
その中で、このDVDに対するお子さんの反応が、大きく分けると3種類あることが分かってきました。
その反応とは、
・繰り返し見せることによって関心度が上がり、そのまま維持されるタイプ。
・繰り返し見せることによって、関心度が下がってしまうタイプ。
・怖がる反応が強く、見せることが難しいタイプ。
の3つです。
一番上のパターンになれば望ましいわけですが、それ以外の2つのパターンについて、それぞれどのようなお子さんに見られるかも大体分かりましたので、それについて書いてみたいと思います。
オリジナルDVDに関心があり、申し込むかどうか迷っている親御さんにとって、大いに参考になるのではないかと思います。
まず、3つめの怖がってしまうタイプですが、これはほぼすべてのケースが、視線恐怖に関連があるように思われます。
本DVDでは、以下のサンプル動画でも分かるとおり、登場するおねえさんがDVDの映像をみる子どものほうを、大写しでずっと見つめ続ける構図になります。(カメラの少し上にある歌詞カードを見て歌ってもらっているので、厳密にいえば視線は微妙に真正面からはズレていますが)

ですので、親と目線を合わせない、合わせようとすると必死に逃げたり泣いたりする、というお子さんの場合は、本DVDを見せた場合に視線が合わないところに逃げてしまう可能性があります。
目にモザイクやぼかしを入れるとか、顔の下半分だけを拡大した映像を作るなど、この問題に対応したDVDを作れないかということも現在検討中です。
ただ、そういう映像は非常に不自然な気もしますし、「目や顔を合わせない」という状態ですと、大人の口もとの動きに「興味を持つ」という段階にまだ入っていない可能性も高いと考えられます。
そういったお子さんに、口もとを見せて音声模倣のきっかけを作る、という本DVDのアプローチが有効かどうかについても考えなければならないと思っています。
また、本DVDをモニター制度や購入で入手された方のうち、このような「視線恐怖」によりうまく活用できなかったお子さんの場合、視線を怖がらなくなった後であればDVDを見てくれるようになる可能性がありますので、その時点で改めてトライしていただければありがたく思います。
(そして、もしうまくいったら、ぜひご報告ください!)
次に、2つめの「繰り返し見せると関心度が下がるタイプ」。
これも理由は比較的はっきりしていて、比較的高機能な自閉症のお子さんで、既にもっと複雑な映像を好んで見ている場合に、このような結果になる場合が多いようです。
上記の映像をご覧になってわかるとおり、本DVDの構成は非常にシンプルで、青をベースにしたまったく同じ背景の前で、おねえさんがひたすら童謡を歌う映像が流れつづけるという構成になっています。
シーンチェンジもカメラチェンジも、一切ありません。簡単に言ってしまえば「口しか動かない」のです。
このようなシンプルな映像は、一般的には変化に対して抵抗を感じやすい自閉症児には受け入れやすい傾向があると思います。
ただ、もっと複雑な映像にまで慣れてしまっているお子さんにとっては、「飽きてしまう」というケースもあると思います。
恐らく、市販されているにぎやかな歌のビデオ・DVDなどを、その映像の変化も含めて(目で見て)楽しんでいるようなお子さんの場合、そういった映像に比べて単調な「おうたのDVD」の映像には強い関心を示さない可能性があります。
そういったお子さんの場合、すでに「おうたのDVD」が想定している対象発達段階を超えていて、市販のビデオ・DVD映像のほうがふさわしくなっている、ということなのかもしれません。
・・・以上の考察を踏まえ、本「おうたのDVD」が効果的だと思われる、想定対象児のイメージを整理しておきたいと思います。
1.大人と目が合うようになり、見つめられても怖がらないお子さん。
2.ことばや周囲の大人への関心が出てきたそぶりの見られるお子さん。
3.童謡やアニメソングなどを聞くことが好きなお子さん。
4.まだアニメや複雑な動きのある映像を集中して見るところまではいかないお子さん。
このような条件を満たすお子さんの場合、特に、この「おうたのDVD」が効果的な療育効果をあげることができると思われます。
ただ、最後の4.の条件は、実際に試してみないとなかなか分からないところがあるようで、既にいろいろなビデオを楽しんでいるような高機能な自閉症のお子さんでも、意外にこのDVDのシンプルな映像を楽しむケースもあるようです。
ですので、特に重要な条件は、最初の1.~3.ということになると思います。
ちなみにうちの娘の場合ですが、上記にすべて当てはまるということもあり、見せ始めてから半年以上たった現在でも、毎日DVDを流すたびに上の写真のように楽しんで見ています。
また、このDVDに収録されている歌のまねをしていることも多いので、ばくぜんと見ているだけでなく、ちゃんと「聞こえて」いるということも分かります。
もともと娘のために作ったDVDではあるのですが、これほど楽しんでくれるというのは正直期待以上だったので、作ったかいがあった、と嬉しく思っています。
DVDを試してみて、お子さんが怖がってしまった場合、一度試してみてください。