※左がAmazon、右が楽天ブックスです。どちらも送料無料。
うちの子かわいいっ親ばか日記〈3〉小学校編―自閉症児あやの育児まんが
著:あべ ひろみ
ぶどう社
2年生になりました!
パパの転職で、学校探し!
新しい学校で、よろしく!
あやちゃん、賞状をもらう
たかぴーの入院、あやちゃんは?
好きなコト、できるコト、増えたね!
歯医者さん、よくがんばりました
ファッションショー、大成功!
おかたづけスケジュールは、スゴイ!
2泊3日の宿泊学習 ほか
ゴールデンウィークでもあるので、気軽な気持ちで手にとることができるまんがシリーズの1冊について、肩の力を抜いたレビューを書きたいと思います。
この本は、自閉症の女の子「あや」ちゃんを中心に、家族の療育と子育ての毎日をエッセイ風に描いたまんがです。まんがを描いているのは、「あや」ちゃんのお母さんです。
多くの方がご存知だと思いますが、本書は長く続いているシリーズまんがで、本書が3冊めになります。1冊め、2冊めはこちらです。
うちの子かわいいっ親ばか日記―自閉症児あやの育児まんが
うちの子かわいいっ親ばか日記(2)入学編―自閉症児あやの育児まんが
著:あべ ひろみ
ぶどう社
このシリーズの大きな特徴は、療育を続けていく過程のなかで、もちろん障害をもった子どもも成長し、変わっていくけれども、それと同じかそれ以上に、親の側の考えかた、かかわり方、療育における優先順位のようなもの、家族のつながりといったものもどんどん変わっていく、ということを如実に感じ取ることができるということです。
シリーズ1冊めでは、お母さんはロヴァース的なディスクリートABAに傾倒し、ごく初歩的なマッチングトレーニングから始まり、お子さんに徐々に高度な模倣や生活課題などをマスターさせていく過程が、どんな課題を実行したのかを含め詳細に描写され、さながら「マンガで読むディスクリートABA入門」のような様相を呈しています。
実際、当時は少なかった「ABAの入門書」的な位置づけでこのシリーズ1作めを購入された親御さんも多かったんじゃないかと想像します。告白しますが、我が家もそれに近かったと記憶しています。
ところが、その後しばらくの間をおいて出版されたシリーズ2作め「入学編」では、ディスクリートABAの話題はすっかり見られなくなり、どちらかというとTEACCH的(というのはかなり乱暴な比喩ですが)な、環境を整えるなかで本人のスキルを伸ばしていくような、ぐっと「肩の力の抜けた」療育スタイルでの子育ての様子が描かれていました。
そして、1冊め、2冊め、どちらでも「あや」ちゃんはぐんぐんと成長します。
お母さん、お父さん、そして弟の「たかぴー」を交えた4人家族が一丸となって子育て、療育に取組んでいく姿は、療育スタイルというのはあくまで「手段」でしかなく、療育の「目的」というのは家族全員の幸せを実現していくことなんだ、ということを改めて実感させてくれます。
3冊めの本書は、「あや」ちゃん2年生から5年生までの約4年間を描いています。(考えてみると、2冊めが出てからもう4年もたっているんですね。2冊めが出たのは、まだ私がこのブログを始めてそんなにたっていない頃でした。月日のたつのは早いものだなあ、と改めて思います。)
お父さんの転職、それに伴う「あや」ちゃんの転校、新しい学校でのエピソードなど、どれもどこにでもあるような、大変だけれどもとても幸せな家族のエピソードがたくさん描かれています。そして、そういう「当たり前の幸せ」ってこんな風に「当たり前」に実現できるんだよ、ということを実例を持って示していることそれ自体が、障害をもったお子さんを抱える家族にとって、大きな励みになっていると思います。
(ちなみに、こういう本で「実用性」を語るのは野暮だと思いますが、本書の「転校の話題」は、同じように転校を余儀なくされたお子さんへの支援のやり方として、結構参考になりそうですね。)
本書を読むときは、ぜひ3冊を通してお読みになることをおすすめします。
1冊めの最初の頃、こちらからの働きかけにほとんど反応も返せなかった「あや」ちゃんが、5年生になって、テレビの星占いのランキングに一喜一憂したり、漢字の読み書きや3けたの筆算を頑張るところまで成長していく姿は、読む人に希望と感動を与えてくれることでしょう。
