
↑再修正の最大のポイントは、時計を改造してしまったことです。
もともと、まだ到底時計が読める段階に入っていない娘に、普通の三針式の時計がわかるとは思えなかったので、「時計の改造」は当初から検討していました。
ただ、これまで下げていた時計はある程度の値段がするもので、いじって壊してしまうとダメージが大きいので、改めてダ○ソーで400円の時計を買ってきて、分解して分針と秒針を引き抜いて外し、時針のみの時計を作りました。

↑そして、時刻をあらわす絵カードも、「○○じまえ」とか「○○じすぎ」というシンプルなものに。
本来は、「まえ」とか「すぎ」といった表現さえいらないかもしれません。「まえ」とか「すぎ」というのは相対概念なので、絶対概念である「○○分」より難しい可能性さえありますので。
まあ、難しければその部分は無視しても今回の絵カードは十分読めますし、少なくともカードのイラストと時計の針の比較は、娘にとってはるかに易しくなったと思われます。
恐らく、こういった働きかけについては、「子どもにとって分かりやすくなることはいいことだ」という肯定的な意見と、「実際の社会にある時計が分からなくなるのでは」あるいは「普段目にするものと同じものにしたほうがいいのでは」といった否定的な意見の両方があると思います。
私も、どちらの意見にも一理あると思います。
ですので、今回、私がなぜ時計の単純化(特殊化)という選択肢を選んだかについて書いておきたいと思います。
これは、少しおおげさに言えば、「統合教育か特殊教育か」という、議論の尽きることのない大きな問題ともつながっていると思います。
子どもが「伸びる」ときというのは、いま持っているさまざまなスキルを基盤にして、それらがより高い次元で再構成されるときだと考えられます。
これはTEACCHでいう「めばえ反応」という考え方につながりますが、まったくできないことを「できる」ようにしようとするのは、効率が悪いだけでなく、失敗する可能性も高くなります。
「少しできる」、あるいは「やろうとする動きがあるが、できない」といった状態であれば、トレーニングによって効率的に「できる」ようにすることが可能でしょう。
似た考え方は、ABAでも「スモールステップ」という形で出てきます。
つまり、トレーニングごとの目標は高いところにおかず、目の前の比較的簡単に手の届きそうなものにします。そして、その小さな目標が達成されるごとに少しずつ目標を引き上げていき、最終的に本来の高い「大目標」に到達する、というやり方です。
いずれの考え方も、「いきなり難しいことをやらせたら失敗するよ」という、言ってみれば当たり前のことを言っているわけです。
統合教育か特殊教育か、という議論も同じだと私は思います。
健常児の中に飛び込んで一緒に生活する、ということが「背伸びをすればできる」というレベルのお子さんであれば、統合教育を目指すべきでしょう。療育の最終目標は「社会で生きる」ことであり、統合教育はそのための最良の「場」になるはずですから。
でも、健常児と一緒にやっていくことが現時点で「どうしてもできない」お子さんの場合はどうでしょうか(もちろん、この判断自体も難しい問題であり、ここでは議論を簡略化して話しています)。そういうお子さんにとっては、現時点では特殊教育を選ぶことが「スモールステップ」であり、「芽ばえ反応を伸ばす」選択肢だということも多いはずです。
この問題は、表面的なイメージにこだわらず、「子どもの発達をサポートするための最良の選択肢はどれか?」というシンプルな問いに落とし込んで考えるべきだと思います。
さて、そんなわけで、今回のスケジュール用時計の件も、私は娘の現状と、「時計を読む」という発達課題の難易度のバランスから、シンプルに考えました。
娘は、時計が何を意味しているかさえ、まだまったく理解していません。
そんな娘に、3つの針が交錯して動く時計をいきなり与えることは、どう考えても効率的な療育の進め方だとは思えません。
そこで、「スモールステップ」として、まずは時針しかない時計を与えることで、時計という環境の持つ意味を気づかせていこう、と考えたわけです。
もちろん、時計の何たるかを既に理解している、あるいは普通の三針式ないしはデジタル式の時計を「絵」として見てパターンマッチングができるようなお子さんであれば、今回のような改造は必要ないと思います。
療育の中でも、こういった細かな調整はあくまでもお子さんの状態によって個別に決められるべきことです。
逆にいえば、このような「お子さんのための調整」がうまくできたとすれば、マニュアルを読むよりも、そしてもしかすると月に1回しか会えない「プロ」が作成するよりも、親が実行する「家庭の療育」がもっとも効果的な療育になる可能性だってあると思っています。
・・・とりあえず、我が家では、時間についてはしばらくはこれで進めていこうと思います。
将来、時計の意味がわかるようになったら、分針を加える予定です。(分針・秒針は外しましたが、また付けられるように保管してあります。)
2006/8/13 写真追加。スケジュールを貼っておくと、こんな感じで見にきます。

>逆にいえば、このような「お子さんのための調整」
>がうまくできたとすれば、マニュアルを読むより
>も、そしてもしかすると月に1回しか会えない「プ
>ロ」が作成するよりも、親が実行する「家庭の療
>育」がもっとも効果的な療育になる可能性だってあ
>ると思っています。
激しく同感です!
なかなかそらパパさんのように、
マメな、しかも的確な調整ができないのが、難しいところですが。
しかし、楽しいイベントが続く夏こそ、スケジュールを導入するのに丁度いい時期だと思うので、娘にピッタリ合ったスケジュールの示し方を考えようと思っています。
「時針だけ」というやり方が本当に効果的なのか、これは実際にしばらくやってみないと分かりません。
でも、とにかく子どもの個性と発達水準にあった環境を作っていこうという意欲を持ちつづけることが大切だと思いますね。
トラックバックさせていただきました(^^ゞ
ちょうど私の悩みに対するピンポイント的なアドバイスをいただいたと勝手に解釈しました♪
夏休み明けにもう1、2校見学して決断できそうです。
有難うございます(^^)
そんな風に言っていただけると恐縮です。
ここで書いていることは、私の考えというよりはTEACCHが主張している考え方で、自閉症児が特別な困難を持っているとすれば、それにあわせた特別な教育が必要だ、という考え方ですね。
ちなみにうちの娘は、発達指数が30そこそこというかなり重度の発達遅滞がありますので、迷う要素はほとんどないです(^^;)。
ところで、今のところトラックバックはいただいていないようですが、トラックバックのPINGは送っていただけましたでしょうか?