さて、以前ご紹介した、全域マクロ有効に改造したシグマ製レンズ(記事1, 記事2)のうち、望遠のほう(SIGMA 70-300mm F4-5.6 DL MACRO)にはまってしまい、私のデジ一にはこのレンズがつきっ放しになっています。

↑SIGMA 70-300mm F4-5.6 DL MACRO (APO化済み、全域マクロ改造済み)

↑遠くから大きく狙えるので花や昆虫の撮影にぴったりです。
改造によって全焦点距離で0.95mまで寄れるようになり、花のマクロ撮影などに大きな力を発揮してくれるのですが、難点として、「望遠端300mmでレンズを上に向けると、レンズ内部の金属片が移動してズームリングが300mmから動かなくなってしまうことがある」というのがあります。
こうなった場合、レンズを下に向けてトントンと叩いたり軽く振ったりすると元に戻るのですが、あまりレンズやカメラに良くなさそうですし、撮影のリズムも狂うので、レンズを分解して部品を除去する、より本格的な改造方法をご紹介したいと思います。
ちなみに私はこちらの改造は、改めて落札したもう1本のレンズ(もともと内部破損があり、分解が必要だったレンズ)で行ないました。
レンズの分解をすると、レンズの光軸がずれたり、フレキケーブルを破断してレンズを壊すなどのリスクがありますから、壊れても惜しくないレンズで挑戦しましょう。
また、下記ではミノルタ(α)マウントのレンズについて解説しており、他社マウントでは一部手順が異なります。
1. 作業に必要な工具
(1) 先端サイズ「00」および「0」のプラスドライバー レンズに使われているネジが小さいため、先端サイズ00の極細ドライバーが最適です。力が入りにくいのが欠点ですが、いわゆる「精密ドライバー」でも代用できます。先端は帯磁していたほうが使いやすいです。
(2) ゴム製の指サックまたはシリコン製のボトルオープナーシート(後玉外し用)
(3) 外したネジを分類しておくケース(取り外したネジの仕分け・一時保管用)
(4) セロファンテープ(セロファンテープで止められた部品があります)
(5) 小さめのマイナスドライバー(ズームリングのゴムベルト取り外し用)
(6) ティッシュペーパーやタオルなど(作業中の油ふき取り用)
(7) クリーニング素材(アルコールやマイクロファイバー製クロスなど)
2.分解の実際
分解は、マウント側(カメラに取り付ける側、後玉側)から行ないます。

(1) 最初に外すネジは、3種類9本です。全部サイズが違いますから、取り外したネジは別々に保管しましょう。
・接点を固定するネジ(青○、2本)
・マウント内枠を固定するネジ(オレンジ○、3本)
・マウント外枠を固定するネジ(赤○、4本)
これらのネジを外すとマウント内枠・外枠が外れます。接点はフレキケーブルでレンズにつながっていますので外れません。誤ってケーブルを切断しないよう注意してください。

(2) マウントを外すと、フォーカスリングを回すシャフト(赤○)と金属製のスペーサーが出てきますから、落としたり歪ませたりしないよう注意して取り外します。スペーサーは、向きや上下が分からなくならないよう、取り外した状態のまま保管します。

(3) さらにもう1段階、鏡筒部分を外します。ネジは赤○の3箇所です。

(4) ズームリングを外します。ズームリングの固定部品はゴムベルトの内側にあるので、ゴムベルト(赤→)をマイナスドライバーなどでこじって外します(ベルトは特段固定されていません)。
また、デリケートな後玉を保護するため、この辺りで後玉(赤○)を外します。指サックなどを使って力を入れて反時計回りにネジれば外れます。外した後玉は傷などがつかないよう慎重に保管しましょう。

(5) ズームリングのゴムバンドを外すと、セロテープで固定された金属板(赤→)が出てきます。テープをはがして金属板を取り外します。

(6) 金属板の下には、変わった形の金属片(赤→)がネジ止めされています。ネジ(赤○)を外し、金属片を前玉側にスライドさせて外します(このとき絶対に金属片をレンズ内部に落とさないように)。この金属片が鏡筒側のパーツと「噛み合って」いる状態をよく覚えておいてください。元に戻すときは、この金属片を同じ「噛み合わせ」で戻す必要があります。

(7) 金属片を外すと、ズームリングがマウント側にがばっと外れます(赤→)。外したら、レンズを寝かせて、マクロスイッチが上に来るようにします。マクロスイッチを固定する2本のネジ(赤○)を外します。

(8) マクロスイッチを取り外します。今回の改造のやり方の場合、取り外したスイッチの側を加工する必要はありません。外した後、鏡筒側に残っている金属片(赤→)が、問題の「マクロモードを300mm固定にする部品」です。

(9) 固定部品を固定している1本のネジ(赤→)を外し、固定部品を取り外して(オレンジ→)ネジだけ元に戻します。ネジ溝が途中までしか切ってありませんから、ネジ頭がかなり浮いた状態でねじ込み終了となりますが、それで正常です。
(10) あとは、これまでの手順を全部逆にさかのぼって、レンズを組み立てれば完成です。レンズの光軸がずれないよう、各段階のネジには均等に力をかけて、マウントがレンズに対し水平になることを意識して組み立てていきます。また、後玉に傷をつけないよう特に注意してください。
こちらの改造により、レンズをどちらの方向に向けても、内部で余計な部品が動かずズームリングが300mmで動かなくなったりといった問題はなくなります。
お手元に同シリーズのジャンクレンズなどがあったら、試してみてはいかがでしょうか。ただし、あくまでも自己責任でお願いします。