(2)ステップ1:1枚スケジュールで、直後におこるイベントを教える(続き)
スケジュール表導入を目指した、よりやさしい最初のステップ(ステップ1)として、直後のイベントだけを掲示するやり方について解説しています。
この「ステップ1」では、一度に1つの(直後に起こる)イベントだけを掲示すると書きましたが、実はこのステップでも複数の絵カードを導入することもできます。
それは、複数のイベントを複数の絵カードで表現するのではなく、「直後に起こる1イベント」についての情報を、複数の絵カードで表現するというやり方です。
例えば、「どこそこに行く」という「行き先」のイベントの絵カードに加えて、「車で行く」「自転車で行く」「バスで行く」といった「交通手段」についての付加情報を示す絵カード、さらには「何時に行く」という「出発時刻」についての付加情報を示す絵カードなどを同時に提示していくわけです。
このような複数の絵カードの提示であれば、まだ「時系列」という新しい概念は含まれておらず、同時に提示された複数の絵カードを「まとめて」ひとかたまりで認識すればいいことになりますから、時系列概念の含まれるスケジュールよりは難易度が低いということになります。
このような、時系列概念を含まない複数の絵カードの活用によって、次のステップである「時系列概念を含んだ」複数の絵カードの活用への準備を進めていくというのも悪くないアイデアだと思われます。
1つのイベントに対して複数の情報を提示する例
こちらは、以前にもご紹介した、我が家で実際に使っている1枚スケジュール用の掲示板です。
このように、時刻と移動手段の欄とあわせて、最大で3枚の絵カードが同時に掲示できるように作ってあります。
ただ、我が家の場合、当初はこの3枚の絵カードを同時に掲示していても、「何となく見ている」状態だった(実際には理解が十分できていなかったと思われます)のですが、逆にこの掲示板の意味を理解するようになってからは、「掲示板に新しい情報を貼る」→「すぐに行きたがる」となってしまって、事前にスケジュールを掲示できなくなってしまいました。
ですのでそれ以降は、将来のスケジュールについては別途「週間スケジュール表」を作ってそちらに掲示し、この「1枚スケジュール」の掲示板については、でかける直前に「交通手段」と「行き先」の2枚の絵カードだけを貼ることで、これから出かける行き先を教えるためのツールとして活用するようになりました。
娘は、このスケジュール板にスケジュールが貼られると、「行き先」の絵カードだけを自分ではがして(はがす時に横から声をかけて、絵カードを読ませるようにしています。「くるまで-かいもの」とか「あるいて-まくどなるど」とか、そういった感じです)、玄関に用意した専用の箱にその絵カードを入れ、くつをはいて外出する、という流れができています。
ちなみに、わざわざ「交通手段」を独立した情報として追加的に掲示している理由ですが、娘は車に乗って外出するのが大好きで、それ以外の交通手段を使おうとすると、外に出て「車に乗れない」ということが分かった瞬間にパニックを起こしてしまうことが多かったからです。
つまり、娘にとっては「何の交通手段を使うか」というのは、外出先がどこかと同じかそれ以上に重要な情報なので、その「ニーズ」に応える形で、私たちが情報を提供しているということになります。
今でも娘は車で外出するのが好きなので、掲示板の「交通手段」のところに「歩く」とか「自転車」とか「バス」が貼られるとその時点でちょっとパニックしますが、それでも出かける前に折り合いをつけられれば、実際に外に出てからパニックすることが少なくなります。
娘にとっても心の準備ができ、社会適応上もより望ましい状態にもっていけることで家族にとっても外出時の負担が軽減されますから、このスケジュール板が本人と家族のQOL向上に貢献していると言えるでしょう。
大切なことは、スケジュールを掲示するにしても、1枚ではなく「複数枚」の絵カードを導入するにしても、親・支援者の側の「こうさせたい」という考えよりも、お子さん自身の「ニーズ」をまず考える、ということだと思います。
このシリーズ記事の少し前でも書きましたが、そもそもなぜ絵カード療育のなかで「スケジュール」というものを導入するのかといえば、自閉症スペクトラムという障害をもったお子さんは、将来の見とおし、これから何が起こって自分は何をすることになるのかをつかむことに困難があり、その困難をうまく乗り越えられるような分かりやすい支援への「ニーズ」があるからです。
我が家の場合は「交通手段がなにか」が本人にとってとても重要な情報なのでその情報をあわせて掲示することにしました。
でもそれは、「スケジュール表には交通手段もあわせて掲示すべきだ」ということを意味しているのではなく、「スケジュール表の本質である『この後なにが起こるのかという、将来へのみとおし』を伝える」ときに、お子さん本人にとって必要な=ニーズのある情報があれば、それをきっちり掲示するようにすれば、お子さんにとってスケジュール表がとても大きな支援になるでしょう、ということであって、その「お子さんにとってニーズのある情報」が何かは、当然にお子さんによって異なる(なので、その部分は創意工夫でもってカスタマイズしていきましょう)ということなのです。
情報の取捨選択が苦手な自閉症児にとって、「情報をたくさん与える」ことは、状況によってはマイナスの影響がある場合も少なくありません。
「複数枚の絵カードの掲示」を検討する場合は、お子さんにとって本当に重要な情報を厳選して掲示するようにする必要があるでしょう。
(次回に続きます。)
僕のブログです♪是非見てくださいね~♪コメント大歓迎です(^o^)
コメントありがとうございます!
ブログも拝見させていただきました。
PECSに近い形の絵カードを使われているんですね。
我が家も、娘は12歳になりましたが、いまでもこのスケジュールボードを使っています。(このボードを使い始めて、もう8年くらいになります)
またよかったらお越しください!