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2006年03月17日 [ Fri ]

なぜPECSは絵カード「交換」なのか?(2)

PECSの開発者であるアンディ・ボンディ氏が当初チャレンジしていた「絵ボード指差しによるコミュニケーション指導」は、4つの大きな問題に直面しました。

・ある程度の微細運動スキルが必要なこと。
・無意味な指差しと有意味な指差しの区別が難しいこと。
・大人が近くにいないとコミュニケーションが伝わらないこと。
・マッチングスキルを事前にトレーニングする必要があること。


上記のような問題は、自閉症の障害の重さでいうと中程度以上の場合に、特に深刻になってくるように思います。
「A Picture's Worth」を読んでいると、そういった障害の軽くない子どもを療育対象から除外せず、むしろそういった子どもにこそコミュニケーションのチャンスが与えられるべきだという信念が、PECSというトレーニングの方法論を生み出したのだなあと、強く感じられます。

PECSの強みとは、絵を「指差す」ことから「交換する」ことに変えたことによって、上記4つの問題をすべて解決してしまったことにあります。

まず、カードを持って渡す、というのは、並んでいる絵の中から特定の絵を指差すことに比べ、はるかに容易な微細運動だといえます。(第1の問題の解決)

また、「カードを(選んで)渡す」という行動は、カードの意味が1つに特定され、別の解釈がほとんどできないとても明確な行動になります。さらに、大人はカードを渡されたら強化し、そうでない場合は強化しないという適切な強化方針を持つことができます。(第2の問題の解決)

そして、「カードを渡す」という行為は、自分一人ではそもそも完結せず、「コミュニケーションしたい相手に近づく」という動作が必然的に含まれます。もちろん、カードを渡されて大人が気づかないということもまずないでしょう。(第3の問題の解決)

そして何より、自分からカードを持っていって、何かを伝えたい相手に渡すというのは完全に自発的なコミュニケーションであり、間違いなく、子どもの「社会性」を豊かな方向に導く力を持っています。(第4の問題の解決)

それだけではありません。

これは「A Picture's Worth」では明確に触れられていませんが、私が強調したい、「交換」という方法のとても大きなメリットがもう1つあります。
それは、カードを渡す「私」、カードを受け取る「あなた」、そしてカード交換によって手に入る「もの」、この3つが見事な「三項関係」を作り出しているということです。

認知スキルの発達を重視する自閉症療育の考え方では、「三項関係の発達」が初期の療育の非常に重要な課題の1つだと考えられます。(こちらに詳しく書きましたので参考にしてください。)
この三項関係を、じゃあ具体的にどうやったら教えられるんだ、と聞かれると答えに詰まりそうになるのですが、よくよく考えてみれば、PECSで絵カードを交換して欲しいものをもらった瞬間に典型的な三項関係が成り立つことに気づきます。しかも、この三項関係は自閉症児の自発的な行動から生まれるのです
指差しとかアイコンタクトのような、子どもにとってどういう直接のメリットがあるのか分からない「三項関係のトレーニング」を無理に教え込むくらいなら、シンプルにPECSを導入してしまえば、いきなり三項関係の基礎もコミュニケーションの基礎も教えることができると考えられるわけです。

考えれば考えるほど、なるほど、PECSはよく考えられた、自閉症児の初期のコミュニケーションスキルを伸ばすための療育法だと実感します。

というわけで、改めてここで強調したいと思います。
PECSはあくまでも絵カード「交換」システムです。絵カードを使うだけでPECSになるのではありません。
例えば、絵カードをトレーディングカードのようにクリアーブックに並べて指差して使うやり方は、PECSではありません。逆に、カードではなく実物の模型であっても、それを交換して実物と交換する仕組み(これは実際に、より障害の重い子ども向けのやり方として「A Picture's Worth」の中で紹介されています)は、PECSです。

もちろん、PECSだけが絵を使ったコミュニケーション技法ではありませんし、PECSが常にベストのやり方だというつもりもまったくありません。
ただ、PECSの理念に共感し、PECSをPECSとして、最も効果的に導入したいと考えるのであれば、絵カードを「自発的に」「交換する」ことこそが最も重要なのだということを忘れないようにしなければならないでしょう。

posted by そらパパ at 21:10 はてなブックマーク | コメント(0) | トラックバック(0) | 理論・知見
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