高機能自閉症児を育てる
著:高橋 和子
小学館101新書
第1章 自閉症と診断されるまで
第2章 幼稚園時代
第3章 小学校時代
第4章 中学校での支援とアルクラブ活動
第5章 義務教育後の進路
高機能自閉症児(ことばの発達が遅れたために、アスペルガー症候群ではなく高機能自閉症の診断となっているのだと思われます)を育てた(ている)母親による子育て・療育本です。
この方のお子さんは、現在京都大学の大学院に在学中とのことで、本のオビにも赤字の大きな文字ででかでかとそのことが書いてあったので、中を読む前は「我が家のようなカナー型の子どもの親が読んでもあまり役に立たないんじゃないかな?」と思っていました。
でも、Twitter等でも評判が立ち始めていて興味をもったので立ち読みしてみると、思っていたのとはかなり違って、参考になりそうな内容だったので買って読んでみることにしました。
この本の特徴は、「特定の子どもの子育て本」であり、「当事者本」であるにもかかわらず、可能なかぎり客観的な視点に立ち、一般化された「子育て・療育上の問題の解決方法」が随所に書かれている点にあると思います。
なかでも、学校に入って以降の、教師や保護者との関係作り、子どもの特性や障害を理解してもらう方法、トラブルの乗り越え方といった、「親-子-学校(教師・保護者)」関係のなかでの親の役割、動き方といったあたりの話題は、もしかするとこれまでどんな「専門書」とか「療育ハウツー本」にも書かれていなかったくらい、具体的かつ一般化された分かりやすいものになっていると言ってもいいかもしれません。
そして、この部分は間違いなく、我が家のようなカナー型の自閉症児をもつ親御さんにとっても役に立つ部分だと思います。
このような「引いた」記述ができるのは、著者が単に自閉症児の親というだけではなく、親の会を自ら設立し、さらには発達障害の研究者・臨床者にまでなっていて、自閉症について、親であると同時に専門家である、という稀有な立場にいらっしゃるからなんだろうと思います。
また、本書を実際に読む前に「子どもが京大」というキャッチコピーから想像したような「詰め込み教育」的な療育は全然登場せず、肩の力の抜けた、子ども自身の「伸びる力」を支えるような自然体の療育にも、大変共感できました。
自閉症スペクトラムのお子さんをもつ、すべての親御さんにおすすめできる本だと思います。
新たな「新書版の自閉症本」の定番誕生の予感がします。
※その他のブックレビューはこちら。
どうしても京大に目が行っちゃいますけど、そこに行くまでの過程には著者が常に真摯に対応されていて結果として適切なサポートとなっていたこと、本人が自分で進みたいと思った進路であったこと、またイジメ問題等でも周囲が支えてくれたり、大学でも大学側でサポート体制を取ってくれたり、という他力による部分もあって現在があることを冷静に書かれていて参考になりました。
学校の先生とのやり取りは、部分により嘆息したり感動したりと身近なできごとのように受け取られ近々同様のやり取りをしていかなければならないんだなと覚悟を決めました。
本人が楽しいと思う生活を送れるようにした一つの途中経過を形にした本だと思います。
そらパパさんのホームページは本当に参考になる情報ばかりで、大変感謝しております。
この本も役に立ちそうで、早速購入しました。
私には少々難解な所もありますが、こちらのホームページに助けられた者として一言お礼を申し上げます。ありがとうございます。
当初はやはり帯の”京大”に引きましたが、内容は単なる子育て本、当事者本でなく、より普遍的な内容を含んでいますね!
子供が喜ぶ遊びをみつけて興味を引き、他者への関心を広げていく方法は、他の親御さんからも習って知っていましたが、こだわりから興味の幅を広げていったり、ほぐしていったりする手法は本当に実践的で役に立ちそうです。
そういえば、テンプル=グランディンさんの著書でも、たとえばゲームが好きならそれを活かして、より高度な課題にチャレンジさせたり、ゲームに関連させて他の分野に興味を広げては、という提案がありました。
そううまくいくかなあ?と読み飛ばしていましたが、この本を参考に、うちでもこだわりほぐしにチャレンジしたいと思います。
また、P.224からP.227の、「家庭でできるソーシャルスキル援助」のチャートは、自分の子育ての軌跡を振り返るためにも、今後の見通しを立てるためにも、すぐにも役立つ図だと感動しました。
常にデスクに置いて、ことあるごとに読み返したいと思います。
この本、少し前に読了していて、私自身は参考になるところが多かったのですが、「当事者本を読んで『一般論的に』参考になるってちょっと変だな、もしかしたら独特の読み方になってしまってるかもしれない」とも感じてちょっとレビューを保留していました。
でも、Twitterなどを拝見していて、同じように「参考になった」という方がとても多かったので、それなら「私の読み取り」でレビューを軽く書いてみてもいいかな、と思ったというわけです。
速読ですが、多少はできます(^^)。
行間の空いた易しい新書とかなら、その気になれば多分15~20分で読めると思います。
ただ、これもよく言われることですが、速読をすると、「自分がもともと知っていること」しか読み取れない、ということが結構ありますよね。
自分の「枠組み」を壊すような発見は、ある程度じっくり読まないとなかなかできないようにも思います。
(逆にいえば、気軽な本とかはどんどん速読してしまいます)
私もこの本を読みましたが、知的障害を持つ子の親としては、あまり参考になりませんでした。むしろ、京都大学入学を自慢していると言うか、これが無名の私立大学だったら大学名は出さなかったのだろうと感じます。
一見冷静に書かれているように見えるのがなぜかと文章をよくよく分析すると自分の感情を他人の言葉で言わせているからです。
(クラス一腕白な男の子が、間違っているのは先生だといいました。
障害を理解しない同級生の親たちに対し、恥知らずな親もいるもんだ、といった生徒が多かったと聞きます)等。
この辺、したたかというか、自分の言葉で自分の気持ちを素直に書いて欲しかったと思います。
何で疑問を感じるようになったかと言えば高橋和子さんの主催するアルクラブの会費が高すぎるからです。
高橋さんがこのクラブでどのような利益(金銭的にも研究材料としても)を得ているのか知りませんが、腑に落ちないと感じました。
コメントありがとうございます。
うーん、京大云々は確かにちょっとイヤミな感じはありますが、私は逆に、その部分は編集者の側が「売らんがためのアピールポイント」として無理に強調しちゃったんじゃないかなあ、という印象を受けました。
だからオビにでかでかと書いてある、と。
(基本的に、私はオビに書いてある売り文句は信用しません。あそこは明確に商売意識が前面に出るので、自閉症がらみだと「治る」とか「劇的な効果」みたい表現が、そこそこ真面目な本でも平気で書いてあったりしますから。)
我が家も重度知的障害を伴った自閉症ですので、そういう意味ではこの本の子育てとは大きく違う現状にありますが、それでも考え方としては共感できたので、レビューを書かせていただきました。
会費の問題などについては、難しいですね。
確かに親の会としては非常に高額だな、という印象です。この金額だと、ちゃんと会計士を使って会計報告をやらないと不誠実だといわれても仕方ない水準だとは思います。
逆に、もしそういった会計報告をきっちりされていて、未入会の方でもそれを見られるような仕組みがあるのであれば、会費が高額なこと自体は非難されることではない、とも私は思います。