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2006年07月07日 [ Fri ]

RDI「対人関係発達指導法」(ブックレビュー)(1)


RDI「対人関係発達指導法」―対人関係のパズルを解く発達支援プログラム
著:スティーブン・E. ガットステイン
クリエイツかもがわ

1 アイザックの場合
2 経験共有について
3 自閉症―経験共有を知らない人生
4 対人関係発達指導法 RDI(Relationship Development Intervention)
5 指導にあたっての原則
6 レベル1 人間関係の基礎をつくる
7 レベル2 大人の行為を見習いはじめる
8 レベル3 パートナー(仲間)として共に活動する
9 レベル4 この世界を共有する
10 レベル5 心を分かちあう
11 レベル6 本当の友だちになる
12 おわりに

先日、プレ・レビューしていた本書ですが、ようやく本レビューが書けそうです。
ボリュームがかなり大きくなってしまったので、3回に分けて書こうと思います。
プレ・レビューとあまり内容がかぶっていないので、そういう意味では記事4回分の大ボリュームのレビューになりました。それだけ、本書に込められた私の潜在的期待は大きい、とご理解ください。

でも、この本、やっぱり評価が難しいです。
書いてあるとおりに読むと、かなりトンデモ本だと言わざるを得ないのです。
でも、読者の側で内容を再構成して読めば、かなり意欲的で、しかも新しい可能性を示した療育モデルだ、とポジティブに評価することができます。特にアスペルガー症候群のお子さんにとっては、大きな効果が上がることも十分に期待できます。

この記事では、本書がある種の「トンデモ本」になってしまっている理由と、私の考える「本書の再構成のしかた」を中心にレビューしたいと思います。

本書の最大のトンデモ要素は、「目に見える行動から内面を解釈しすぎている」ことにあります。

心理学を勉強すると、(世に出ている「心理学モドキ本」が主張する内容とは正反対に)外から見えることから内面を語ることがいかに難しいかがよく分かります。
そして、例えば赤ちゃんが母親を見て笑ったからといって、「母親の存在に安心感を感じている」とか、そういった安易な解釈を断定的にすることは避けるようになります。
赤ちゃんが笑っているときは、あくまで「赤ちゃんが笑っている」という行動だけが事実としてあるのであり、そこに「安心している」という解釈を入れた瞬間に、非科学的な世界に足を踏み入れてしまうのです。
仮に「安心している」と言いたいなら、例えば脈拍を測定し「脈拍が下がった」という、事実として観測できる内容に置き換えて、「この事実から、安心していると推測される」と表現するのが科学的な態度だといえます。

翻って本書を見ると、上記で問題にしているような「外見からの安易な内面の決め付け」が随所に見られます。
(母親が遊びの途中で隠れることによって)母親は、パトリックにとって、愛着のある安全な基地だった。しかしパトリックは、母親がいつでも利用可能で、その存在を確実にするために自分が母親のほうを向く必要などないと決め込んでいた。いったん母親が見えなくなり、自分が見慣れない場所にいると気づくと、パトリックは突然、母親の居場所を確認しなければ、という気持ちを強く感じるのだった
(中略、母親が登場してパトリックを抱き上げたとき)この時点でパトリックは、自分の感情が高ぶっていることを感じていた。これこそ、母親がストレスを減少させる「癒し手」としての自分の価値をパトリックに教える完璧なタイミングだった。(中略)パトリックは、母親が歌うにつれて癒しの響きを感じ取り、目に見えてリラックスしたようだった。

(初版157〜158ページ)

この文章は、レベル1の実践プログラムのケーススタディとして挿入されているエピソードなのですが、これではほとんど小説ですね。外から見た様子だけでここまで内面を解釈してしまうのは、あまりに安易すぎます。

プレ・レビューでも書きましたが、本書の前半に書かれている、「著者の考える健常児の発達心理学」についても、まったく同じ問題が指摘できます。
確かに発達心理学の知見が引用されている部分もありますが(参考文献がリストアップされていないので正確には分かりませんが)、大部分は「なぜそう言えるのか」が読者には分からないまま断定的に書かれていますし、知見の引用も断片的で、例えばピーター・ホブソンバロン・コーエンという、通常は「対立軸」として捉えられている二者の理論が、特段の配慮もなくパッチワークされて組み込まれていたり、心理学者のアラン・フォーゲルの概念と精神分析学者のダニエル・スターンの概念が混ぜこぜに使われていたりします。

では、前半の発達理論の科学的正当性には疑問符がつき、後半の療育プログラムでも「安易な内面の解釈」が目立つ本書は、「使えない」のでしょうか?

私は、必ずしもそうは思いません。そうやって破棄してしまうにはあまりにも惜しい、新しい療育の発想と可能性が、RDIプログラムには間違いなくある、と感じています。
でも、そのためには、これまで見てきたようなRDIの非科学的な要素を一旦全部取り払って、それで何が残るのか?を考える必要がありそうです。

次回は、RDIが持っていると思われる「ダイヤの原石」を私なりに発見、再構成し、私の考える「科学的な」RDIの方向性について書きたいと思います。

(次回に続きます。)

※その他のブックレビューはこちら

posted by そらパパ at 22:43 はてなブックマーク | コメント(0) | トラックバック(0) | 実践プログラム
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