2010年07月05日

そらまめ式絵カード療育法 (18)

5.スケジュールを教える(続き)

(2)ステップ1:1枚スケジュールで、直後におこるイベントを教える(続き)


さて、イベントの絵カードも作成し、「1枚スケジュール」を掲示するための掲示板を、トランジション・エリアとしてふさわしい場所(特定の意味をもたないような場所)に設置したら、その後は必要なときは常に「次のイベント」をその掲示板に掲示するようにします。
特に、外出する場合の「外出先」というのは子どもにとっても重要な情報になると思いますし、イベント絵カードの意味を理解させるためにも最適な機会になると思いますから、外出時には、必ず絵カードを掲示して外出直前に見せるようにしたほうがいいと思います。

一方、例えば毎日の食事やあそびの時間のような、パターン化されていて子どもが素直に受け入れている「日常のイベント」を掲示する「必要性」は、基本的にはないと考えられます。なぜなら、こういったイベントで子どもが混乱する場面がないのであれば、それをあえて教えなくても、適応としてはうまくいっていると考えられるからです。

でも、「必要性」がないからといって、そういった日常のイベントを掲示する「意義」がまったくないかといえば、決してそんなことはありません

というのも、こういったイベントのもつ子どもにとっての「分かりやすさ」を逆に利用して、イベント絵カードの意味(つまり、掲示板の張られたイベント絵カードは、その絵カードが意味するイベントがこれから起こるということだ、ということ)を理解させるための「練習」として活用することができるからです。

例えば、「おやつの時間」というのは、多くのお子さんにとって大好きなイベントでしょうし、恐らくおやつを出すだけで喜んで飛んでくる(つまり、それ自体として適応に問題がある状態ではない)でしょう。
でも、そこであえて「おやつの時間」というスケジュール絵カードを作って、それをトランジションエリアで確認させて、その後でおやつの時間を始めるという流れを定着させることができれば、それは「スケジュールをトランジションエリアに見に行く」という習慣づけに大きく貢献するでしょうし、スケジュール表に掲載している絵カードが「これから起こるイベント」を意味しているんだ、という「発見」を促す力にもなるんじゃないだろうかと思います。

日常のイベントをスケジュール化する、というのはそれなりに親の側の負担も大きいと思いますので、お子さんにとってスケジュール表が有意義なもの、理解しやすいものとなり、かつ、親の側の負担が過大なものにならないように、掲示するイベント・掲示しないイベントをうまく調整して、導入をすすめていく必要があるだろうと思います。

さて、実際に「1枚スケジュール」の掲示された掲示板を見せて、「次のイベント」に進む、という流れを作っていくにあたっては、できれば、

(1)掲示板を見て、次のイベントを確認する。
(2)掲示板から、「イベント絵カード」をはがす。
(3)「次のイベント」に実際にとりかかる、


という手順をふむことを目指していきたいところです。

これは、ただ「見る」よりも、「はがす」という具体的な行動を介したほうが、絵カードへの注目も高まり、絵カードとイベントとの関係に気づきやすいと考えられることと、後のステップ2でスケジュールを時系列に並べたとき、そこに並んだイベントを、絵カードをはがしながら順にこなしていくという流れを作るための練習になることが理由です。

このとき、やり方としては、

(a)要求の表現のときと同じく、はがした絵カードを親に手渡すように教える方法と、
(b)掲示板の近くに絵カードを入れるポケットを設置しておいて、子ども自身にそこに入れさせる方法、


の2つが考えられます。

このうち、おすすめは後者の「ポケットに入れる」というやりかたです
前者の方法(親に渡す)だと、要求のコミュニケーションとの親和性があり、手助け(プロンプト)もやりやすいといったメリットがある一方、常に親が近くにいなければならなくなってしまって、この先スケジュール表を自立的に活用する際に余計な手間がかかるなどのデメリットもあります。
基本は「ポケットに入れる」という方法を目指していき、どうしてもそれが難しくてできないという場合は、「親に手渡し」に変えて、難易度を下げるという取り組み方がいいのではないかと思います。
仮に(a)の「親に手渡し」とした場合も、受け取った親が「ポケットに入れる」動作をして、それをお子さんに見せることで、将来的に(b)に移行することを目指していきます。

もちろん、「絵カードをはがしてポケットに入れる」という動作を教える場合でも、当初は手助け(プロンプト)を全面的に行なってかまいません。
また、この「絵カードをはがしてポケットに入れる(そして、次の活動に向かおうとする)」という行動がうまくできたときの(行動療法的な意味での)「ごほうび」は、ことばによる賞賛(「よし!」とか「いいよ!」とか「よくできました!」など、子どもが分かる簡潔な言い方)だけでいいと思います。理想をいえば、次のイベントにとりかかること、それ自体がごほうび(強化子)になれば、素晴らしいですよね。
そういう意味では、このトレーニングを行なう時点で、飲食物ではない、ことばによる賞賛が「ごほうび」として機能するようになっている必要があるわけで、やはりスケジュールの指導にはある程度の前提スキルがあるということが分かります。

(次回に続きます。)
posted by そらパパ at 22:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 実践プログラム | 更新情報をチェックする
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