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歩む:尾家誠子さん(61)=豊前市 人生の原動力、乗馬療法/福岡
◇「馬は笑顔を分けてくれます」
周防灘を望む豊前市の高台。周りを緑に囲まれた知的障害児・者総合施設「恵光園」に「ポック、ポック」というひづめの音が響く。障害者乗馬部門「ヒポクラブ」。障害がある利用者がリハビリやセラピーのために訪れ、馬と交流を深める。
園の主要施設の一つ、更生施設「まぐら寮」の寮長。乗馬療法の導入を提案し、ヒポクラブ創設に力を尽くした。
大卒後、2年間のOL経験を経て神奈川県の知的障害者施設に勤務した。指導員の資格を取った71年、欧州の福祉施設への視察でショックを受けた。スイス・チューリヒの湖畔。自閉症の男の子が、生き生きした表情で白馬にまたがっていた。
「乗馬療法を取り入れたい」。まだ日本では乗馬療法という言葉もない時代。このショックとあこがれが「人生の原動力」になる。
同年、結婚を機に園での勤務が始まる。当時は木造園舎で、園内は岩が転がる荒地がほとんど。職員は岩を除いて植樹する作業に追われた。あこがれを口にすることもはばかられる現実。だが、思いは募った。
利用者の生活支援に奔走しながら、本場イギリスで学んだスタッフを招き入れ、職員や保護者に乗馬療法の良さを伝えた。利用者とともに1年かけてきゅう舎や馬場を作り、クラブを開設したのは97年春。気が付けば四半世紀を要していた。
「資金やスタッフ、土地などどれが欠けても実現しなかった。私はきっかけを作っただけ」
馬を眺め、触れたり、世話をすることで、利用者は療法的効果を得る。コミュニケーションが苦手な人が乗馬体験を話したくなる。何事にも積極的になる。半年間、馬に近づけなかった利用者は馬肌に触れた瞬間、笑顔をはじけさせた。
現在、毎週40人を超える利用者が6頭の馬に親しむ。クラブが出来て来春で10年。人材の確保など課題は多く、これからが正念場と感じている。「園のテーマである『人と自然と動物と』の環境を追求していきたい」【出来祥寿】〔北九州版〕
7月3日朝刊(毎日新聞)
若い頃の乗馬療法への感銘を、30年近くも持ちつづけて、最後に実現したというのが素晴らしいと思います。
ちなみに、私は乗馬療法をはじめとするアニマルセラピーの自閉症児への効果に一定の期待をしていますが、それは「癒し」とか「動物の不思議な超能力」といったものではありません。詳しくはこちらやこちらをご覧下さい。