2006年08月05日

図解雑学 脳のはたらき 知覚と錯覚(ブックレビュー)

※しばらく出しそびれていた、ちょっと古いレビューです。「知覚」の定義など、現時点での私の認識と少し違ってきていますが、ご容赦ください。

「知覚の恒常性」について、楽しく知ることができる本を見つけました。


図解雑学 脳のはたらき 知覚と錯覚
著:宮本 敏夫
ナツメ社

1 光と眼、そして脳の働き
2 形の知覚と条件
3 幾何学的錯視図形
4 多義図形・位置と方向による錯視
5 3次元空間の知覚と錯視
6 運動の錯覚と色の錯覚
7 認知と知覚をめぐるその他の不思議

知覚の恒常性異常仮説」のシリーズ記事を書いている中で、この仮説の前提知識になっている、知覚とは何か、知覚の恒常性とは何かについて、分かりやすく解説した本を紹介できないものか、と思って探していたところ、本書を見つけました。

知覚とは何か、「感覚」とは何が違うのか、といった知覚に関する基本的な考え方について、いわゆる「目の錯覚」の楽しい事例を豊富に使いながら解説されています。


↑この有名なミューラー=リヤー図形ももちろん登場します。

また、「知覚の恒常性」についても、6ページにわたって図解つきで紹介されているので、「知覚の恒常性とは何か?」を端的に知る上でも役に立つでしょう。

ところで、なぜ「知覚」の本なのに錯覚のことばかり出てくるのでしょうか?
実はここに、知覚とは何かという本質的なヒントが隠されています。

以前少し書いたとおり、知覚というのは、目や耳などの感覚器から入ってきた情報(感覚)を脳が解析して、色や輪郭、形や奥行きなどのより高度な情報を抽出する過程を指します。

しかし、例えば輪郭や形といっても、実際に網膜に映っている「感覚情報」は、さまざまな物体が重なりあって一部が見えているだけでしかなく、「そこに何があるのか」を知るための情報としては、圧倒的に不完全です。

しかし脳は、その不完全な情報に、さまざまな「みなし」を加えて巧みに解析し、あたかも全てが完璧に見えているかのような「世界」を私たちに知覚させてくれます

この脳の「みなし計算」は、日常生活のほとんどの場面において適切に機能します。
しかし、ごく限られた条件の中や、あるいは意図的に作られた特殊な環境の下では、この「みなし計算」が破綻し、おかしな「見えかた」になってしまうことがあるのです。
これが、錯視です。

ですから、錯視という現他は、私たちの脳がどのようなやり方で感覚情報を解析し、どのような「みなし」を置いているのかを考える大きなヒントになるのと同時に、我々は世界をありのままに見ている(知覚している)わけではないという重要な事実を教えてくれるわけです。
これが、知覚と錯覚が切っても切れない密接な関係にある理由です。

(実は錯覚に関しては、心脳問題とも切っても切れない関係にあるのですが、こちらの話題についてはまたの機会に。)

さて、最後に自閉症に関連した考察です。

知覚というのが、ただ感覚情報を「ありのままに見る」ことではなく、そこに高度な「みなし計算」を加えてよりリッチな情報を「作り出す」ことにあるとすれば、この知覚というプロセスが正しく働かないような「脳の障害」として、次の2つの可能性を考えることができます。

1. 感覚入力に異常がある場合。
2. 感覚入力は正常だが、「知覚プロセス」に異常がある場合。


いずれの場合も、適切な知覚をすることができませんから、その知覚情報を使う、より高度な認知プロセスも正常に働かないことになります。

これが、私が考えている「知覚の段階の異常がさまざまな認知障害を引き起こす」というメカニズムの大きな構図になるわけです。


ともあれ、一般に「錯視」を扱った本は豪華本系のものが多く、値段が高いのが相場なのですが、本書は値段も手ごろで、それでいて錯覚と知覚の関連について十分にページを割いて解説しており、いい本だと思います。

※その他のブックレビューはこちら
posted by そらパパ at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 理論・知見 | 更新情報をチェックする
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