現在は、「ABA(応用行動分析)」に関連する殿堂入り本をご紹介しています。ABA関連書籍は、殿堂入りしている本が7冊もある「豊作カテゴリ」です。
2.ABA(応用行動分析)・行動療法についての本(続き)
<殿堂入りおすすめ本>(続き)
行動分析学入門―ヒトの行動の思いがけない理由(レビュー記事)
前回紹介した「おかあさん☆おとうさんのための行動科学」が「やさしいABAの入門書」だとすると、こちらは新書ながら「本格的な入門書」といった位置づけになります。
ABAというのは「応用行動分析(Applied Behavior Analysis)」の略で、「行動分析学」という基礎心理学の理論を、療育などに応用したものです。本書はそのABAのベースになっている「行動分析学」という心理学について、大学の先生が書いた教科書的な入門書です。(「応用」のAppliedを除いて、行動分析学のことをBAと呼ぶこともあります。)
ですから、基本的には最初から最後まで「心理学の理論」について書かれていて、具体的なテクニックや、療育のやり方などを期待すべき本ではありません。
でも、ABAというのはテクニックをたくさん覚えることよりも、「基本的な理論」をしっかり学んで、「理論の全体像」をつかむことのほうが大切です。
ABAの「テクニック」「応用」の部分は、どれも「基本的な理論」から合理的・理論的に導き出されているものです。なので、行動分析の基本が理解できれば、ABAの「個別のテクニック」も簡単に理解することができますし、さらには自分で新しい方法もいくらでも発案して試していくことができるようになりますから、あまり「たくさん覚える」必要がなくなってしまうのです。
これは、しっかりした理論をもつABAだからこその強みであり、だからこそ、私たちは個別のテクニックに走ることなく、ABAの「基礎理論」をしっかり学ぶ必要があるわけです。
また、ABA/行動分析学というのは、ちょっと「変わった」心理学であり、ヒトの心や行動に対する見方にも独特のものがあります。
例えば、「のどが渇いたからビールを飲む」とか「あいつが仕事をしないのはやる気がないからだ」などというのは、行動分析学では「ダメな説明」になります。(なぜこの説明ではダメで、行動分析学的にはどのように表現するのかについては、ぜひ本書を読んで確認してみてください。)
こういった「ABAならではのちょっと変わった、ヒトの心や行動に対する視点」が、個別のABAのテクニックの裏づけにもなっていますから、表面的なABAのテクニックだけを追いかけても「ABAの本質の理解」にはたどり着けない可能性が高いですし、そうなると、療育にABAを応用していくにあたっても、どこかの時点で確実に行き詰まるでしょう。
そういう意味では、ABAというのは、易しい側面と難解な側面、両方が複雑にからみあったような療育法だと言えます。
ですから、確かにこの本はやや難解であることは間違いないのですが、「ABAをちゃんと学ぼう、理解しよう」と考えるならば、あえて通るべき「ちょっと険しい道」なのだと思います。
まあ、難解難解といっても、さすがに一般向けの新書として書き下ろされ、ページ数も200ページにも満たない(行間もそこそこあいていて読みやすい)わけですから、新書が普通に読める人なら1週間もあれば読み通せるはずだとは思います。(新書慣れしている方なら、もしかしたら1日で読めるかもしれません。)
最初に読むときは、細かいところの疑問にあまり深入りせず、まず全体を通読することをおすすめします。
そのうえで、1度ではなく、ぜひ2度3度と繰り返し読んでみてください。
本書はかなり緻密に計算されて書かれているので、情報の密度が濃く、繰り返し読めば読むほど「新しい発見」がきっとあります。私自身も、初めて読んだときと、改めて読んだ2回目とでは、まったく違った読後感があり、むしろ2回目のほうがさまざまな「気づき」がありました。
当ブログのこの本のレビュー記事も、「2回目に読んだとき」の感想をベースに書かれているものです。
もし、この本を読んで、やっぱり難解でよく分からなかったら…?
そんなときは、前回ご紹介した「おかあさん☆おとうさんのための行動科学をまず読んでみましょう。既にご紹介のとおり、こちらの本はABAのもっとも基本的なところを、徹底的に分かりやすく解説した入門書です。
(次回に続きます。)
※ブックレビュー一覧をまとめた記事はこちら。