2006年06月24日

「閉じていく心」と「開いていく心」

ブログを書くようになってから、読書の量が一気に増えました。

いわゆる「自閉症の本」に限ってみても、それまでに読んだ本はせいぜいカラーボックスの1スペース分に収まる程度だったのが、いまや本棚のあらゆる場所にひしめき合う状態になっています。(参考記事



そんな風に読書量を増やしていく中で、とても面白い「内的経験」をしました。
「内的経験」ですので、ある意味とても個人的なことでもあるのですが、療育を(自分でやるにしても、プロにお願いするにせよ)進めていく親御さんにとっても重要な「気づき」なのではないかとも思ったので、とりとめもない話ですが書いてみようと思います。

私も、娘が自閉症らしいと分かってから自閉症の本をいろいろと読み始めたわけですが、最初はかなりとまどいながら読書をしていた面があります。

というのも、もともと私は大学時代に「臨床」ではない心理学、具体的には基礎心理学とか認知心理学を主として勉強してきたこともあって、臨床心理学(実際に教育とか福祉、カウンセリング等の場面で活用される心理学)に対しては「あまり科学的でないし、本当に学問と言えるのだろうか?」といった、懐疑的な考えを持っていたからです。

そんな中で「娘の療育」という、臨床そのものの問題を突きつけられてしまったわけですから、当初は「自閉症にはどんな療育法があって、その中でどれが一番まともで、科学的だろう?」といった視点から入っていたように記憶しています。

そうやっているうちに、どうやら「科学的」という意味ではABA(応用行動分析・いわゆる行動療法)が一番しっかりしているらしい、ということが分かってきて、自閉症に関連して読む本も徐々にABAに関するものに絞られていきました。
もちろんTEACCHやその他の療育法も読むことは読んでいたのですが、例えばTEACCHについては、「理念としては分かるけど具体的でないし、結局やっていることはABAと同じだからABAを勉強していれば事足りそうだ」といった印象を持っていました。
そして、当時の実感としては「もう自閉症の療育に関してはほぼ読み尽くした」と感じていました。

去年の秋、このブログを始めたころの状態は、ちょうどこんな感じだったわけです。

ブログを始めて以降、「ちゃんとした文章」を書くため、あるいは知識を広げるためにまた読書量が増えていきました。
でも、当初はあくまでもABAに関連する本がメインで、それ以外の本は意識的に避けていました。何となく、ABA以外の本には「正しくないこと」ばかりが書いてある、というイメージがあったからだと思います。

ところが、「心を生み出す脳のシステム」を読んだあたりから少し状況が変わってきました。
これらの脳科学から「心脳問題」へ、心脳問題から心の哲学へ、心の哲学からより幅広い分析哲学へと興味の関心が広がり、少し遠回りをしながらも、「心理学」が扱っている「心」とか「意識」の問題を、より高い視野から考えるチャンスが生まれたのです。そして再び「自閉症療育」の世界に戻ってきたとき、そこはまったく違って見えました。

つまり、ABAにせよ認知心理学にせよ、「科学的」であることは意義と同時に限界をあわせもつものであるということ、自閉症児の療育に関するような「心」の問題は、特に「科学」が苦手とする領域であること、したがって、「科学的であること」に強くこだわる療育法は、自閉症児にとって万能ないしベストである保証はなく、むしろ不得意分野をたくさん持つ可能性のほうが高いことなどを「実感として」納得したのです。

これと同時に、例えばTEACCHが目指しているものは、単なる「理念をくっつけたABA」ではなくて「ABAも活用するまったく別の療育」であることも理解できました。
そして、これまで避けていたさまざまな療育法や心理学理論にも関心を持つようになり、ABAにばかり目が向いていた頃には思いもよらなかった療育アイデアにも気づくことができるようになりました。

ここへ来て、ABAという1つの領域に「閉じていった」私の心は再び、さまざまな領域に向けて「開かれた」のです。

今の私の中には、ABAも、TEACCHも、PECSも、感覚統合も、アニマルセラピーも、「鏡の療育」も、その他さまざまな療育法が、それぞれの「担当領域」を持ちながら共存しています。「自閉症児の療育」という大きな世界地図の中に、それぞれの療育法が「大陸」として存在している、というイメージです。
これは、どの療育法も、それだけであらゆる自閉症児の療育をすべてカバーすることはできないということと、それぞれの療育法には明確な位置付けと得意分野がある、という認識を表しています。

以前の自分を、この「世界地図」のイメージで説明するならば、「ABA」という大陸の上に立って、そこが世界のすべてだ、と感じていた状態だと言えるでしょうか。
そのときは、どの場所よりもここが「正しい」と感じていたのですが、その大陸を見下ろす立場からみると「狭かった」なあ、と感じます。

ひるがえって、いろいろな療育に関する意見や一部の本を読んでいて感じるのは、先に述べたような「閉じていく心」、つまり、特定の療育法だけにのめり込み、それ以外の方法をすべて意識の外に追い出してしまうような、そういう考え方に立っている人がとても多いんじゃないかな、ということです。
特定の療育法を深めていくのは、中途半端に「いいとこ取り」をしようとするよりはいいのかもしれませんが、実は、その療育法は自分の子どもが抱える問題にとってベストなものではないかもしれないのです。

大切なことは、「一つの場所」に留まることよりはむしろ、いろいろな療育法を冷静に吟味しながら、自分の子どもにとってベストの療育法が見つけようとする努力なんじゃないか、と思います。
このブログが、そんな「閉じてしまった」心をもう一度「開いていく」ための一助になればいいな、とも感じています。
posted by そらパパ at 08:57| Comment(2) | TrackBack(0) | 雑記 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。小2の自閉症の女の子の母です。そらまめちゃんの年齢が懐かしい(^.^)
Posted by みのぱん at 2006年06月24日 09:49
みのぱんさん、はじめまして。

ブログもお邪魔させていただきました。
今がんばることが、何年か後の「(より)楽しい時間」を作るために決定的に重要なんだ、と思って毎日を過ごしています。

これからもよろしくお願いします。
Posted by そらパパ at 2006年06月25日 00:52
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