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2010年05月31日 [ Mon ]

ライブ・自閉症の認知システム (13)

このシリーズ記事は、先日、石川にて行なわせていただいた講演の内容を、ダイジェストかつ再構成してお届けするものです。

…かなり長くなりましたが、ここまでが、私が考える「自閉症の認知システム」という話題についてのお話でした。
恐らく、ほとんどの方にとっては、今まで聞いたことがないような話だったんじゃないかと思いますので、クイズ形式で簡単におさらいをしておこうと思います。


Slide 16 : ここまでのおさらい

まずは、ここにある質問をお読みいただいて、今回のお話を思い出しながら、皆さんで少し考えていただければと思います。

…それでは、1つ1つ答えあわせをしていきましょう。
もちろん、ここでいう「答え」っていうのは、それが絶対正しいということじゃなくて、私のお話に対応する「答え」ということですので、その点は誤解なきようにお願いします。

まず、問1の答えは「念力」です。

心と体との関係はどうなっているのか、という問題のことを、哲学の世界では「心身問題」といいます。
私たちの心が私たちの身体を動かしている、と考えると、実はそれは念力でコップを動かしているということと本質的にまったく同じことになってしまうというわけです。
このことは、私たちが素朴にイメージする「こころ」というのが、実はけっこう矛盾を抱えた怪しげなものだということを示しています。
ですから、私たちは安易に「こころを育てる」とか「心の療育」といった耳あたりがいいだけのフレーズを使うべきではないと思いますし、そういうフレーズばかり使う人の話は、眉につばをつけて聞いたほうがいいと思います。

問2の答えは「一般化」です。

たくさんの犬の経験それだけでは、犬という概念、いぬということばは成立しません。
私たちの脳は、そういう雑多な経験の集まりから、なぜか非常に洗練された1つの概念をまとめあげる不思議な力を持っているのです。
この仕組みのことを「一般化」と呼んでいます。
そして、自閉症というのは、この「一般化」の力がすごく弱いものになってしまったときに起こる発達障害じゃないだろうか、と考えられるわけです。

問3の答えは「接点」です。

療育というのは、脳を直接いじったり、目に見えないこころに働きかけたり、薬を飲ませて治せばいいとか、そういうものではありません。
そうではなく、環境とかかわって学習していくことが難しい自閉症の人に対して、まさにその環境との接点に対して具体的に働きかけることで、環境との相互作用のサイクルがうまく回るよう「お膳立て」をするのが、自閉症療育の本質だと思います。
ちょっと違う角度で言い直すならば、自閉症の療育は、自閉症の人と環境との「目に見える」接点に対して、「目に見える」ことをやりましょう、ということです。
そういうことを意識していないと、さっきの話に戻りますけど、愛情を注ぎましょうとかこころを育てましょうといったような、「念力で療育しましょう」に等しい中身の乏しい考え方に、簡単に転がっていってしまいます。

問4の答えは「道具」です。

からだと環境との境目は、実はあいまいです。
たとえば自動車というのは私たちの移動能力を拡張してくれる「道具」ですが、車を運転していて細い道を注意して走っているときなんかに、自分のからだのイメージが、車の大きさまで拡大しているように感じられることってありますよね。
もっと身近な例でいうと、ペンで字を書いているときに、ペンが紙に当たっているという「感覚」が、ペンをはさんでいる指にではなく、ペンの先に感じられたりします
そんな風に、「道具」というのは、環境に存在するものでありながら、からだそのものを拡張するという側面ももっています。
療育においては、自閉症の人にとってつかいにくい道具を、使いやすいものにカスタマイズするという働きかけが考えられます。

問5の答えは順に、「TEACCHの構造化」、「ABA」、「絵カード療育」です。

この3つは、今回の自閉症の認知システムのモデル、「一般化障害モデル」のなかにしっかりと位置づけて、それがどういう効果をもっているのかが説明できる療育法です。
現在、自閉症の療育はこの3つが大きな柱になっているといっていいと思いますが、こんな風に認知心理学的な視点からも、これらの療育法が合理的なものだという説明が可能なのは面白いですね。

