http://ad.impress.co.jp/special/pioneer0912_2/
鉄壁の品質!“パイオニアDNA”はいかにして作られるか
これは、パイオニアの工場を紹介することで、パイオニアのBlu-Rayドライブの品質の高さをアピールするという、広告記事です。
私が面白いな、と思ったのは、後半に出てくるこれらの写真です。
この画像をぱっと見たとき、TEACCHのジョブトレーニングでもやっているのかと思ったのですが、これは、この工場が取り入れている工程管理の「見える化」の取り組みの様子だったのです。
本文中では「Visual Management=VM」と呼ばれているので、ちょっと検索してみたのですが、「経営の」見える化ばかりが出てきて、こういう、工場の管理上の案件の見える化のような興味深いものは見つけられませんでした。
ともあれ、こういう、TEACCHの「視覚化」のようなことが、一般的な工場の効率改善のために活用されるというのは、ある種のユニバーサルデザインでもありますし、職場の環境改善のアイデアとして面白いな、と思いました。
えーっと、以前コメントしたはずなのですが伝わっていなかったようです。なので、再度書き込みます。
今回そらパパさんがご紹介されているような活動は、いわゆる「QC活動」の中の対策として行われている「視覚化」で、一般的に広く日本の製造現場ではなされているものです。「KAIZEN活動」という呼称の方が、今風ですね。
作業者が起こすミスを、視覚化したり冶具を作ったりして事前に減らし、品質改善を行うという手法は、70年代から大手の製造業では実施されています。で実際、障害のある方たちが現場に入られる場合も、非常に役立っています。
なので、私が最初にTEACCHを知った時は、「なんだ、QCと同じじゃないか」と思ったぐらいです。結局は、TEACCHでいう構造化は、そらパパさんご指摘のとおり、健常者にもやさしいユニヴァーサルデザインですね。
コメントありがとうございます。
すみません、以前いただいたコメントがどの記事に対してのものだったか見つけられなかったのですが、QC活動とかカイゼンというと、トヨタの工場、というイメージで、品質管理のために作業を数値化・定量化してノルマ管理したり、現場の従業員が作業の非効率部分を指摘して手順や工程を変えたり、サービス残業で勉強会をやったり、といったことを指しているのだと思っていましたので、視覚化やユニバーサルデザインがこういった枠組みの中の大きな部分を占める、ということには思いが至りませんでした。(だからこそ、わざわざに「VM」なんていう新しい用語を使ってこの広告記事でも紹介されているのだろうか?と思っていたわけです)
http://kotobank.jp/word/%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%82%BC%E3%83%B3
視覚化は障害児教育だけでなく健常の人にとっても「ユニバーサルデザイン」としての効用があって有効だ、というのはその通りですね。
最近そのことを改めて思うのは、仕事のなかで、後輩になにかを教えるときや、マニュアル的なものを書くとき、上層部に対してプレゼンテーションするときなどです。
こういったときは、自分で当たり前のように思っていることや、文章で書くだけで分かりやすく整理できていると感じていることが、実は相手の頭の中ではうまく「構造化」されておらず、こちらが思っている以上に「理解されない」ということが多々あります。
そんなときに、「目で見て分かる」「見たとおりの『構造』で理解すれば正しい理解になる」「事象ごとの関係が一目瞭然」といった形で、語るべき要素を「構造化」「視覚化」していくことが、分かりやすい説明・プレゼンテーションのためにはとても大切だったりします。
最近、仕事でそういったことを感じることが何度かあって、改めて、分かりやすさを意識して表現することは、一部の人ではなく、誰に対しても有効で重要なことだなあ、と考えています。
工場などモノ作りの製造現場では、このような「視覚化」が当たり前に行われてきたかと思います。
障害者だけでなく、言葉を異にする外国人労働者にも通用するユニバーサルデザインですね。
あっ、だからAS当事者の私も働きやすかったのかも。
保育園ではオモチャやグッズの置き場が絵で示されていて、子どもたちが自分でお方付けできるようになっていました。
QC活動は面白いですよ~
ビジネス書などで〇〇シンキングとかさまざまなノウハウ本が売れていますが、ぱらぱら読むと「なんだQCの七つ道具じゃん」と感じることも多いです。
コメントありがとうございます。
やはりこういった話題は、実際に経験されたり関わられたりしている方のほうが詳しいですね。(たしかに、障害をもっている人だけでなく、外国人の方にとっても、視覚化された作業環境というのは分かりやすいのだろうと思います。)
QC活動とTEACCHの構造化的な考えかたとの関係についても、掘り下げていくと面白いテーマになるかもしれませんね。ありがとうございました。
また面白い記事を紹介していただき、ありがとうございます。
そらパパさんのように、企業にちゃんと籍を置きながら療育にも詳しい人からの情報はつくづく貴重だなと思います。
とかく教育関係者は、教育関係者の中で、親は親の中で、保育は保育、心理は心理、医療は医療と、多少オーバーラップはあるものの、狭い世界の常識であれこれ考えがちです。
デザイナーの友達に、自閉症児の親の視点から「世の中こうなったら分かりやすいのに」とぼやくと、「それって、ユニバーサルデザインじゃん」ってあたりまえのように返ってきます。
そういう考えには詳しい彼女ですが、世の中の多くの自閉症の人がいかに「分かりにくい社会」に住んでいるかは知りません。
最近息子が大きくなってきたので、将来息子がどういうところで就労したらいいのかをよく考えます。
私個人の数少ない経験からいうと、やはり「分かりやすさ」が進んでいたのは大きな企業なのではないかと思います。沢山の人が勤める会社には、誰が見ても分かるマニュアルも必要ですし。
小さな会社は一人に色んなタスクが与えられ、凄く柔軟に対応しなくてはならない時もあります(接客、秘書、制作など)。
となると大企業のが働きやすいのでしょうが、アスペの息子には面接という難関が待ってますね(汗)。
それにしても大企業は、資本があるからこういう構造化されたシステムが作れるのですよね。
それがもっと社会全体に常識として広まったらいいなと思います。
そのためには、教育、医療、心理、建築家、企業、さまざまな違うジャンルの専門家が混ざって、もっと活発にコミュニケーションすることが大事だなと思いました。
また話がそれましたが、これからも有意義な情報をお待ちしております!
