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2010年03月01日 [ Mon ]

ライブ・自閉症の認知システム (9)

このシリーズ記事は、先日、石川にて行なわせていただいた講演の内容を、ダイジェストかつ再構成してお届けするものです。

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Slide 9 : 環境との相互作用モデル(図)

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Slide 10 : 環境との相互作用モデル:キーワード

かなり話が込み入ってきましたので、ここで、いまお話ししたことを図に表してみます。
この図を見ながら、私たちと自閉症の人の認知システムがどう違うと考えられるのかについて、もう少し詳しくみていきましょう。

さて、この図は、私たちが身の回りの環境とどのように関わり、その経験をどのように知識として蓄えていくのか、ということについてのモデルです。
自閉症の人のモデルではなくて、私たち自身のモデルだというところを間違えないようにしてください。また、「モデル」であって、脳のなかが物理的にこんな風に分かれているということでもない、ということにご注意ください。このモデルは、あくまでも脳の情報処理のしくみを分かりやすく説明するための便宜的なものです。
図の上のほうが私たちの脳やからだを表していて、下のほうが私たちがかかわる外の世界、つまり「環境」を表しています。

私たちが過去の経験、つまり環境からのインプットからいろいろなことを学ぶためには、ものすごく乱暴に分けて、2つの情報処理のプロセスが必要になると考えられます。ここにあるとおり、1つが「抽出処理」で、もう1つが「一般化処理」です。

ここで、「抽出処理」というのは、私たちが実際に経験したことを、個別の1つ1つの経験として、脳が情報処理できるようなデータとして取り込むプロセスのことを表していて、「一般化処理」というのは、「抽出処理」で得られた過去の個別の経験を再構成して、将来にむけて役に立つような一般的なルールや概念、行動のしかたなどを学んでいく学習のプロセスを表しています
もちろん、ここでいう「一般化」というのは、これまでご説明してきた「一般化」と、基本的に同じことを指しています。その「一般化」の素材としての個別の経験というものを作り出すのが、「抽出」というわけです。

この図ではかなり単純化してますけど、より正確には、抽出が1回、一般化が1回で終わるんじゃなくて、この抽出と一般化というセットが「階層化」されている、と考えます。
つまり、ものすごく膨大な外の世界からの情報が、1回の「抽出→一般化」のセットで少し情報圧縮されて、その圧縮された情報がまた次の段階の抽出・一般化の処理をとおってさらに圧縮されて、といった形で、情報がどんどんコンパクトで洗練されたものに変わっていくような、そういうピラミッドを下から上に上がっていくような構造の情報処理を想定しています。
でも、それを図に描くと複雑なので、ここでは単純化したこの図で説明していきます。

この図を見て分かるとおり、抽出処理によって環境から取り込まれた個別の経験は、一般化処理によって将来にむかって役に立つ一般的なルール、典型的なパターンに再構成されます。
そして、そうやって学んだルールを活用して、私たちは外の世界に働きかけていきます。
働きかけをすると、その働きかけに対して何らかの反応、リアクション、結果といったものが環境から返ってきますから、それは、「こういう働きかけをしたら、こういう結果が返ってきた」という経験として私たちに戻ってくる、つまり「フィードバック」されて、それがまた抽出処理のプロセスに取り込まれていきます。
このように、私たちは環境との間に「フィードバック・サイクル」、環境から学習するためのサイクルを作り出すことによって、うまく環境に適応し、環境から生きていくために必要なさまざまなものを最大限に得ていこうとする生き物なわけです。
子どもの「発達」というのも、つきつめていけば、このフィードバック・サイクルをぐるぐる回して環境から学び、何もないところから少しずつ脳の反応のしかたを最適化し、知識を蓄えていくことに他なりません。

ところで、ここに「からだ」という枠があります。
先ほどから「脳の」情報処理ということばを使っていますが、実際には脳が自分で歩いていって、自分で環境に触るわけではありませんね。
実際にそれをやるのは、私たち自身の「からだ」です。
環境からさまざまな経験を学んでいくのも、環境に対して働きかけるのも、この「からだ」があってこそです。

なぜそのことが大事かというと、これも後で出てきますけど、療育を行なうときに、私たちが注目すべきポイントは、自閉症児の「こころ」とか「脳」とか、目に見えなかったりさわれなかったりするものではなくて、自閉症児の「からだ」と「環境」との、目に見える「接点」にあるからです。

自閉症という障害の問題は、環境にうまく働きかけられない、環境からうまく情報を得られない、というところに典型的に現れてきます。
自閉症というのは、現象としては、環境との相互作用スキルの障害だと考えられるわけです。
それは言い換えると、自閉症のお子さんと環境とがかかわりあうところ、「接点」にこそ、我々が着目して、働きかけるポイント、チャンスがある、ということになるわけです。

そして、環境とからだとの接点には「道具」というものも存在します。
道具というのは、別に工具みたいなものだけをイメージしているわけじゃなくて、私たちの外部にあって、私たちの知性を拡張してくれるようなものすべてを含んだ考えかたです。

例えば、電卓という道具は私たちの計算能力を拡張します。
道ばたにある標識を利用できる人は、そうでない人よりも早く目的の場所にたどりつけますから、標識というのは私たちの地理的な探索能力を拡張していることになります。
クルマや電車は移動能力を拡張します。
さらに言えば、私たちがしゃべっていることばそのものも、自分は知らないけれども他の人は知っていることを知ったり、自分ではできないことをお願いして他の人にやってもらったりすることに役立ちますから、やはりこれも私たちの知性を拡張する「道具」だといえます。

こういうさまざまな「道具」を駆使しながら、私たちは自分の活動できる環境の領域、ここでは「ニッチ」と呼んでいますが、そういう活動領域を拡大して、より充実した、いろいろなものが得られる生活を送れるようになるわけです。
環境というのは、誰に対しても同様に同じだけの広さと豊かさがあるわけではありません。
例えば、檻に入っている囚人にとって、鉄格子の外に広がる景色は、見えて存在してはいますが、その囚人にとっては無いのと同じです。同じように、レストランで注文できない人にとって、レストランはないのと同じです。
実際にその人にとって「意味」があり、そこで活動することができ、その人にとって必要なもの、役に立つものが得られる場所だけがその人にとっての意味のある環境、すなわち「ニッチ」ということになるわけです。

この「ニッチ」、つまり実際に活動できる領域が狭いと、その人の生活、活動は限定された貧しいものになってしまうわけです。
ですから、生活を豊かにしていくためには、この「ニッチ」を広げていかなければなりません
この「ニッチ」を広げるための原動力となるのも、先ほどご説明した「フィードバック・サイクル」です。
これがぐるぐると回って、環境からさまざまなことを学んでいくことで、適応できる、活動できるニッチが広がっていくことになるわけです。

(次回に続きます。)

posted by そらパパ at 20:15 はてなブックマーク | コメント(0) | トラックバック(0) | 理論・知見
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