デジカメの写真は、ただ撮るだけではなく、撮ったあとデジタル加工で仕上げることでさらにクオリティを上げることができます。
そういった作業をするためのソフトとして、一般的には「フォトレタッチソフト」と呼ばれるソフトがよく使われます。代表的なソフトとして、Photoshopシリーズがありますね。
ただ、フォトレタッチソフトの場合、かなり大胆に写真を加工・作り変えることが主たる目的になっているので、逆に「写真」としての微妙な色合いやコントラストを細かく追い込むような用途にはちょっと使いにくかったりします。
そういうときに役立つのが「Raw現像ソフト」と呼ばれるタイプのソフトです。
このタイプのソフトは、「現像」という名前がついているとおり、デジカメの写真の細かい明るさや色合い、コントラストなどを微調整することに特化しており、繰り返し作業により画像を劣化させることなく(ここが重要)これらのパラメータを何度でも微調整・再調整することが可能となっています。
「Raw現像ソフト」は本来、デジタル一眼の「Rawファイル」を加工するためのものですが、最近のRaw現像ソフトは一般的なJpegファイルもRawファイル同様に加工・調整できるものがほとんどですので、コンパクトデジカメや携帯で撮った写真の微調整にもなんら問題なく使えます。
ちなみに私が愛用しているRaw現像ソフトは「SilkyPix」というソフトです。
SILKYPIX Developer Studio 4.0 Windows版
このソフトは、最初から設定されているプリセットの色合い調整やオート調整機能が強力で、非常に使いやすいと感じています。
それではさっそく、SilkyPixを使ってデジカメで撮ったJPEG画像を修正してみましょう。(ちなみに私が使っているのは現行バージョンよりも古いバージョン3.0ですが、操作は最新バージョンと同じです。)
こちらが「撮って出し」、つまり何も加工していない状態の福寿草の画像です(クリックで拡大)。これを加工していきます。
まず、明るさ(露出)調整です。花の写真としてはちょっと暗めなので明るくします。
SilkyPixのオート露出でまずまず適切な明るさになったので、これでいきます。
続いて、ホワイトバランスで色温度を調整します。
色温度を下げると、こんな感じで青っぽく。
色温度を上げると、こんな感じで赤っぽくなります。
オートでは色温度を若干下げる設定になりましたが、私はこの写真はもう少し赤みがあったほうが暖かい印象でいいと思ったので、マニュアル操作で若干色温度を上げることにしました。
こちらが私が調整したホワイトバランスです。
次に、「調子」ですが、これは要はコントラストです。超軟調(コントラストを低く)から超硬調(コントラストを高く)まで、7段階のプリセットがあります。
もっとも軟調(超軟調)に設定すると、こんな感じ。
もっとも硬調(超硬調)に設定すると、こんな感じになります。
花の写真では、軟調寄りにして淡い印象を引き出すのが定石なので、ここでも「やや軟調」を採用することにします。
調子は「やや軟調」を選びました。
続いて、SilkyPixの最大の魅力の1つである「カラー」です。
この設定では、彩度とか色相を個別に調整するのではなく、複雑なカラーバランスがあらかじめプリセットされた「カラープリセット」があり、一発選択でさまざまな色調を選ぶことができます。(もちろん、そこからさらにマニュアルで追い込むこともできます。後で説明します。)
ここに最もSilkyPixらしさが出ていると思っていますので、特徴的なカラープリセットをひととおりご紹介したいと思います。
上が「記憶色1」、下が「記憶色2」のカラープリセットです。
記憶色というのは、人の脳が記憶しているとされる色あいのことで、本当の色よりも濃くて鮮やかな色合いになります。
ですからこのプリセットを選ぶと、イメージどおりの鮮やかで活き活きとした写真になることが非常に多いです。
「記憶色1」は非常に派手な色合いになり、「記憶色2」はそれに比べるとやや控えめな色合いになります。
こちらは「美肌色1」のカラープリセットです。
これは名前でわかるとおり、ポートレートなどで人物の肌の色を美しく見せるためのカラープリセットです。淡く透明感のある色合いになります。(花などにはあまり向きません)
上から順に「フィルム調V1」(左)、「フィルム調V2」(右)、「フィルム調P」(左)、「フィルム調A」(右)、「フィルム調K」のカラープリセットです。
これらは名前から察することができるように、かつてのフィルム的な仕上がりを、フィルムのブランド別に設定したプリセットです。
私はフィルムには詳しくないのですが、Vはベルビア、Pはプロヴィア、Aはアスティア、Kはコダクロームでしょうか。「フィルム調V」は記憶色系の仕上がりですね。
今回は、「記憶色2」のカラープリセットを使い、撮ったときのイメージに近い、鮮やかな色合いをつけます。
「記憶色2」のカラープリセットを採用します。
続いて、ノイズリダクションとシャープネスの設定です。
デジカメ写真は、ディスプレイで見たり印刷する際には、ある程度シャープネスを上げる(輪郭強調する)ほうが、見栄えが良くなりますので、ここでもシャープネス「ふつう」をかけます。
「ふつう」のシャープネスをかけました。(ただ、この縮尺ではほとんど分かりません)
最後に、「ファインカラーコントローラー」という機能を使って、さらに細かい色合いの微調整を行ないます。
ファインカラーコントローラーで、緑とオレンジ、それぞれをやや黄色に近づけることで、福寿草の花ができるだけ「ピュアな黄色」になるように微調整しました。
これらの調整を施して、完成した写真がこちらになります。(クリックで拡大)
最初の「撮って出し」に比べると、「暗さ」がなくなり、より明るく淡い色合いの中にも、花の黄色はより黄色く、葉の緑はより緑色が強くなり、「私のイメージのなかにある福寿草」に近くなりました。
ちょっと分かりにくい例になってしまったかもしれませんので、もう一例出しておきたいと思います。
桜の花に止まるヒヨドリですが、日差しのコントラストが強く、影もはっきり出てしまっていて、あまり「春」らしくない感じです。
これをSilkypixで加工し、少しトリミングも行なって仕上げた写真がこちらになります。
いかがでしょうか。これは明らかに、こちらのほうが「春を呼ぶヒヨドリ」というイメージに近くなっているのではないでしょうか。
同時に、全体的には軟調で淡い色合いになっているにも関わらず、桜の花のピンク色だけはむしろ色が濃くなっている(記憶色に近くなっている)点にも注目いただければ幸いです。
そんなわけで、デジカメ写真を楽しむ際に、SilkypixのようなRaw現像ソフトは、1つ持っているととても奥の深い画像調整ができますので、おすすめです。