THE RULES―理想の男性と結婚するための35の法則
著:エレン ファイン,シェリー シュナイダー
左:ワニ文庫 右:ハードカバー
強化子をたまにしか与えない、という「ルールズ」の戦略は、強化子が飽和しにくいということに加えて、さらに別の副次的効果をも生みだすのです。
強化子を使った強化のスケジュールには、大きく分けると「連続強化」と「部分強化」があります。
例えば、療育で課題をやらせる場合、ごほうび(強化子)の与え方として次のようなものが考えられます。
1) 課題を1問解くごとにごほうびを与える。
2) 課題を10問解くごとにごほうびを与える。
3) 課題を10分間続けるごとにごほうびを与える。
4) 課題を解くごとにさいころを振り、1が出たらごほうびを与える。
5) 課題を解いても一切ごほうびを与えない。
1)のやり方を、連続強化スケジュールと呼びます。
2)のように、決まった回数ごとにごほうびを与えるやり方を、定率強化スケジュールと呼びます。
3)のように、決まった時間ごとにごほうびを与えるやり方を、定間隔強化スケジュールと呼びます。
4)のように、一定の確率でごほうびを与えるやり方を、変率強化スケジュールと呼びます。
5)は、消去と呼ばれるもので、行動を減らすために行ないます。(この場合は、課題を解くという行動が減ります)
2)から4)までは、まとめて部分強化スケジュールとも呼ばれます。連続強化と消去以外のやり方は、すべて部分強化スケジュールとなります。
一般に、ある行動を形成するためには連続強化が、維持するためには部分強化が適していると言われます。特に、変率強化スケジュールでは行動が強固に維持され、消去されにくくなることが分かっています。
このような変率強化スケジュールの特性を最大限に利用しているのが、パチンコや競馬などのギャンブルです。ギャンブルがやめられないのは、変率強化スケジュールによって強化・維持されていることが最大の理由でしょう。
自閉症の療育においては、パニックなどの問題行動と変率強化スケジュールとの関係に、特に気をつけなければなりません。
中途半端にABAをかじって、「パニックは無視して『消去』すればいい」と思いつつも、時々はついつい要求をかなえてしまっていたりすると、パニックを消去しているつもりが、実際には変率強化スケジュールによって強化・維持して頑固なものにしてしまっていることになります。
「ルールズ」においても、徹底的にこの変率強化スケジュールを使って男性の恋愛行動を維持することを狙っていきます。
5.(略)留守電にメッセージが残っていても、かけ直すのはごくたまにだけにする
13.彼に会うのは、週に二回まで
この辺りは、完全に変率強化スケジュールそのものですね。(笑)
法則13は、「彼に会う」という強化子は最大週2回という定率強化スケジュールで与えなさい、と言っているわけです。
強化スケジュールによって維持されている行動を消去しようとすると、当初はその行動がより「強く」現れること(消去バースト)があります。
例えば、自販機でジュースを買う行動は連続強化スケジュールによって維持されていると考えられますが、ある時、自販機にお金を入れてもジュースが出ない(消去開始)とします。
すると恐らく、お金を入れた人は何度もボタンを押したり、自販機を叩いたり蹴ったりして(消去バースト)、その後、あきらめる(消去完了)でしょう。
ここで、自販機を叩いたらジュースが出たとしたらどうなるでしょうか?
恐らく、次にジュースが出なかったときは、何度も何度も自販機を叩くようになるでしょう。消去バースト中の特定の行動が強化されてしまうわけです。
再び自閉症児のパニックについて考えてみます。
パニックを「消去」しようとして無視すると、大抵パニックは一時的にひどくなります(消去バースト)。ここで、大暴れしたときに根負けして要求をかなえてしまうと、「大暴れ」が強化されて、次からは大暴ればかりするようになってしまいます。
「ルールズ」も、この消去バーストを強化するという戦略を盛り込んでいます。
めったに会わない・会っても早々に切り上げられるといった、消去に近い変率強化スケジュールによって、一部の男性は、燃え上がって熱烈なアプローチをかける(消去バースト)かもしれません。
ルールズでは、そういう男性こそ「理想の男性(Mr. Right)」と呼んで、アプローチを受け入れることを説いています。
12.誕生日やクリスマスに、ロマンチックな贈り物をくれないような男性とはつき合うのを辞めなさい
34.あなたを愛してくれる人だけを愛しなさい
これは、言い換えると、「ルールズ」実践によって「消去バーストを起こした」人を選びなさい、と言っているのに近いと思います。この辺りは以前の記事でも書きました。
(次回に続きます。)