2006年06月20日

概念語を教える

娘は、まだ有意味語が出ているとは言えません。

最近になってようやく、おうむ返しをしたり、おもちゃを見て名前をいう(例えば、バナナを見て「ばなな」と言うなど)ことが出てきましたが、まだまだ「独り言」であって、コミュニケーションにつながる気配はありません。

コミュニケーションにならない言葉というのは、「ことばを話す」ことに本質的に強化子が与えられていない状態でもありますので、いま出ていることばも、いつ消えてもおかしくないと言えます。
実際、これまでも何度もこういった「独り言」が出てはしばらくして消えるということが起こっていますので、何とか「ことばを話す」ということが定着するように、

・別途コミュニケーションを教える(PECSなど)
・「ことばを話す」ことが(コミュニケーションには使えなくても)遊びとして、それ自体楽しいと感じるようにする


ということを意識して娘と接しています。

そんな中で、娘が大好きで私も重視している遊びの1つとして「名前言わせ」があります。

これは、あいうえお表やままごと用のおもちゃ、図鑑タイプの絵本などを使って、特定のものを子どもが指差して、親がその名前を答えるという遊びです。
自閉症児の子育てエッセイなどを見ると、この遊びを好む自閉症のお子さんは少なくないようですが、娘もこの遊びを3歳になったくらいからよくするようになりました。

当初は、一方的にこちらが言うだけだったのですが、やがて私たちの口を見て口パクをするようになり(これは今でも続いています)、最近になって、親が名前を答える前後に少し声が出るようになったり、親と遊びおわって一人になったときに(に向かったりして)声を出して名前を言ったりするようになりました。(そうなるのに1年ほどかかってしまいましたが(^^;))

そんな中で、娘がかなり早い時期から名前を覚えた(らしい)のが「風船」でした。
風船は、ふくらませておくとよく遊ぶので、家のリビングにはいつも3つの色違いの風船が転がっています。割れたりしぼんだりしたら新しくふくらませて、いつも3つあるようにしています。(ちなみに4つにすると、娘が同時に持てなくてパニックを起こします(笑))


↑我が家の定番おもちゃである「風船」。

娘は、この風船を放り投げて遊んだりするだけでなく、私たちのところに持ってきて目の前に掲げます。これが「名前を言え」という合図です。(それでも言わないと、私たちの口をボタンのように押して「クレーン」します。)
そこで私たちが、3つの風船それぞれに対して、「ふうせん」と言ってあげると満足して他のところに行きます。

私は、「ふうせん」を覚えたというのはちょっと面白いな、と思って、ある時から違うことを教え始めました。
いつものように風船を持ってきて名前を言わせようとした娘に対して、私は、いつもなら「ふうせん」というところを「しろい、ふうせん」と言いました。娘がとまどっているところで、即座に別の風船を持たせて、「あかい、ふうせん」、さらに、別の風船を持たせて「みどりの、ふうせん」などと言ってみました。

つまり、「ふうせん」の名前言わせゲームをきっかけにして、色の概念(名前)を教えられるんじゃないか、と思って挑戦してみたわけです。
なぜ風船なのかというと、風船には「風船である」という以外の属性情報は、ほとんど色しかないからです。
「風船」という名前を覚えた子どもであれば、「○○の風船」という言い方も分かる可能性があります。そして、風船であれば、モノとしての属性の構成がシンプルであるだけに、その○○が「色」を示す、ということが容易に分かるんじゃないか、と思ったわけです。

幸い、娘はこの新しい「名前言わせゲーム」がとても気に入りました。
そして、色の違う風船をとっかえひっかえ掲げては、私たちに何度も(色つきの)名前を言わせるのが、一番好きな「名前言わせゲーム」になりました。
ちょうど今ある3つの風船は、上記の写真のように「白」「緑」「オレンジ」の3つですが、こちらが色を言う前に、それぞれ「しよい」「みもみ」「おえんい」と言うこともあります。特に「みどり」という発音が気に入ったようで、よく緑の風船を持ちながら「みもみ、みもみ」と言っています(^^)。

概念としての「色」を理解しているとまでは言えませんが、それぞれ色の違う風船に対して、正しく「違う名前」をつけているところからすれば、「色によってモノを弁別する」という色の概念理解の最も根幹にあたる部分への学習能力は、少なくとも持っていることが分かったと言えます。

次は、この「色」の概念を風船以外のモノに汎化させることを考えていきたいと思います。
posted by そらパパ at 22:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 娘の話 | 更新情報をチェックする
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