現在は、「ABA(応用行動分析)」に関連する殿堂入り本をご紹介しています。
2.ABA(応用行動分析)・行動療法についての本(続き)
<殿堂入りおすすめ本>(続き)
(左はAmazon、右は楽天ブックス)
おかあさん☆おとうさんのための行動科学(レビュー記事)(続き)
前回の記事からの続きです。
前回、ABAは自閉症療育に非常に大きな力を発揮するので、お子さんとうまくかかわるために特に優先的に学ぶ価値があるものである一方、専門用語が多いなど「理解するための最初のハードル」がちょっと高いという難しさがあるという点について触れました。
ここで紹介している「おかあさん☆おとうさんのための行動科学」の価値は、その「最初のハードル」を可能な限り、大胆に下げてくれるところにあります。
本書は薄くて字の大きな「子育てハウツー本」で、ABAの基本中の基本である「ほめてやらせる(強化)」「上手な叱りかた(罰)」「記録をとって評価する」といった考えかたを、毎日の子育てに即して分かりやすく解説してくれます。
実際、たいしたボリュームのある本ではありませんが、だからこそ、その気になって読めばたった1日(読書の速い人なら1~2時間)で、ABAの「全体像」をざっくりと知ることができるということが、高い価値につながっています。
ABAを初めて知るために役立つ、本当に易しい「最初の1冊」として、本書の価値はとても高いと思います。
本を読むのが苦手で、難しい本は必ず挫折してしまう、でも自閉症のわが子とうまくかかわり合う方法を知りたい、あるいは、療育にまじめに取り合ってくれない配偶者に少しは療育の本も読んでもらいたい、本書はそんなニーズにしっかり応えてくれるでしょう。
逆に、ある程度堅い本を読む自信がある(人文系の単行本や新書、理論的なビジネス書を読むのに苦労しない)方には、この本は「易しすぎる」「深さが足りない」と感じられるかもしれません。
そういった方は、本書をスキップして、この後ご紹介するような「ある程度学術的な入門書」から始めてもいいでしょう。
ただ、読書が好きな方にはうなづいていただけると思いますが、難しい本を読んでも理解できる場合であっても、「易しい本」を読むことが頭の整理やちょっとした発見につながるということは、意外とよくあることです。
ちなみに、本書の著者である石田淳氏は、日本では珍しい、ABA(石田氏自身は「行動科学」と呼んでいます)を専門に取り扱う独立系コンサルタントです。
私は何度かお会いしたことがあるのですが、いかにもフリーのコンサルタントらしい、大変バイタリティあふれる方でした。また、アカデミックな行動分析学とのつながりも継続的に持たれているようです。
最近の著書として、下記のものがあり、こちらも気軽に読めてABAのざっくりとした全体像をつかむことのできる好著となっています。
行動科学で人生を変える
著:石田淳
フォレスト2545新書(レビュー記事)
今度こそ! 続けるコツ
石田淳(監修)、岡戸妃里(イラスト)
PHP研究所
石田氏の著書は、学術的なストイックさや厳密さを求める方にはちょっと向きませんが、「気軽に読めてさまざまなABAの応用を教えてくれる」という魅力は他に代えがたく、今後も注目していきたいと思います。
(次回に続きます。)
※ブックレビュー一覧をまとめた記事はこちら。
今回もコメントいただき、ありがとうございます。
石田氏の著作の「わかりやすさ」を、大変高く評価しております。これからも期待しております。