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2010年02月01日 [ Mon ]

ライブ・自閉症の認知システム (7)

このシリーズ記事は、先日、石川にて行なわせていただいた講演の内容を、ダイジェストかつ再構成してお届けするものです。

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Slide 6 : 「知識とは」とは「一般化された経験」のこと

「一般化」という脳の情報処理のしくみが、子どもの発達過程のなかで演じる役割について、まずは「ことばの発達」という観点からお話ししました。

それ以外の「一般化」の役割ということでは、たとえば「安定した世界観を得ること」、これと一般化も関係しています

私たちにとって、自分の住んでいる家や通っている会社はいつも安定して同じに見えますが、よくよく考えてみると、これも、あらゆる経験がうまく一般化されているからこそ感じられる世界の見えかただということに気づきます。

実際には、昨日と今日では同じ家でも家具の位置が変わっていたり、新しく何かが置かれていたり、なくなっていたり、壊れていたりします。

この会場も、昨日と今日では、仕切りの位置が違ったり、机の位置が違ったり、人がたくさんいたりいなかったりといった違いがあるはずですね。さらに、聞こえてくる音や気温や湿度も、毎日違うでしょう。
私たちにとってそれらの違いが気にならず、「いつもの家」「いつもの会社」「いつもの場所」だと感じて安定した気分でいられるのは、私たちが世界を大胆に一般化したうえで、細かい違いをごっそり捨ててしまって、ある意味とても大雑把に認識しているからこそ、なのです

最後に、さらにもう一つ、ちょっと難しいんですが、この「一般化」が、人の「こころ」にまでつながっていくというお話をします。

ちょっとイメージしていただきたいんですが、この「一般化」というスキルを、「他人とかかわっていくという経験」に対して適用すると、どうなるでしょうか?
そうすると、「たくさんの他人とのかかわり」という雑多な経験が「一般化」されて、その結果として、「ヒトというのはこんな風に反応して、こんな風に行動するんだ」みたいな、「ヒトの一般的な行動原理」みたいな知識が得られるはずですよね。

次に、ヒト以外の物体とかかわる経験に対して、同じように「一般化」スキルを適用すると、どうなるでしょうか?
この場合は、物体の挙動、例えば重力に従って落ちるとか、放っておくと動かないとか、そういった素朴な物理法則についての知識が得られるでしょう。

そして、この2つを引き算するのです。どうなるでしょうか?
つまり、「ヒトとかかわった経験を一般化して得られた知識」、マイナス、「モノとかかわった経験を一般化して得られた知識」、という計算です。

そうすると、ヒトの行動原理には含まれるけれども、モノの物理法則には含まれないような、そういう法則というか原理みたいなものが残るはずですね。
この「引き算して残ったもの」、それがどんなものになるか、ちょっと想像力を働かせてみてください。

そこに残ったものは、私たちの認識の世界のなかで、ヒトをヒトたらしめているもの、モノとヒトとを区別する法則になるわけですけど、私はこれこそが、私たちが素朴にイメージする「こころ」の正体なんじゃないだろうか、と考えています

いうまでもありませんが、ヒトは、物理法則に従わない動きをすることがあります。
たとえば、突然向きを変えて別の方向に歩き出したり、外から力を加えないのに手を上げたりしますね。

そういう「モノとは違うヒトの行動」がなぜ起こるのかを理解しようと思うと、私たちはどうしても、「モノの物理法則」とは別の、何か新しい「説明のしかた」を導入せざるを得なくなります。
そこで、たとえば「何か別のことを『やろうと思った』から別の方向に向かったんだ」、あるいは「手を上げ『ようと思った』から手が上がったんだ」みたいな説明のしかたを導入したとします。
すると、そこに「こころ」という概念が生まれるわけです。
つまり、ヒトは発達の過程で、他人の行動パターンを「一般化」して学習するなかで、はじめて「こころ」という概念を獲得していくんじゃないだろうか、とも考えられるわけです。

つまり、ここでいう「こころ」とは、必ずしも実体があるものではなくて、ヒトがヒトを理解するために、「一般化」が得意な脳が生み出した説明のための概念、もっと平たい言い方をするなら「方便」みたいなものなんじゃないだろうか、と考えていることになります。

・・・いかがでしょうか。

もうお分かりのとおり、ここでは「一般化」というのを、単にことばを覚える方法とかそういう狭いものではなくて、脳の情報処理全体というか、わたしたちが世界をとらえる、認知システムの根っこにある処理としてとらえています。
限られた容量しかもたず、限られた経験しかできない私たちの脳が効率よく外の世界について学び、外の世界に適応していくためには、この一般化という情報処理のしくみがとても有効に働くわけです。
そして、その一般化という脳の情報処理のしくみが、ヒトという対象に対して適用されたときにたまたま生まれたのが「こころ」という概念かもしれない、という、これはちょっと哲学的にも新しい考え方かもしれませんが、そういう私のアイデアについてもお話しさせていただきました。

逆にいうと、私たちは、この一般化がうまくいかないときに経験する「世界」がどのようなものであるのかを知りません。
それは、たくさんの個別の経験が、うまく一般化されずに個別のままでどんどんたまっていって、すぐに満杯になってしまうような、そういう「世界」です。
この後は、ちょっと想像力を膨らませて、そういう、私たちとは違う認知システムによって経験される「世界」について考えていきましょう。

(次回に続きます。なお、今回の記事の内容は、下記の拙著にて詳しく取り上げています。)
 

posted by そらパパ at 21:46 はてなブックマーク | コメント(0) | トラックバック(0) | 理論・知見
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