このおもちゃを療育にどう活用するかという「実践プログラム」の観点から、改めて紹介してみたいと思います。
いえるかな?あいうえお 音のでるたのしいおけいこえほん
和田 ことみ
ポプラ社
いわゆる音声モジュール(ボタンなどを押すと、歌や動物の鳴き声や楽器の音などが出る仕組みになっているもの)のついた絵本です。
最近ではさまざまな種類があり、本屋さんの幼児向け絵本のコーナーにずらっと並んでいるので、ご存知の方も多いと思います。
その中で、これは、あいうえおの五十音を発音してくれるモジュールのついた絵本です。類書がいくつかあるだけでなく、一般的なおもちゃの中にも同じ機能のものがあり、我が家でもいろいろ試しましたが、最終的にこのモジュール絵本が最もすぐれていて使いやすい、ということが分かりました。
そのポイントとしては、
1. 電源が自動でON・OFFするため、「電源を入れる・切る」ということを子どもに教える必要がない。いつでも押せばすぐに音が出るため、「操作-反応」という因果関係の理解が容易で、「押す」という行動が学習されやすい。
2. モードがない。多くのモジュールにモード切替スイッチがあり、それを不用意に触るとクイズモードや英語モードなどに切り替わってしまってわけが分からなくなるが、このモジュールではそういうことがなく、同じ場所を押すとつねに同じ反応が返ってくる。
3. 物理的な可動部分や、落とすと割れてしまう場所がほぼ無く、モジュール部分が保護される構造になっているため、荒っぽい使われ方をしても壊れにくい。
4. 「あいうえお」の音そのものと、あいうえおで始まる単語名、両方を発音してくれる。
5. キャラクターものでないため、発音される単語の中にキャラクター名など意味のないものが含まれていない。
6. おもちゃとして売られているものと比較して、値段が安い。
我が家では、「絵本」の部分は子どもが全然見ないので、絵本の部分を破棄してモジュールだけで遊ばせていましたが(そうしないと「絵本」部分がいつもぶらぶらと下がっていることになり使いにくい)、そんな使い方をしても強度が保たれるような構造になっています。
また、モジュールと同じ単語の絵が掲載された50音表も付属しているので、壁などに貼ってあわせて使うことも検討できます。
さらに、当ブログでは、「いえるかな?あいうえおサポーター」や「おくちがみえる ことばのDVD」などで、このモジュールのさらなる活用方法を提案しています。
私は、こういったモジュールおもちゃは、「操作おもちゃ」の1つとして導入されるべきものだと考えています。
自閉症児にとっての最重要発達課題の1つとして、「環境に対して適切に働きかける」というスキルを育てることがあります。なぜなら、このスキルが最終的に「ヒトとのコミュニケーション」につながっていく、と考えられるからです。(参考記事)
そのために、療育の初期の段階から、「操作すると反応が返ってくるおもちゃ」を適切に導入していくことが必要です。
私が最初に導入すべきだと考えているのは、鏡です。これは既に「鏡の療育」としてまとめました。
そして、「鏡の療育」と並行して、操作-反応系が極めてシンプルで、かつ「部分」に分離されにくい操作おもちゃを導入していくことが求められます。例えば次のようなおもちゃが考えられます。
ローリングロール/河田
アンパンマン 好奇心むくむく ひらいてとじて/バンダイ
あいうえおモジュールは、「操作おもちゃ」として「モノとの関わりかた」のスキルを伸ばしつつ、目指すべき「ヒトとの関わり」に関連することばへの関心や「気づき」を育てるという、「橋渡し」の役割を果たすことが期待できます。
あいうえおモジュールの欠点としては、押すべき場所がフラットで「ボタン」の形状をしていないため、「これは押して遊ぶおもちゃだ」ということが分かりにくいことがあげられるでしょう。つまり、「操作おもちゃ」としては、やや難度が高いものになっていると思います。
このため、操作おもちゃで遊ぶスキルが不十分なお子さんの場合、親が手助けしても、「押して遊ぶ」という行動が形成されにくい場合もあると思います。
そういった場合は焦らず、「鏡の療育」を続けながら、先のような、より「操作-反応系」のシンプルなおもちゃで遊ばせて、操作おもちゃで遊ぶスキルを伸ばすことを先行させるのがいいと思います。
モジュールおもちゃの中でも、ことばより歌のほうが子どもの関心を引きやすいということもあるでしょう。そういった場合はこちらを先に導入することをおすすめします。
どうよううたのえほん―お手本のうた付き!
