今回は、「ABA(応用行動分析)」に関連する殿堂入り本の続きです。
2.ABA(応用行動分析)・行動療法についての本(続き)
<殿堂入りおすすめ本>(続き)
行動分析学マネジメント-人と組織を変える方法論(レビュー記事)
前回ご紹介した「行動分析学入門―ヒトの行動の思いがけない理由」と同じ著者(共著ですが)による、行動分析学の教科書的なテキストです。
ただし、こちらの本は「組織をマネジメントする」という観点からまとめられた、一般のビジネスマン向けの「ビジネス書」になっています。
ビジネス書という体裁をとっていることで、メリットが2つ生まれています。
1つは、値段が安いこと。
これだけのボリュームのハードカバーの本だと、専門書なら3000円程度は覚悟しなければなりませんが、部数が期待できるビジネス書になっているおかげで、1800円で購入することができます。しかも内容は専門書顔負けの本格的な内容ですから、お得だと思います。
もう1つは、当ブログにお越しいただいている「お父さん」(だけではもちろんありませんが)にとって、本書の内容が家庭と仕事の両方で活用できる可能性がある、ということです。
本書で扱われているテーマが、行動分析学を使って会社などの組織、人材をマネジメントするというものですから、企業などで管理職、プロジェクトリーダーなどの肩書きをもって活躍されている方にとっては、
・ABAの基礎を学ぶことで、療育のために必要なノウハウが学べる
・さらに、ABAをビジネスに応用するためのヒントについても学べる
という、「1粒で2度おいしい」本になっている、というわけです。
ついでにいえば、ビジネス書として会社の机の上に置いてあっても違和感のない本(日経新聞出版の本ですからね)ですので、会社に常備しておいて、昼休みなどの空いた時間を活用して読む、といったことも可能だと思います。
ABAの教科書として純粋にみた場合、本書と、前回ご紹介した「行動分析学入門―ヒトの行動の思いがけない理由」は、情報量としては実はそれほど違いはないと思います。
本書のほうがボリュームが多い分は、大体はビジネスへの応用に関する部分ですので、そういったノウハウに関心があるかないかで、どちらの本を読むかを決めればいいんじゃないかと思います。
(ただ、「行動分析学入門―ヒトの行動の思いがけない理由」と比較すると、より実際のビジネスへの応用に力が注がれた内容になっているので、いきなりこの本だけを「入門書」として読むと、行動分析の全体像は分かりにくいかもしれません。基礎をしっかり学びたい、ビジネスの話はどうでもいいので療育のための行動分析の知識を身につけたい、というニーズには、前回の「行動分析学入門―ヒトの行動の思いがけない理由」のほうが向いているでしょう。)
なお、本書のような「ビジネスに行動分析学を応用する」という分野は「パフォーマンス・マネジメント」とも呼ばれており、関連書籍として下記のものもあります。
パフォーマンス・マネジメント(レビュー記事)
一応、企業で働くサラリーマンを対象にしているようで、トピックとしてはさまざまなビジネスシーンが登場するのですが、内容がちょっと浮世離れしていて、「ビジネス書」としてのリアリティはあまり感じられません(だからこそ、逆に読み物としては面白いものに仕上がっていて、「奇書」と呼ぶのがふさわしいでしょう)。
内容そのものは、大学の先生が書いた手堅いものです。あらゆる問題を解決するために、ひたすらABAの「ABC分析」というツールを活用するというスタイルが徹底していますので、ABC分析について学びたい方には格好の教科書だと思います。
(次回に続きます。)
※ブックレビュー一覧をまとめた記事はこちら。