最後に問6の答えは「環境」です。

自閉症の療育というのは、自閉症の人が、環境に自ら働きかけて、そこから学んでいくという、フィードバック・サイクルという仕組みをうまく回していけるよう、サポートすることです。
そのための働きかけの方向性は、自閉症の人にがんばってもらってスキルアップしてもらうというものと、私たちががんばって環境の側に働きかけていって、「かかわりやすい、わかりやすい環境」を作っていくこと、この2つがあります
この2つは、本質的に同じ機能をもったものです。
ですから、どちらかだけに偏らず、両方をうまく組み合わせて、効率的な療育を目指したいものです。

(次回に続きます。)


posted by そらパパ at 23:05 はてなブックマーク | コメント(5) | トラックバック(0) | 理論・知見
この記事へのコメント
とても参考になります。まだ、過去のライブを拝見していませんが、おいおい勉強させていただきます。ありがとうございました。
Posted by 五藤博義 at 2010年05月31日 23:26
ライブ毎回楽しみに読ませて頂いてます。

後半少し飛ばし読みをしてしまってたせいか、全問正解ならず!「道具」を外してしまいました。

接点に注目する考え方はすごく面白いなと思います。
本人のスキルアップも環境調整も本質的に同じ。
私もそう思います。
だとすると、ABAかTEACCHかという議論(ないか?)もばかばかしいですよね。

ところで、少しずれますがこの以前紹介して頂いた「アフォーダンス」について、実はもっと知りたいなと思って調べているのですが、いまいち理解できたんだかできてないんだか、分かりません。

環境から発せられる人の行動へのメッセージ?
とか、すごく単純に理解しちゃってる気がしてます。

実は今、私はABAをはなれてアートを知的障害のある大人に教える仕事をしています。

そこでは、いかに言葉が通じない人にとって分かりやすい環境を整えるかが重要です。

その手がかりになるかなと思うのですが…。
もしいいリンクなどご存知でしたら教えて頂けると幸いです。

そらパパさんは今は大変な時期だと思います。
ですから、本当にいつでもいいので時間がある時にでもよろしくお願いします。
Posted by Mママ at 2010年06月01日 01:51
五藤さん、

コメントありがとうございました。
よろしければ過去の「ライブ」の記事もご覧ください。


Mママさん、

コメントありがとうございます。

療育で、何か目の前に「できない」ことがあったときに、それを単純に「子どもを訓練して身につけさせなければ」と考えるのではなく、そのことを「できる」ようにするために、複数の方法がないかということを考えることが重要だと思っています。
もし「複数の方法」を見つけることができれば、そこから一番いい方法を選ぶことができるようになります。

アフォーダンスについては、佐々木正人氏の「アフォーダンス 新しい認知の理論」(岩波科学ライブラリー)が一番分かりやすい入門書だと思います。

佐々木氏は、アフォーダンスとアートのつながりについてもたくさんの本を書かれていますね。(Amazonなどで「佐々木正人」で検索すると出てくると思います。)
Posted by そらパパ at 2010年06月01日 22:54
佐々木正人さんですね。
情報をありがとうございます。
実はネットで勉強できないかなと、論文などもちょと読んでみていました。
やっぱり本を購入した方がいいですね〜。
Posted by Mママ at 2010年06月08日 01:07
佐々木正人氏はけっこう多作ですし、アート系の本も書いたりしていて読者の幅も広いので、日本の古本屋(ブックオフなど)とかでは、けっこう何冊も並んでいて安く買えたりします。

Amazon.co.jpでもマーケットプレイスへの出品は多いと思いますが、国外発送していなかったり送料がかかったりしてしまうんでしょうね。
Posted by そらパパ at 2010年06月09日 22:14


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