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2010年09月20日 [ Mon ]

3た論法から療育リテラシーを考える(7)

インチキ療法にだまされないための基礎的な論理武装としての「療育リテラシー」について、「3た論法」という観点からまとめているシリーズ記事の、第7回にして(ようやく)最終回です。

「3た論法」とは、以下のような「理屈」で、ある療育法の有効性を主張する、誤った論理構成パターンのことを指します。

「ナントカ療育を試した・良くなった・ナントカ療法は効く!」

以下が、これまでご紹介した「3た論法」にまつわる問題点です。

(1)そもそも「3た論法」は、因果関係を示しているものではないこと、

(2)「脱落効果」によるサンプリングの偏りが、効果のない療育法を効果があるように見誤らせることがあること、

(3)有効性があるという「結果」は公表され、そうでない結果は公表されないことで効果が過大に評価される「発表バイアス」があること、

(4)悪い状態を「基準点」にすると、その後は自然に「より良くなる」可能性が高くなるという「平均への回帰」があること、

(5)発達の一方向性と離散性により、自然な発達にみられる「できるようになる」瞬間を、療育の効果と見誤りやすいこと、

(6)「効く」という先入観をもって観察すると、観察結果自体が歪んでしまうという「観察者バイアス」があること、

(7)「なんにでも効く」と言っておくことで、あらゆる「良くなった」ことを効能だと理屈づけてしまう「あとづけの効能選択」の問題。


今日ご紹介するのは、これまでご紹介した「本当は効果がないのに効果があったように見える」ものとは異なり、「実際に効果がある(しかし、その療法自体の効能=特異的効果とは呼べない)」ものです。

(8)プラセボ効果

この名前は有名ですね。

プラセボ効果とは狭義には、ある薬の治験の際、同じ実験デザインで薬効のない薬(プラセボ=偽薬)を与えた統制群に見られる治療効果のことをいいます。
乱暴にいえば、「効かないはずの薬も、いかにも効能があるかのように与えると本当に効能が現われる」という現象のことを、プラセボ効果と呼びます

これを療育にあてはめると、療育効果がないはずの働きかけ(おまじない的なものや、自閉症の機序とは無関係なはずのサプリメントなど)によって、「実際に」お子さんの状態が一定程度改善する効果が現われたとすれば、それは「プラセボ効果的な効果があった」と呼べるでしょう。
(ただし、その「改善した」という判定そのものが非常に難しいという問題があることは、これまでに繰り返しご説明してきました。ここで言っているのは、そういったすべての影響を排除しても残るような「おまじない的な働きかけの効果」です。)

プラセボ効果がなぜ現われるかのメカニズムは、実はあまり明らかになっておらず、現代科学で解明されていない「謎」の1つだと言えます。
「効きそうな薬を飲む」とか「力になってくれそうな専門家と会う」といったことが、ある種の心理療法的効果を生んでいるという説もありますが、「ペットに対してもプラセボ効果がある」といった研究もあり、次に説明するピグマリオン効果なども混入しているのかもしれません。

プラセボ効果は、それがプラセボ効果であることを自覚したうえで、臨床的にうまく活用するのであれば問題はないと思われます。ある種の「臨床の知恵」として活用することも可能でしょう。
ただ、そういった自覚なく「ナントカ療法は効く!(他の療法はダメ)」と盲信し、高額の費用を支払ったり、他の一般的な療育を中止したり忌避したりすることがあれば、有害であるといえます。
この「通常医療(療育でいえば、一般的な療育)を忌避させる」という代替医療(代替的な療育)の最大の問題については、最近、ホメオパシー関連でもたびたび話題になっていますが、療育でも同様の問題が考えられますので、機会があれば改めて別の記事として書いてみたいと思います。


(9)ピグマリオン効果・ホーソン効果

「つぼ押しダイエットを始めた・生活習慣も改善してやせた・つぼ押しダイエットには効果がある!」

「これから効果がありそうな療育を始めるぞ!」ということで、療育する側の親・支援者の側が、療育以外の場面で熱心に子どもを支援するようになり、結果として状態が改善する効果のことを、ピグマリオン効果と呼びます

それとは逆に、療育を受ける子どもの側が、療育以外の場面での生活習慣や学習態度などを変えることで「改善」が見られるケースも、このピグマリオン効果に含めることがあります。また、「いま親が/支援者が新しい療育を自分のために試してくれている・自分は注目されている・自分は特別扱いされている」といった子どもの思いが、行動全般にいい影響を与える効果もあるとされ、それは「ホーソン効果」と呼ばれます

この場合、療育そのものがおまじないに過ぎないものであっても、結果として療育行動全般が改善することで「効果」が出ている、と呼べないこともありませんが、少なくとも「療育そのものに効果がある」とは言いがたいでしょう。
これもまた、それらの効果が、その療法自体の効能(特異的効果)ではないことを自覚しつつ、臨床的にうまく活用することが大切です。


