2010年12月06日

殿堂入りおすすめ本・まとめて再レビュー(1)

先日、当ブログへ初めてお越しいただいた方のための簡単なまとめページを作ったときに、当ブログで過去に高く評価した「殿堂入りの本」をまとめてレビューしているページがないことに気づきました。
一方で、新刊で出てくる自閉症関連の本が、いわゆる出版不況のせいもあってか少々不作気味で、強くおすすめできるような新刊のレビューができる機会が少なくなってきているという現状もあります。

そこで、これまでの「殿堂入りおすすめ本」について改めてまとめたうえで、当時のレビュー掲載から時間がたっているものについては若干私の評価が変わっているものもありますので、そのあたりも含めて「再レビュー」してみることにしました

自閉症についての本をお探しの方は、本記事にて、現時点でのコンパクトで「俯瞰的な」レビューをお読みいただけるほか、書籍名のところに配した「レビュー記事」のリンクから、オリジナルのレビュー掲載時のレビュー記事もあわせてお読みいただけます。


1.自閉症全般についての入門書

<殿堂入りおすすめ本>




自閉症のすべてがわかる本(レビュー記事

TEACCHという療育法を日本に導入した佐々木先生監修で、安定感のある自閉症入門書
イラスト中心でページ数も抑えてあり、こういった本を初めて読む親御さんであっても、1日程度で難なく読むことができるでしょう。

タイトルの「すべてがわかる」はさすがにちょっと大げさで、ネット上での書評などをみるとこの点が批判されているケースも見られますが、善意に解釈して「全般的に、概要がもれなくわかる」という意味だと考えれば、本書はまさにそういう本になっていると思います。
具体的には、「自閉症とはどんな障害なのか」「乳幼児期にはどんな兆候がみられるのか」「どうやって診断するのか」「療育(治療的働きかけ)とはどのようなもので、支援はどのように受けるのか」「家庭での取り組みにはどんなものがあるか」「成人・自立にむけた取り組みについてどう考えればいいか」といった幅広いテーマについて、的確なアドバイスがコンパクトにまとめられています。

自分の子どもが自閉症かも、と思ったらまず読みたい本として、強くおすすめできます。
子どもの自閉症を疑ってから、実際に医療機関などで診断を受けたり、福祉施設などで支援を受け始めたりするまでには、予約の問題などで何ヶ月もかかったりすることが少なくないと思いますが、その間にまずすべきことは、まず気持ちを落ち着かせること、そして本書のような、易しくて、しかも「間違っていない方向性」をもった本をしっかり選んで読んでいくことです。

なぜこの点を強調するのかというと、上記とは逆に、気持ちが動転したまま、「誤った方向性」に進んでしまうケースが残念ながら少なくないからです。

例えば重要なポイントとして、自閉症という障害のメカニズムは、まだほとんど解明されておらず、いま活用されている療育法の多くも、試行錯誤のなかから生まれたものであって、「なぜよくなるのか」の説明は、あったとしても実は「後づけ」だ、ということがあります。
子どもが自閉症だと知った親は、何よりもまず、「自閉症のおこる仕組みと原因と治しかたが知りたい」と強く思うことでしょう(私もそうでした)。でも、それに対する「誠実な答え」は「よくわかりません」なのです。そのことをまず正しく理解することが、とても重要です。
そうしないと、やたらはっきりと具体的に「自閉症の原因」を語り、「これを買えば・ここに通えば治ります」と自信満々に語る人(まあ、そのほぼ全てはインチキ業者でしょう)にだまされてしまうのです。

そういう意味でも、本書のように、難しくなく、薄くて、途中で挫折せずにすぐに最後まで読めて「全体像」がつかめる、「誠実なことが書いてある自閉症の本」をまず読む、というのはとても重要なことだと思います。そしてその後で、もっと難しい本や詳しい本を読んでいけばいいわけです。

なお、冒頭に書いたように、本書はTEACCH界のリーダーである佐々木先生が中心になってまとめられている本ですので、療育理念的に中立というよりは、やや「TEACCH寄り」の立場から書かれています。(TEACCHとは、環境に対する働きかけを重視し、自閉症の人の生活・人生全般を支援していく療育法です。)
これは、初めてこの本を読むといった段階ではまったく気にする必要はありませんが、後日ご紹介する「ABA」の本など、複数の本を深く読んでいくにあたっては留意しておく必要が出てきます。
なぜなら、療育というのは教育と似ていて、絶対的に正しい方法論は存在せず、TEACCHでは薦められるやりかたが、ABAでは否定されるといったことがあり、「正しいやり方は1つしかない」と考えてしまうと、複数の療育技法を学ぼうとしたときに混乱してしまうことがあるからです。

ともあれ、「最初の1冊」としては今でもベストの座を譲っていないと感じており、もはや「自閉症入門」の定番中の定番です
いただいた情報によると、本書は中国でも翻訳されて流通しているとのことです。

(次回に続きます。)

※ブックレビュー一覧をまとめた記事はこちら

posted by そらパパ at 20:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 療育一般 | 更新情報をチェックする
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