(2)ステップ1:1枚スケジュールで、直後におこるイベントを教える(続き)
前回は「1枚スケジュール」のための絵カード作りについてご説明しました。
次に、絵カードを貼り付ける掲示板を用意します。
これは、絵カードが貼り付けられればどんなものでもいいのですが、例えば100円ショップなどで売っている、ベニヤ板製の掲示板(ひもなどで吊り下げられるようになっているものが便利でしょう)と、幅広タイプの粘着式マジックテープで作ることができます。
掲示板の表側の面の、できるだけ広い範囲にマジックテープを貼り付けます。もちろん貼り付けるのは、絵カードの裏に貼り付けたものと、オスメスが逆のマジックテープになります。
あとは、この掲示板を壁に吊り下げて、行き先やイベントを表す「1枚スケジュール」用の絵カードを貼り付けられるようにすれば完成です。
↑こちらは、我が家で実際に使っている1枚スケジュール用の掲示板です。
「1枚スケジュール」は、主に外出時に行き先を教えるために使っているので、時刻と移動手段の欄も用意してあります。ただ、「1枚スケジュール」で「時刻」を教えるのは実際には難しく、このスケジュール板に行き先を貼るとすぐにそれをはがして出かけようとする(それはそれで、このスケジュール表の意味が分かっているということでもあります)ので、実際の運用では「移動手段」と「行き先・イベント」の2枚だけを使って、出かける直前に貼るようにしています。(これとは別に、週間スケジュールの表も作成して玄関に掲示しています。そちらについては後述します)
ここでは、マジックテープを使った掲示板の作り方をご紹介しましたが、同じく100円ショップなどで売っている金属製の小さなホワイトボードと、マグネットシートを貼り付けた絵カードという組み合わせも考えられますし、透明なポケットを吊り下げてそこにカードを入れるという方法、厚紙とカードの組み合わせでせんたくばさみで固定する方法など、いろいろな掲示板の作り方が考えられると思います。使いやすいと感じられるやり方で導入するのがいいと思います。
また、絵カードが簡単に入る大きさのポケットを掲示板のすぐ脇にセットしておくことで、「掲示板に貼られたイベントの絵カードをはがしてポケットに入れる」というやや高度な行動を教える仕組みを導入することができるようになります。これについても、後の回で説明していきたいと思います。
さて、これで絵カードと掲示板が完成したわけですが、実はここでとても重要なポイントがあります。
それは、「この掲示板をどこに設置するか?」です。
この掲示板の設置場所によっては、こちらが意図しない問題が発生してしまうかもしれません。
たとえば、この掲示板を、いつも食事をするダイニングルームに設置したとします。
そうすると、掲示板を見せて次のイベントに誘導しようと思って、子どもをダイニングルームの掲示板に連れて行ったら、意に反しておやつや食事を食べたがってしまうかもしれません。
こういった問題が起こる原因は、掲示板を設置した「場所」に、「食べものを食べる場所」という別の意味がくっついてしまっているというところにあります。
この問題はダイニングルームに限らず、あらゆる「特定の意味がつけられている部屋・場所」で起こってしまう恐れがあります。
そこで、掲示板を設置する場所は、できる限り「特定の意味がつけられていない場所」を選ぶようにします。
具体的には、廊下や使っていない部屋、普段は立ち寄らないような部屋のコーナーなどがそれに該当するでしょう。主に「外出すること」を絵カードで教えるような形になるのであれば、「玄関」や「リビングの出入り口のドア」のように、「外出すること」と意味付けられた場所であれば、問題なく活用できるでしょう。
このように、特定の活動の「色」(意味)がついていない場所を、ある活動から別の活動へと切り替えるための場所=トランジション・エリアとして活用するわけです。これは、TEACCHで取り入れられている「空間の構造化」に通ずる考え方です。
少し考えれば、スケジュール表を掲示する場所として、トランジション・エリアほど適切な場所はないことがわかります。
子どもは、活動を切り替えるときにトランジションエリアに行きます。
その場所は「特定の意味」を持ちません(あえていうなら「活動を切り替える場所」という意味を持っています)。子どもは、トランジションエリアで気持ちに区切りをつけて次の活動に切り替えられる態勢を作り、そのうえで、そこに掲げられた掲示板(スケジュール)を見て次の活動を知り、そしてその「次の活動」のための場所に向かう、というわけです。
もちろん、ステップ1の段階では「スケジュール表」といっても、実際には直後の活動しか掲示されていない「1枚スケジュール」にすぎません。
でも、その掲示板を家庭内のトランジション・エリアに掲示することは、その後のステップ2(本格的なスケジュール表の導入)にスムーズに移行するために、とても大切なことだと思います。
(次回に続きます。)