2006年06月12日

「内面」はあるのか?-コミュニケーション療育の方法論(4)

自閉症児へのコミュニケーション療育の最初のステップは、どうやら「直接的な相互作用」の経験を重ねることによって、モノとはちがう「相互作用」の必要性への「気づき」に導くことにあるようです。

この辺りになると、これまでご紹介している「鏡の療育」は、あまり大きな力にはなってくれません。「鏡」は因果関係や自己への気づきといった、相互作用の大前提になる「気づき」の発達には効果がありそうですが、相互作用そのものを伸ばすことはできません。

つまり、「鏡の療育」は、そもそもの「世界への気づき」から「自分への気づき」「モノへの有意味な関わりかた」といった領域を担当する療育です。
そして、鏡の療育で培った「モノの世界への関わりかた」を足場にして、次のステップである「コミュニケーション療育」に進んでいく、という関係にあるのです。
(もちろん、これら2つの療育スケジュールが重なることには特に問題はないと思います。これら2つも、実際には相互に関連して発達していくものでしょうから。)

それでは、どんな療育方法が考えられるでしょうか?
ポイントは、『相互作用』という最も重要な要素はしっかりと残しながら、ヒトとヒトとのコミュニケーションにありがちな複雑さを徹底的に排除する、というところにあります。

まず考えられるのは、人との関係をより単純化、構造化することで、相互作用を子どもにとって「見えやすくする」ことでしょう。
この方法論の1つのアイデアとしては、以前にご紹介した「ママは味方」メソッドなどが活用できるのではないか、と思います。
また、感覚統合訓練も、実はこの「シンプルな相互作用への気づき」を、体を使って楽しく遊ぶことから育てるという要素を合わせ持っている可能性があると思います。
要は、親と子どもとの間の非言語的なやり取り、働きかけをできるだけ分かりやすく、一様かつシンプルなものにしていく工夫です。

そして実は、もう1つ、この方向性でひそかに注目しているものがあります。
それは、アニマルセラピーです。

「とうとうオカルトにはまったか」と思わないでくださいね。(笑)
先日の「環境に拡がる心」のブックレビューで、動物と戯れるムツゴロウさんの話題を書きながら、ふと気づいたのです。

「あ、ムツゴロウさんのやってることがまさに、もっとも分かりやすい直接の相互作用だし、これがアニマルセラピーの目的であり効果なんじゃないか?」

さっそく、目を通してみることにしました。(最初の2冊は古本屋で安く見つかったので、多くの本にあたることができました)


アニマル・セラピーとは何か
著:横山 章光
NHKブックス

検証アニマルセラピー―ペットで心とからだが癒せるか
著:林 良博
講談社ブルーバックス

イルカ・セラピー入門―自閉症児のためのイルカ介在療法
著:辻井 正次
ブレーン出版

やはり、思ったとおりでした。
心理的側面におけるアニマルセラピーの効用とは、(私の理解では)「ことば」とか「内面」といった、人とのコミュニケーションの複雑さに「ついていけない」人にとっての、より易しくて直接的な「相互作用としての」コミュニケーションを提供するもののようなのです。

今後、この方面もじっくり研究して、「オカルトじゃない自閉症児へのアニマルセラピー」についても考えられるといいなあ、と思っています。

ちなみに、自閉症児のアニマルセラピーというとすぐ出てくる「イルカセラピー」ですが、少なくとも今回考えているような意味では効果が薄いと断定してもよさそうです。
上記の左2冊の本も否定的ですし、一番右の本も、実際に読んでみると「イルカセラピーはコストがかかる割には犬や馬を使った場合以上の効果があるかどうか分からない」といったニュアンスでかかれています。

上記の本でもすすめられ、長い歴史があるのは馬や犬を使ったセラピーであり、端的には「ペットを飼う」というのも立派なセラピーだということです。

(次回に続きます。)

補足:今回読んだアニマルセラピーの本は、どれも予想していたよりはるかに冷静かつ科学的な内容になっていて驚きました。動物を擬人化することもなく、無条件に礼賛することもなく、非科学的な精神論でセラピーを肯定するといったこともないという是々非々のスタンスには、非常に好感が持てました。

posted by そらパパ at 21:08| Comment(4) | TrackBack(0) | そらまめ式 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
アニマルセラピーですか。
すごく興味深いですね。
実は先日、公園で遊んでいたところ
小型犬が散歩に来たんですが
息子がすごく楽しそうに犬とあそんだのです。
動物園は無関心なのに。
続きが楽しみです。
Posted by みけ at 2006年06月13日 06:02
みけさん、こんにちは。

動物は、動物園で見るだけじゃなくて、実際に関わらせてみないと、子どもが本当に無関心なのか、どう対応していいか分からないだけなのか分からないので、いろいろ試してみる価値はあると思いますね。(^^)

今日(6/13)の記事で、娘へのアニマルセラピーの実践の試みについて書きましたので、よろしければごらんになってください。

なお、「アニマルセラピー」というと大げさですが、実際には「動物介在療法」といって、動物を療育の「手助け」として活用する療育法のことをいいます。
Posted by そらパパ at 2006年06月13日 21:23
初めてコメントさせていただきます。
今、そらまめさんのブログを隅々まで読ませてもらってます。

うちにも2歳10ヶ月の自閉症の男の子がいます。
以前から、チワワを飼っています。小さい頃から一緒にいるのですが、ここ半年ぐらいの間に、
いい子いい子してといえば、なでたり、前より犬に対してやさしく接しているように思えます。
とにかく、触るのを嫌がっていただけに、進歩だと思っています。
犬の散歩でも、ヒモを持とうとしたりしますし。
いい傾向にあります。
アニマル・セラピー、意外な感じですが、有効だと思えばうれしい限りです。
Posted by marine at 2006年06月24日 23:46
marineさん、はじめまして。

犬を飼ってらっしゃるのは、アニマルセラピー実践ということからするとうらやましいですね。

我が家は、今の状態で手一杯な気がして、なかなかペットを飼おうという決断までいきません。(娘には兄弟もいないので、いたほうがいいなあ、とも思うのですが)

動物は、モノとは決定的に違うという意味で、子どもにかかわらせる価値のある存在だと思います。
Posted by そらパパ at 2006年06月25日 00:56
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