2006年03月29日

行動変容法入門(ブックレビュー)

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行動変容法入門
著:レイモンド・G.ミルテンバーガー
二瓶社

1 行動変容法入門
2 行動の観察と記録
3 行動のグラフ化と変化の測定
4 強化
5 消去
6 弱化
7 刺激性制御:弁別と般化
8 レスポンデント条件づけ
9 シェイピング
10 プロンプトと刺激性制御の転移
11 チェイニング
12 行動的スキル訓練
13 機能的アセスメントによる問題行動の理解
14 消去の適用
15 分化強化
16 先行子操作
17 弱化の応用:タイムアウトとレスポンスコスト
18 正の弱化手続きと弱化に関する倫理的問題
19 般化の促進
20 自己管理
21 習慣逆転法
22 トークンエコノミー
23 行動契約
24 恐怖・不安を軽減する方法
25 認知行動変容法

行き着くところまで来た感じがしますね。
応用行動分析を実際に行動変容に適用するためのマニュアルです。

自閉症児の親を療育者にする教育」に登場する緻密な介入プログラムを見て、自分でも(プロに頼らずに)本格的なABAの介入プログラムを組んでみたい、と感じたら、本書が大きな力になるでしょう。

大学の教科書として使われることを想定した本ですが、専門書の割にはとても読みやすく、値段も内容を考えれば格安だと思えます。(B5版2段組で500ページ弱)
しかも、タイトルのとおり「行動変容」に焦点を当ててABAを語っているため、ABAの療育への応用という視点でみたときに、類書(ABAの教科書的専門書)と比較しても、ベストのバランスを持った内容になっていると感じられます。素人が読むABA本の「ゴール」としては、決定版と呼んでいいんじゃないでしょうか。
本書の内容あたりまでをマスターしていれば、方法論としてのABAの知識はセミプロ級と言っていいように思います。実際、ABAの知識をここからさらに深めようと思ったら、本を探すよりABAを教えている大学に入学したほうがいいように思います(笑)。

本書の構成ですが、「教科書」ということもあり、行動の定義や行動分析学の歴史が最初に語られます。ここで、本書が(というよりABAがですが)徹底的行動主義の立場をとっていることが明確となります。

続いて、介入プログラムを作ったり、結果を分析したりするために必要な、行動の観察・グラフ化が説明されます。これが冒頭にあるのも、ABAが「科学」であることを著者が強く意識した結果でしょう。

次に、強化、消去、弱化、般化といったABAの基本原理が説明されます。このあたり、一般向けのABA本では分かりやすさを優先させて正確さが多少犠牲になっていることが多いのですが、本書ではさすがに1つ1つの原理に十分なページを割いて詳細に説明されています。

さらに、シェイピング、プロンプト、チェイニングといった、ABA療育の一般書でもおなじみの介入手法が実例を織り交ぜながら順次詳細に紹介されていきます。これらは、「新しい行動を身に付けるための介入方法」ということになります。

次に、「問題行動をコントロールするための介入方法」として、機能分析、消去、代替行動の分化強化、弱化(いわゆる罰)の適用とその問題、自己管理などが解説されます。

最後に、より応用的な介入手法として、習慣逆転法(問題のある習慣について、同時にできない行動を習慣づけることによってやめさせる方法)、トークンエコノミー(ごほうびシールのように、それを集めると別のごほうびと換えられるような2次的な強化子を導入するプログラム)など、自閉症児にも応用できる方法がいくつか紹介されています。

結構なボリュームがあるのは事実ですが、訳文はとてもこなれており、25もの章に細分化されているので意外と読み進めやすいです。
それぞれの章は比較的独立しており、ここも教科書らしく、「学習のポイント」および簡単な導入文で始まり、「まとめ」「練習問題」「応用問題」「間違った応用に関する問題」で終わっています。その章のおさらいだけでなく、章の内容の正しい応用・間違った応用とはどんなものかまで例示され、理解を深められる構成になっているのも秀逸です。残念ながらその「解答」は載っていませんが、特に内容的に飛躍した問題にはなっていないので、自分で十分答えは導けるでしょう。

さて、自閉症療育という観点でみると、もちろん、本書には具体的な療育プログラムが書いてあるわけではありません。
でも、「自閉症児の親を療育者にする教育」を読まれた方は分かると思いますが、ABAによる療育も、本来、マニュアル本のように決まったやり方があるわけではなく、自閉症児1人1人が抱える問題と発達レベルに応じた介入プログラムが必要です。
そういった意味では、本書のレベルまで読み切って「ABA知識のセミプロ」になることも、意味のあることだと思います。少なくとも、本書を理解してABAの療育をやっている限りは「ABAは素人には危険」と言われるような意味で、その療育がおかしな方向に進んでしまうことはないと思います(笑)。

そんなわけで、本書で、ABA関連の読書の旅のゴールの1つに「行き着いた」気がしています。
その結果、私の中で自閉症療育に関するABA本の「系列」がとりあえず完成したので、機会をみて、その「系列図」もご紹介したいと思います。

※その他のブックレビューはこちら


posted by そらパパ at 22:30| Comment(2) | TrackBack(0) | 理論・知見 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
1回目ざっと読み終わり、2回目に突入します。
内容は濃密なものの、その分厚さは丁寧さ故ですね。
1回じゃあ、とてもとても用語が頭に入ってきません。
さて、この後何回読まなければならないのか…。
主に職場で具体的事例に実践出来るところまで腑に落としたいですから。

ついでに…福島県で母親を殺し、その首を切った少年の事件がありました。
「発達障害」から「広汎性発達障害」「アスペルガー」やらの文字が週刊誌に散見されます。
『発達障害とメディア』(現代人文社)という良書がありますので、この際なので紹介させていただきます。
著者である毎日新聞記者の野沢和弘さんと、ニキリンコさん、秋桜さんの対談も載っていますよ。
Posted by 初代 at 2007年05月22日 06:57
初代さん、

この本を通読されるというのはすごいことだと思います。(私は恥ずかしながら、完全に通読しているわけではなく、事典的に使っています・・・(^^;))

ABAは心理学のなかでは理論的に抜群にすっきりした学問ですので、このあたりの本まで読んでしまえば、基礎理論面ではほぼ全体像をつかんだことになるように思います。
ABAをここまで学んで、「次」にくるものが何なのかは人によって違うと思いますが、違う理論に目を向け、世界を広げていくことも意味のあることではないかと個人的には思っています。ちなみに私は、コネクショニズムや複雑系、アフォーダンス、科学哲学のほうにいきました。

「発達障害とメディア」、面白そうですね。Amazonで取り寄せて読んでみようかと思います。
Posted by そらパパ at 2007年05月23日 00:06
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