↑5年生になった「あや」ちゃんが、星占いに熱中している姿を描いたシーン。
親御さんが自ら描く自閉症子育てまんがエッセイ、というスタイルの本はいくつかありますが、そのなかでも一番安心して読める、定番シリーズに成長してきているんじゃないかと思います。
※その他のブックレビューはこちら。
私は、同級生やその親の方々の寛大さに驚きました。歯形がつくほど噛まれているのに、その子も親もケロッとした感じですし、学校でイジメられたりもしていないようですし、素晴らしい環境にいるんだな、と思いました。障害児の他害行動については、昨今極めて厳しく咎められる例を見聞きしていますので。
お父さんの転職についても、今回結果オーライだったから良かったものの、そうじゃなかったらどうするつもりだったのだろうか、との思いもあります。
以前、堀田あけみさんの本を読んで当方が感じた印象と基本的に同じなのですが、偶然うまくいった例だけを取り上げるのは、どうなんだろうとペシミスティックに受け止めています。
花風社のホームページに、
新刊「発達障害は治りますか?」(神田橋條治ほか 著)の紹介ページが掲載されました。(現在予約受付中)
http://www.kafusha.com/shinkanyoyaku/shinkanyoyaku.html
目次も出ています。
http://www.kafusha.com/kandabashi/kandabashi_mokuji.html
第7章でEBMと代替療法が出てくる模様です。最近の花風社はちょっとおかしな方向に進んでいるようです。
コメントありがとうございます。
ご指摘の点についてですが、まず、「偶然うまくいった例だけを取り上げている」わけではないと思います。
これはエントリ中に書こうかどうか考えて書かなかった内容なのですが、本書は1冊目が出た後は追跡的に書かれているので、2冊め、3冊めについては「うまくいったから出た」のではなく、「うまくいくかどうか分からない」状態で執筆されたものだ、ということになります。
他害について、私もアメリカの例なども聞いていますが、「厳しく責められる」とすれば、管理が行き届かなかった、ということで学校側が対象になるようですね。訴えられる例もあると聞いています。
また、特別支援学級は、それなりに困難を抱えた子どもが通っているわけですから、歯型の件で「寛大さに驚く」というのは、私の感覚とは少し違うように思います。
はじめさん自身も指摘されているように、「あや」ちゃんへの療育のスタイルは、堀田あけみさんのスタイルと通じるところがあるのかもしれませんね。
マオさん、
コメントありがとうございます。
本書の話題からはずれますが、その出版社と代替療法との関連については、以下のエントリなどを参照ください。
http://soramame-shiki.seesaa.net/article/121302929.html
言葉よりずっと大切なもの-自閉症と闘いぬいた母の手記(立ち読みレビュー)
http://d.hatena.ne.jp/bem21st/20100503/p1
さらにナナメ上に加速しそうで心配な花風社 - ベムのメモ帳
少なくともいえることは、EBMというのは、例えば何か個人的に代替療法を試してみて、「試す前と後で数値が良くなった」程度のことで評価できるものではまったくないということです。
そういった「安易は計測」程度では効果のないインチキ代替療法を排除できない、ということを知ることこそが、EBMを理解するということになります。
その辺りの、EBMについての的確な解説がきっちり書かれているか、興味はありますね。
とても暖かいレビューで嬉しいです。
定評のある・・・なんて、ちょっと恥ずかしいです・・・。
はじめさん、初めまして。読んで頂いてありがとうございます。
この度、貴重なご意見を聞かせて頂いたと思います。
ありがとうございました。
著者の方から直々のコメント、恐縮です。
このシリーズは、ふだんは私が買った本をぜんぜん読まない妻も、必ず私の後に読んでいます(ですので、今ちょうと妻が読んでいるところです)。
子育てしながらまんがを描くというのもなかなか大変だと思いますが、これからもこのシリーズが続くことを陰ながら期待し、応援しています。