笹沼 香
永岡書店
こちらのモジュールは、押すべき場所ごとに「枠」がついているので、「いえるかな?あいうえお」より「押す」という行動に導きやすい、というメリットもあります。
※その他のブックレビューはこちら。
半年ほど前から娘の療育に取り組んでおり、そらパパ様の記事にはいつも大変勉強になっております。
最近、娘がテレビで覚えたあいうえおの歌を気に入って、中抜けしつつも結構流ちょうに口ずさんでいたため、偶然同じようなおもちゃをクリスマスプレゼントとして買い与えたのですが、確かにクイズなどのマルチモード物は、混乱を招くようですね。参考になりました。
娘はこのおもちゃをとても気に入ってくれて、いろいろな遊び方を開発してきているようで大変満足しているのですが、ちょっと残念に思うのは、娘の好物の単語(娘が自発的によく口にする単語です)を、試しに打ち込んであげたとしても、出てくる音が平板で不自然な抑揚なため、いつも耳をふさいでしまいます。思いもよらない反応でしたが、声掛けには中々反応してくれない娘も、結構敏感に聞き分けているんだ、と気づかされる契機ともなりました。
ただ最近は慣れたのか、「みかん」を「み・か・ん」といった具合に、不自然な抑揚の単語をまねるようになって、爆笑しつつ、奥深い機能に恐れ入った次第です。
今は、数字バージョンが無いか探しているところです。0-9の数字だけで十以上に対応させる物はちょっと無理かもしれませんが、何か心当たりがあればお教えいただけると大変参考になります。数字に慣れたら、次は時計に興味をつなげていければ、と考えております。
この「いえるかな?あいうえお」は、我が家では娘がハマりすぎてしまって、他の遊びを全然しなくなるということがあったので、それを契機に片付けてしまいました。
でもまあ、それくらい子どもが夢中になるということで、使い方を工夫するととても強力な療育グッズになると思います。
1-9、あるいはそこから先の数字を流暢にしゃべるおもちゃというのは、残念ながら私は知らないです。
(手前味噌ですが、操作がなくて音だけであれば、自作の「おくちがみえる ことばのDVD」には、数字をしゃべるチャプターが含まれていますが・・・)
上に紹介されているおもちゃ、うちの兄妹が小さいころすごく遊んでいたおもちゃでした。特に上のお兄ちゃんの方は心臓も悪かったため、身体の発達も遅くお座りすらなかなか出来なかったため、うつ伏せでも遊べるおもちゃは貴重でした。
ちなみに言葉が出てきたのが年長になってからの長男はこのいえるかな?あいうえおで年中のころには文字を覚えました。そして、真似をしようと泣き声以外の声を出しはじめました。本当に役に立ってくれたおもちゃです。
このブログ記事はかなり昔のもので、当時の娘が実際に「おもちゃをおもちゃらしく」遊んでくれた、数少ないおもちゃを紹介した記事になります。
今でこそ、娘も、いろいろなものを「目的にあった形で」使うことができるようになってきましたが、当時はほとんどのものを、「なめる、かじる、くるくる回す、投げ捨てる」でしか遊べませんでした。
そういった状況から少しずつ抜け出していった「過渡期」に、実際に遊んでくれたおもちゃが、例えばこの記事で紹介しているおもちゃだったりするんですね。懐かしいです。
ミケさんのお子さんもそうだったと思いますが、やっぱり子どもというのは「おもちゃ」で遊ぶことを通じて、いろいろなことを学んでいくんだと思います。ですから、特に特別なニーズのあるお子さんはそうだと思いますけど、いいおもちゃを選んであげることは大切なんだろうなあ、と思います。