・・・さて、これまで、「3た論法」によって効能を主張すること、そしてそれを安易に信じることにどのような問題があるのかを具体的にご紹介してきました。

これらの問題をひとことでいえば、「エビデンスレベルが低い」ということになります。
「良くなった」というエピソードは、それが数値による具体的な結果を含んでいても、まともなエビデンスにはならないのです。
また、偏った「利用者の声」や「観察結果」をいくら集めて統計的に検定しても、そこから導かれる「統計的結論」は、まともなエビデンスにはなりません

自らのお子さんや身近な人、あるいはメディアを通じて、「よくなったエピソード」を経験すると、どうしてもそのエピソードと、そのときに行なっていた働きかけを結びつけて、「3た論法」から働きかけの有効性をあっさり信じてしまいたくなります。
そのときの判断として、「よくなっているかもしれないから、この働きかけを当面続けてみよう」と考えることは、多くの場合、合理的判断だと言えます。限られた情報しかない状況下で、保留つきで「エピソード」を仮に信用してみよう、と考えることまで否定するものではありません

でもそのとき、その働きかけを盲信することは避け、「もしかすると実際には効果がないのに錯覚しているだけかもしれないから、そこは注意深く検証していこう」と同時に考えることが、適切な療育を選んでいくための知恵=「療育リテラシー」だと言えます。

そして同時に、目の前の散発的なエピソードだけにとらわれず、できる限り、客観的で大規模な有効性の検証実験がないかチェックしていく習慣をつけましょう。
さまざまな療育法について、その有効性がこれまでに検証されてきています。
ネットで見ることができる、その1つのまとめが、「つみきの会」のサイトにある、「オーストラリア自閉症早期療育エビデンス・レビュー(2006)」です。
このように、統制された実験ないし統制されたメタアナリシスによって、療育の有効性をできるだけ科学的な視点から確認していき、有効性が認められた療育を優先的に取り入れていこう(そうでないものは優先順位を下げ、慎重に取り扱っていこう)、という考えかたを、EBMもしくはEBA(Evidence-based approach=エビデンス(根拠)に基づいた働きかけ)と呼びます

お子さんに対する療育の大きな方向性、方針はEBAに基づいて決め、必ずしもエビデンスが明確でない療育法については、「効いた」というエピソードを安易に過信せずに、慎重に評価しながらうまく活用していく、そういった姿勢こそが、「療育リテラシー」であると、私は考えています。

<参考記事>
http://soramame-shiki.seesaa.net/article/141968754.html
代替医療のトリック(ブックレビュー)

http://soramame-shiki.seesaa.net/article/145265467.html
いんちき療法でがっぽり稼ごう!

http://d.hatena.ne.jp/ohira-y/20100107/1262878936
科学的根拠のある、信頼性の高い情報を得る最も簡単な方法−食の安全情報blog

http://transact.seesaa.net/article/115060396.html
やっぱり人間の心は創造論を信じるような実装になっている

posted by そらパパ at 20:18 はてなブックマーク | コメント(2) | トラックバック(0) | 理論・知見
この記事へのコメント
はじめまして

現在、家内がとある代替療法に向け突っ走り始めており、「3た論法」シリーズはタイムリーで大変参考になりました。労作ありがとうございます(^^)

私にとっては溜飲を下げる思いでしたが、家内は少し異なる印象を受けたようです。大変失礼な内容も含まれているかと思いますが、ご参考までにお伝えします。(私自身はそらパパさんが意図的に面白おかしく書いておられることは承知しております)

・藁にもすがりたい母親や女優を見下してバカにしているのが不愉快
・ここに多大な情熱を傾けるのは自分自身の自己重要感のためだろう。私ならそんなヒマがあったら療育に時間を使う
・八方手を尽くしても見込みがなかった人は、まだ希望の残っている人に対し嫉妬するのだろう
Posted by zume at 2010年12月21日 09:22
zumeさん、

コメントありがとうございます。

同じ記事でも、読む方によって違う受け取られ方をすることは当然のことですし、文章を書いた人間としてはさまざまな受け取られかたをまずは等しく受け止めたいと思います。

このシリーズ記事自体は、それほど「面白おかしく」書いているつもりはありません。
具体的な例にしても、もっと露骨に自閉症の療育と結び付けてもよかったのですが、あえて少し距離をおいたような例を使ったりもしています。

代替療法についてはさまざまな問題を孕んでいることはブログやツイッターなどでも何度も触れていますが、そこで大事になってくるのが、このシリーズ記事で触れたかった「リテラシー」です。

この最終回の記事の最後にもいくつかリンクさせていただいたとおり、こういった話題を取り扱っているブログやWebページはいくつもあります。
そういったものを広く知っていくことで、少しでもリテラシーの重要性に気づいていただければいいなあ、と感じます。

これからもよろしくお願いします。
Posted by そらパパ at 2010年12月23日 11:25


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