娘は小さい頃から、お風呂で頭を洗うときにシャンプーハットをかぶらせていました。
そして、これを使わずに頭を洗えるようになることが、長いあいだ、私たちにとってのチャレンジの1つでした。
これが難しい理由は、娘には「シャワーの水が頭にかかっているとき(時にシャンプー成分が残っているとき)には、目を閉じる」という習慣がなく、シャンプー中も目を開けており、たまにアクシデントでシャワーの水が目に入ると大パニック、ということが続いていたからです。
加えて、「目を閉じたままでいる」というのは、ことばが通じない娘に教えるのは非常に難しい「行動」です。
「まばたきする」であれば、動作模倣ができるようになった娘には比較的簡単に教えることができるのですが、「目を閉じたままでいる」の場合、
・長い時間同じことを続ける行動である(長い行動を覚えるのは娘にはなかなか難しい)
・正しい行動をしている間、目が見えない(教える側のフィードバックが難しい。「よし」とか言うとその時点で目を開けてしまう)
といった難しさがあるので、なかなかうまく教えられません。(まあ、少しずつ目を閉じる時間を延ばしていくようなアプローチも可能だったのかもしれませんが、いずれにしても難しい指導になるということで、つい先送りしていた、という側面もあります。)
さらに、実際にシャワーを頭から浴びることは、娘にはかなり「怖い」ことのようで、シャワーで少しでも顔に水がかかろうものなら、立ち上がって狭いお風呂のなかを叫びながら逃げ回るような状態になってしまい、下手にトレーニングを強行すると、お風呂に入ること・頭を洗うこと自体を嫌いになってしまう危険性がありました。
ともあれ、そんな状態で解決の糸口がなかなか見つからず最近まできてしまっていたのですが、娘も小学生になり、できるだけ身体も自分で洗ってもらいたい(もちろん頭も)し、今後の学校の研修旅行などではできればシャンプーハットなど使わなくても済むようにしたい、ということで、何とかシャンプーハットを外して、直接シャワーを顔にかけられるようになるトレーニング方法を模索していました。
すると、チャンスは、ちょっと意外なところからやってきました。
娘は暑がりで、特に今年の夏の猛暑には相当苦しんでいましたが、そんな中でプールが大好きになりました。
休みの日には自分からプールバッグとタオルを持ってきて「プール(に行きたい)」と自己主張するようになりましたし、学校のプールの日には同級生の誰よりも熱心にプールで体を動かしていたそうです。
で、休みの日に行く地元のプール、学校で入るプール、どちらにも共通して、「入る前にシャワーを頭から浴びなければならない」という関門があります。
シャワーが苦手だった娘は、これまでは自分から行きたがってプールに連れて行っても、いざシャワーを浴びるときには足がすくんでしまい、パニックしてしまうことが多かったのですが、今年は暑さがこたえてプールに入りたい気持ちが強くなったのか、多少は見通しが持てるようになったのか、地元のプールでも、学校のプールでも、「プールに入る前のシャワー」への抵抗がかなり少なくなったのです。
「これはもしかするとシャワーを直に浴びるトレーニングをすすめるチャンスかもしれない」ということで、プールから出た後の更衣室でのシャワーも、本格的に頭からジャージャーかけることにしました。
これも何とかクリアです。シャワーの水が顔にかかっても、目を閉じて手で顔を覆って我慢できるようになりました。これまでの状態を考えると、これは非常に大きな「進歩」です。
続いて、いよいよお風呂でのシャンプーの問題に取り掛かります。
ここは、これまで何度か失敗しているところなので、スモールステップで慎重にすすめていきます。
まずは、プールのシャワーと同じ、「シャンプー成分ゼロ」(目が痛くならない)でのシャワーに慣れてもらうところから。
もうシャンプーが全部流れて、実際にはすすぎが必要なくなった状態でシャンプーハットを取り、頭の後ろにだけシャワーをかけます。
そして、それに慣れてきたら、少しずつシャワーをかける範囲を前に移してきて、だんだんシャワーの水が顔にもかかるようにします。ここまでくるのに約1か月。
これを始めてから、娘はシャワーの水が顔にかかると、目を閉じて両手の平で顔を覆うしぐさをするようになりました。シャワーが終わると「早くタオルをよこせ」と催促し、タオルで顔を拭いてもらうとすっきりした表情になります。
ここからは、実は時間との戦いです。
「シャワーの水がかかると目を閉じて顔を覆う」は、シャンプー成分を含む水が顔にかかるときにこそ適応的で、シャンプー成分のないただの水だとそこまでしなくても目は痛くなりません。ですから、あまり「シャンプー成分のない水をかける期間」が長いと、この習慣がなくなって、かえって目を開けるようになってしまう危険性があります。
ですから、「目を閉じて顔を覆う」という「いい行動」が現われている間に、シャンプー成分入りのシャワーの水をしっかり顔にかけるフェーズにさっさと移行することが重要だと思われます。
そんなわけで、ここ1週間くらいは、シャンプーハットつきで頭は洗うものの、シャワーですすぎを始める前にシャンプーハットを取ってしまって、直接シャワーをかけるという段階に進めて頑張っています。
これだと当然、シャンプーハットは実用上は全然意味がないのですが、一応「儀式」としてシャンプー中に不安になったりしないために段階を踏んでやっています。
いまの段階がうまくできるようになれば、次はいよいよ「最初からシャンプーハットなし」の段階に入れるので、シャンプーハットを卒業できることになる・・・はずです。
何年もの間、なかなかうまくいかずに苦労してきた「シャンプーハットはずし」の課題ですが、ようやく成功の見込みが立ってきました。
こんな調子で、トイレトレーニングとかもブレイクスルーできるといいんだけどなあ、とも思ったりしています。(^^;)
(逆にいえば、いろいろなきっかけで、これまでできなかったことが「できる」ようになることは多々あるわけですから、あきらめずにじっくりと取り組んでいくことが重要だなあ、と改めて思いました。)