリへのご質問への回答をさせていただきます。

> 取り込みは画像を「長押し」
> が反応しないことが多いと感じています。

はい。誠に申し訳ありませんが、そうなんです。

この機能なのですが、
iOSのバージョンによって、うまく動かなかったり、
電源ONOFFでなんとかなったり、、、と、
なかなか不安定です(>_<)。

一度、iPhoneの電源を切って、再び電源を入れてから、画像取り込みを試してみてください。
「電源ボタンの長押し。→スライドで電源オフ」

それでも、絵カード/Cで画像取り込みがうまくいかない場合は、今の所、なすすべがありません。
ご面倒ですが、Safariブラウザーで一度、画像を保存してから、
絵カード/Cでは「写真アルバム」からの取り込みで画像をセットしてください。

よろしくお願いします。
kobayashi
Posted by パンダパパ(こばやし) at 2015年12月08日 10:52
kinkinさん、

コメントありがとうございました。


パンダパパさん、

さっそくのサポート、ありがとうございました。
Posted by そらパパ at 2015年12月14日 21:19
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック
子どもが自閉症かもしれない!どうしよう!という親御さんへのアドバイスはこちら
孫が自閉症らしい、どうしたら?という祖父母の方へのアドバイスはこちら

fortop.gif当ブログの全体像を知るには、こちらをご覧ください。
←時間の構造化に役立つ電子タイマー製作キットです。
PECS等に使える絵カード用テンプレートを公開しています。
自閉症関連のブックレビューも多数掲載しています。

花風社・浅見淳子社長との経緯についてはこちらでまとめています。