2010年10月04日

そらまめ式絵カード療育法 (20)

5.スケジュールを教える(続き)

(2)ステップ1:1枚スケジュールで、直後におこるイベントを教える(続き)


本格的なスケジュール表導入を目指した、よりやさしい最初のステップ(ステップ1)として、直後のイベントだけを掲示するやり方についてここまで解説してきましたが、それでは、この「ステップ1」は、いつまで続ければいい(本格的なスケジュールにはいつ移行すればいい)のでしょうか。

これについての考え方ですが、

・子どもが自主的に掲示板を見に行くようになる
・掲示した内容を理解していると感じられる(掲示の内容によって嫌がったり、勝手に掲示内容を変えたりするといった行動がでれば間違いなし)


といった形で、子どもが掲示板に興味を持ち、中身をある程度理解できるようになるまでは続ける必要があるでしょう。
この段階に到達するまでには、ある程度時間がかかることを覚悟しておいたほうがいいと思います。ステップ1がそれなりにマスターできる前にステップ2に進んでも、かえって混乱して習得が遅くなってしまう可能性もあります。

ここで、療育全般についての考え方にも通ずる、この「ステップ1」についての重要な考え方について書きたいと思います。

それは、

この「ステップ1」は、単にステップ2に到達するための(それ自体は)意味のない通過点ではなくて、これ自体が子どもの「見通しを持てる」というニーズに応えた、意味のある療育だ、

ということです。

ステップ2で新たに導入されることになる「時系列の概念」は、ここまでで絵カードを通じて教えてきたことと比べても、ずっと複雑で難易度の高い考えかただと言っていいでしょう。
ですから、残念ながら、ステップ2のタイプのスケジュール表がどうしても理解できない、もしくは理解するのに非常に長い時間を必要とするといったケースも出てくると思います。(実際、我が家もそんな感じです。)

でも、そんな「ステップ2のスケジュール表がなかなか理解できない」自閉症児であっても、もしステップ1の「直近のイベント掲示板」が理解できて、その情報を活用できるようになっていれば、将来の見とおしに関連した最も切実なニーズだと考えられる「これから(今すぐ)何が起こるのか分からない、知りたい」というニーズには十分に応えることができるのです。
つまり、ステップ2になかなか到達できないお子さんにとっては、ステップ1でマスターしたことが、社会に適応していくうえで「非常に役に立つスキル」になるわけです。

ですから、ここで紹介しているステップ1のトレーニングは、決して無駄にはなりません。
ステップ2をマスターできるようなお子さんにとっては、ステップ2をスムーズにマスターするための基礎的な練習になるでしょうし、逆にステップ2をマスターすることがなかなか難しいお子さんにとっては、まさにこのステップ1こそが、「将来の見とおしをもつ」というお子さんのニーズにダイレクトに役に立つトレーニングになるわけですから。

「時系列の概念」を理解するのは難しいけれど、「1つのイベントについての複数の情報を理解する」ことは可能なお子さんであれば、先にも紹介したように、イベント自体をあらわす絵カードに加えて、開始(出発)時刻を表す絵カードや、移動手段を表す絵カードなど、複数の絵カードを組み合わせて、より詳しい「イベントの情報」を提供するといった工夫もできます。
無理にこちらが目指すレールに乗せようとするのではなく、常に子どもの反応や理解力の傾向をみて、それをヒントにして療育の進めかたをダイナミックに変えていくことも重要になるわけです。

一般論としても、このように、理想的にはあらゆる自閉症の療育は、

・スモールステップでマスターしやすいものにするのと同時に、

・そのスモールステップの各段階が、ただの通過点ではなく、どの段階で止まったとしても、子どもにとって「役に立つ」ものになること。


という2つの要素を満たしたものになっているべきですし、療育を組み立てる私たちとしても、そうなることを目指していきたいものです(もちろん、常にそのようにすることは簡単なことではありませんが・・・)。

実際のところ、「絵カードを使ってコミュニケーション療育すること」それ自体も、「音声言語をマスターする」ことを「可能性としてのより上位のゴール」としつつも、それ自体が自閉症児のコミュニケーションへのニーズを高い水準で満たすことができる、そんな「有益なスモールステップ」として位置づけられるという側面ももっています

(次回に続きます。)
posted by そらパパ at 22:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 実践プログラム | 更新情報をチェックする
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