前回まで、「自閉症を知る」というカテゴリに分類した「殿堂入り本」をご紹介していましたが、このカテゴリの「殿堂入り本」はこれで全部です(つまり、2冊しかありません)。
ただ、これ以外にも、殿堂入りに準じるくらいの優れた本、おすすめできる本がいくつかありますので、今回はそれらを順にご紹介していきたいと思います。
<おすすめできるその他の本>
発達障害の子どもたち(レビュー記事)
「発達障害の子どもたち」は、児童精神医療の現場から発達障害全体をとらえた痛快かつ意欲的な本。
さまざまな問題提起や新しい視点がふんだんに盛り込まれており、単なる通り一遍の入門書にとどまらない奥深さがあり、自閉症や発達障害にかかわる方には必読の書といっても過言ではないのではないでしょうか。Amazonのベストセラーランキング
ただ、若干読み方が難しい本でもあります。「殿堂入り」にしていないのは、それが理由です。
杉山氏は虐待やネグレクトによって「後天的に」発達障害が生じうる(第4の発達障害)という説を主張されており、本書にもその説のさわりの部分が登場します。
この説自体に異を唱えるわけではありませんが、さまざまな人がこの説を自分たちの都合のいいように解釈(誤解?)し、「自閉症子育て原因説」や「自閉症情緒障害説」を蒸し返したりするのに「利用」していると言わざるを得ない状況もあり、誤解なく読み解くためには、ある程度の発達障害に関する知識が必要になるように感じます。
また、自立支援や就労支援に関しての記述は、基本的に「軽い人」を念頭において書かれている印象があり、「重い人」が福祉の支援を受けながら自立していく具体的なイメージはちょっと沸きにくい記述になっています。
このあたりをふまえつつ、「2冊め、3冊目の自閉症の本」として、入門書というよりはステップアップ書として読むのがいいのではないかと思います。
高名な専門家が書いた本だからといって無批判に読むのではなく、さまざまな突っ込みを入れながら自問自答しつつ読むことが重要で、特にこの本についてはそれがあてはまる、と感じています。
図解 よくわかる自閉症(レビュー記事)
自閉症の本-じょうずなつきあい方がわかる(レビュー記事)
こちらの2冊は、前々回のシリーズ記事で紹介した殿堂入り本、「自閉症のすべてがわかる本」と似たスタイルの入門書で、それぞれ特徴があります。
詳しくはオリジナルのレビュー記事を参照してください。
どちらもそれほど悪い本ではないので、書店に行って「自閉症のすべてがわかる本」の在庫がなく、代わりに上記のいずれかの本がある、ということであれば、これらの本を選んでも構わないと思います。
(ただし、ここで紹介しなかった、同じような装丁の「自閉症をはじめて学ぶ一般書」のなかには、ひどい内容のものもありますので注意が必要です。)
高機能自閉症児を育てる (レビュー記事)
比較的最近レビューした本です。
高機能自閉症児を育てた親御さんによって書かれた、一種の「当事者本」ですが、実際の中身はエピソード中心というよりは療育の一般論、理念といったものが中心になっている(その実践例として自らの子育てが描かれている)という印象です。
新書としてまとめられた本の中では完成度が高く、自閉症を知るための新書、というカテゴリでは、先の「発達障害のこどもたち」に続く新しい定番書になっていく予感がします。
(まあ、そのものズバリの「自閉症」という新書があまりにもひどいので・・・。新書カテゴリで優れた自閉症・発達障害本がもっとたくさん出て欲しいものです。)
これらの書籍のほかには、自閉症を知る・学ぶためのきっかけとなるような「まんが」もいろいろ出ています。
まんがについてはブックレビューのニーズも高いため、発見しだいできるだけすべてのものを読み、レビュー記事も書くようにしているのですが、「自閉症を学ぶ」という視点からみると、これまでにご紹介した、殿堂入りもしくはそれらの準ずる本と同じレベルでおすすめできるものということでは、残念ながらまだないように思います。
とはいえ、気軽に読めて、共感したり励まされたりするという意味ではもちろんまんがにも魅力的なものはたくさんありますので、ご興味のある方はこちらのレビュー記事まとめのうち「自閉症を知る(まんが)」のコーナーに並んでいるレビュー記事をご覧ください。
ちなみに、もっとも有名な自閉症まんがだと思われる「光とともに…
今年初頭に著者の戸部けいこ氏が亡くなられ、単行本は第15巻が最後となりました。現在は文庫化がすすめられています。ご冥福をお祈り申し上げます。
(次回に続きます。)
※ブックレビュー一覧をまとめた記事はこちら。