自閉症の子を持つ母です。
そらパパさんの記事、いつも興味深く拝見しています。ありがとうございます。
私の勤務先は工場ではないのですが(ソフトウェア開発系です)、数年前からKAIZEN活動を行っています。
私の場合、TEACCHを知るほうが早かったので、JKLpapaさんとは逆に、KAIZEN活動が導入されたとき、「これは、構造化じゃないか」と驚きました。
本当にそっくりなので、構造化とKAIZEN活動の関連を指摘する人があまりいないのが不思議なくらいです。
どのくらい似ているか、参考までに例を挙げますと、職場のあるグループではこんなふうに進捗管理をしています。
壁に貼った表の横軸に各メンバーの名前を記載。
縦軸は「TO DO」「作業中」「完了」欄。
以下のように使います。
1.朝、今日やる作業を各自カードに書いて「TO DO」欄に貼る。
(1カードに1作業を記入。)
2.今からやる作業のカードを「作業中」欄に移動する。
(そしてお仕事に励む。)
3.終わったらカードを「完了」欄に移動する。
4.手順2.~3.を繰り返す。
これを始めたときは、テレビで見た療育園のやりかたとそっくりだー!と驚いたものです。
また、KAIZEN活動の中に「5S活動」(整理、整頓、清潔、清掃、躾)というのがあって、要するにモノの管理をわかりやすくします。
たとえば、書類棚の扉に、棚の中身と配置を図示し、管理者の名前を明記した紙を貼ります。
この貼り紙は、棚ごとに色分けします。
各棚の鍵には、貼り紙の色と同じ色のキーホルダーを付け、棚の中身を記入します。
(これにより、棚と鍵のマッチングが簡単になるわけです。)
このような工夫で実際に作業効率が上がりますし、新人さんなど職場に新しく来た人にも、わかりやすいです。
おもしろいのは、こうした施策が、TEACCHの知識があるわけではないメンバーのアイデアや試行錯誤から生まれてくることです。
本当に構造化は、みんなに優しいユニバーサルデザインなんですね。
少し古いですが、こんな新聞記事もありました。ご参考まで。
↓
自閉症:支援に「改善提案」
http://megalodon.jp/?url=http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/bebe/news/20070116ddlk14100584000c.html&date=20070120093917
コメントありがとうございます。
ちょっと気になって取り上げた小さな記事が、こうやって多くの方からのコメントを呼んで充実した議論になっていくのは、ブログの醍醐味だなあ、と改めて思いました。
ユニバーサルデザイン的なことは、それ自体に経済合理性がある、つまりそれをやるほうがやらないよりもお金が稼げるときに初めて広がっていくものだと思います。
(もしも、Mママさんがおっしゃるようにそういったものが大企業で採用されやすいとすれば、それはもしかすると人の入れ替わりが多くて、仕事が人についていないからかもしれませんね。)
「構造化」も、それが経済合理性のあるものであれば、どこにでも取り入れられて、そこに関わるすべての人にとって役に立つ存在になれるのだろうと思います。
そういう、「経済合理性のある構造化の体系」の一例が、皆さんもご指摘されているように、QCやカイゼンということになるのだろうと思いますし、もし私たちが何かの機会にそういった職場環境改善の取り組みに参加することがあったら、既にあるそういう「リアルな例」を参考にして、構造化に取り組んでいくのがいいのかもしれないな、と思いました。
p67『いずれの例においても、人が簡単なものをうまく取り扱えないとき、それを自分のせいにしてしまうかどうか、あるいは人の行動を環境のせいにするかその人の性格のせいにするかなどについては、誤ったメンタルモデルが一役かっているのだ。
“学習された無力感”
自分を責めるということは,「学習された無力感」と呼ばれる現象で説明できるかもしれない。学習された無力感とは、ある作業でしばしば数え切れないほどの失敗の経験を繰り返すような状況のことを指している。その結果として、その人は、その作業は少なくとも自分ではできないものと思い込み、無力感をもつ。そして、ついには試みることをやめてしまうものである。この感覚が他の作業に対して広がってしまえば、結果として生活を続けていくのがひどく大変になる。極端な例では、このような学習された無力感のせいで鬱病になったり、日常生活に全く適応できないという思い込みをもつようになったりする。この学習された無力感をもつためには、偶然うまくいかないという経験を何回かするだけで十分であることもある。この現象は、鬱病という臨床問題の前兆としてもっともよく研究されているが、日常の道具を使う際に何回かまずい経験をするだけでも容易に生じるかもしれない。』
コメントありがとうございます。
「誰のためのデザイン?」はアフォーダンス理論をユニバーサルデザインに応用する本として、既に古典的な評価を得ている本ですね。
(残念ながら、私は立ち読みしかしたことがありませんが・・・)
学習された無力感については、「抱っこ療法」がなぜ自閉症の子どもをおとなしくさせることがある(ように見える)のかについて考察したときなどに、触れたことがあります。
当ブログの検索窓で「無力感」で検索するといくつか出てくると思います。