THE RULES―理想の男性と結婚するための35の法則
著:エレン ファイン,シェリー シュナイダー
左:ワニ文庫 右:ハードカバー
前回は、強化子(ごほうび)によって望ましい行動を強化することや、強化によって、やさしいことから少しずつ難しいことを教えていく「シェイピング」についてお話ししました。
ここからは、より細かいテクニックに入っていきます。
自閉症の療育でも常に気を配っていなければならないような重要なポイントがたくさん出てきますので、ぜひご参照ください。
ある行動を強化するためには、その行動の直後に強化子を提示する必要があります。
言い換えると、強化子を提示すると、その直前の行動が強化されます。
これ、一見、当たり前の常識のように見えますが、次の「ルールズ」の例を見ながらじっくり考えてみると意外と奥が深く、「常識があてにならない」ケースも少なくないことが分かります。
例として、恋愛で、女性が自分から電話をかけたときと、男性にかけさせた場合を考えます。それぞれ、男性のどんな行動が強化されるでしょうか?
ここで、「ABC分析」という手法を使ってみます。
ABC分析とは、「行動前の状況(A)」「行動(B)」「行動後の状況(C)」という3つの要素を記述することで、行動が強化される仕組みを分析しようというものです。
(1) 女性が電話をかけた場合
女性と話をしていない(A) → 放っておく(B) → 女性と話をしている(C)
(2) 男性が電話をかけた場合
女性と話をしていない(A) → 電話をかける(B) → 女性と話をしている(C)
男性にとって、女性と話をすることが強化子になっているとすると、(1)のケースでは、「放っておく」という行動(これを行動と呼ぶと批判があるかもしれませんが「放っておこうと考える」という意味です)が強化され、(2)のケースでは男性から電話をかけることが強化されています。
つまり、女性の側からガンガン電話をかけていると、その女性と話すのが楽しければ楽しいほど、男性の「電話せずに放っておく」という行動を強化していることになるのです。
そして、逆に、男性に電話をかけさせるように仕向けた場合、その女性と話すのが楽しければ楽しいほど、男性の「自分から電話をかける」という行動が強化されることになります。
ですから、以下の「恋の法則#5」は、非常にまっとうなABAの真理を表しているといえますね。
5.こちらから電話をかけないこと。留守電にメッセージが残っていても、かけ直すのはごくたまにだけにする
これに関連して、療育のときに考えなければならないのは、「ごほうびは『望ましい行動』の直後に与える」ということですね。
強化子によって強化されるのは、強化子を与えた最も直前の行動です。
ですから、例えばごほうびをあげるのに手間取って、子どもがぎゃあぎゃあ騒いだ後にごほうびをあげてしまうと、本来の「ごほうびをあげるべき行動」ではなく、直前の「ぎゃあぎゃあ騒ぐ」という行動が強化されてしまいます。
また、先ほどご紹介した「ABC分析」を、問題行動がなぜ起こっているかの分析に使うのも有効です。この辺りは、以前ご紹介したので、参考にしてください。
(次回に続きます。)