http://www.jiheisho.org/dan/index.html
DAN!(Defeat Autism Now!)
日本オーソモレキュラー医学会というところが、自閉症を対象にした大々的なキャンペーンを始めようとしているようです。
直近のキャンペーンとしては、こんどの日曜日、11月29日に、札幌でセミナーをやるそうです。
まあそれだけだとよくある代替療法の宣伝活動なのですが、このセミナーを札幌市の教育委員会が後援して(しまって)いるらしい、ということが話題になっています。
(ちなみに、このセミナーの告知ページに、自閉症の人のことを「患者」と平然と書いてあるのを見てちょっと慄然としますが)
オーソモレキュラーというのは初めて聞きましたし、ことばそのものの意味もよく分からないのですが、とあるサイトでは「分子整合療法」と訳してありました。
で、実際に公式サイトを見てみると、端的にはビタミンやホルモン剤、「解毒剤」などを使う、まあよくある「サプリメント系の代替療法」のようです。
で、この「DAN!」が標榜しているのは、こちらを見ると基本的には食事(栄養)療法のようです。
前提として、予防接種に含まれるチメロサール(水銀)が自閉症の原因だとしており、「キレーションは有効だ」→「でもキレーションは負担が大きく対症療法にすぎない」→「だから抜本治療として『遺伝子治療(なんだそれは(笑))』をする」という流れのようで、簡単にいうと、
キレーションの有害性が知れ渡ってきて、怖がる親が増えたから「キレーションより『安全』な新しい代替療法」を作りました。
ということのようです。(実際、このサイトでは「キレーション」も取り扱っているので、マーケティング的にいえば「売れ筋商品が衰退期に入ったから、売れなくなってきたセグメントに新商品を追加で導入した」ということになると言えるでしょう。)
名前こそ違えど、要は「自閉症水銀原因説」の流れをくむ代替療法のようですから、当ブログの過去のキレーションの話題(1, 2, 3, 4)や、下記のリンク集などが参考になるでしょう。
http://homepage3.nifty.com/afcp/B408387254/C174902512/E865085467/index.html
自閉症とワクチン、水銀 関連記事一覧 - A Forward-looking Child Psychiatrist
このサイトでは、キレーションで自閉症が改善することは「欧米で実証されている」と書かれていますので、その主張の「実態」がどうであるかを知ることは、このサイト全体の信頼性を推し量る、1つの基準になると思います。
ちなみに、この「jiheisho.org」というドメインの所有者を検索してみると、上記セミナーで登壇予定の「キタハラ ツヨシ」という個人名で登録されていました。(USでは「autism.com」という「一番強い」ドメイン名を取っているようですし、この手の療法とインターネットというのは実は非常に親和性が高いもののようですね。)
ともあれ、こちらも注目していかざるを得ない流れです(というか、そういうのが多すぎてウォッチしきれません。自閉症、狙われすぎです(苦笑))。
参加された方のレポートなどが出てきたら、リンクをはりたいと思います。
※もう1つおまけ:
先日、「23年間、植物状態にあると思われていた男性が実はずっと意識をもっていたことが分かった」という海外ニュースが話題になっていましたが、実はこのニュース、「簡単なYES/NOの質問に足を動かして答えられる」程度に意識があることは事実のようですが、それとは別に、コンピュータを使って自由に「会話」する部分はいわゆるFCであり、実際に答えているのは介助者ではないか、という疑いがもたれているようです。
http://wiredvision.jp/news/200911/2009112623.html
「23年間昏睡」の男性:「コンピューターによる会話」は本当か? - WIRED VISION
動画はこちら。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/8375326.stm
ああ、これはヤバい。
こんなに自由に指が動くなら、さすがに23年間も気づかれないわけがないでしょう・・・。
ほんとに、世に代替療法のタネは尽きないですね・・・。
怖いことです。
このブログで色々な情報を得られるので、非常に助かっています。
ありがとうございます。
実際自分の目で確認した情報ではないのですが、今月に道東で行われたセミナーでも同様に近隣の各町教委の後援を得て、通常学級を含めて全生徒にチラシを配布したところもあったと聞いています。
こちらは札幌の案内と同じ「就学指導委員」の肩書きを掲げたDrと共に某町教委の指導室長が壇上で講演したと聞いています。
広告が載った地方紙はこちらでは購読率が非常に高く、多くの人の目に触れているはずです。
広告の切り抜きを何も言わず同僚(教員)に見せたところ「素」で感心していました。もちろん笑いで反応してくれた同僚もいましたが。
教育委員会の「後援」という物が簡単に取れてしまうものだということ、TVや新聞に載るだけで感心してしまう人が(教員も含めて)いることに改めて驚きました。
そして肩書きを得た人が上手に利用される(または、肩書きを意図的に利用する)のだということにも。
巧妙ですね。
ワクチンの保存料(水銀剤)、免疫効果増大のためのアジェバンド剤(日本製のワクチンでは使用されていない)への漫然とした不安⇒自閉症の発症、増悪⇒キレーション・解毒療法への誘導
植物状態の人の話ですが、
ALS・筋萎縮性側索硬化症の方のために開発されているBMI(脳マシーン・インターフェース)を届けてあげたいですね。
http://d.hatena.ne.jp/ajisun/20080311
驚きです。
こわいですよ。本当に。
北海道の方は自閉症協会からの抗議及び市の後援取り下げで動きがありました。(現時点ですでに後援は外れています。)
チラシが配布された学校(確認されたところ)は回収が行われています。
後は翻弄される方がどのくらいいるかが心配(かなりお金をかけた宣伝でしたので)ですが、できる動きは済んだようです。
皆さんお騒がせしました。
くまたろうさん、
私もネットなどから情報を得ているに過ぎませんが、多くの方と共有したほうがいいと感じる情報・話題については、このブログで取り上げていきたいと思います。よろしくお願いします。
(とりあえず、自閉症が「治る」と言われたら眉につばをつけろ、の法則は今回も生きていますね。)
kzmsnowさん、
追加の情報ありがとうございます。
なるほど、「後援を得る」ということは、「学校で宣伝活動ができる」ということでもあるのですね。それはちょっと怖ろしいことです。
自閉症児や親御さんに実証されていない代替療法の知識を吹き込むという側面もありますが、それ以上に、周囲の「当事者ではない人たち」に誤解を埋め込んでしまうところにも、怖さを感じます。
「後援」がそんなに簡単にとれるとすれば驚きですね。
巧妙ということでいえば、マーケティング的にみても緻密で隙のない攻めかたをしてきているように感じます。
関係者へのコネもしっかりあり、かつ資金も潤沢なようですね。(そのお金がどこから集められたのかを、冷静に考えるべきだとは思いますが)
今回の件に限りませんが、私たちが「相手」にしているのは、それだけの「実力」を(別の方向にですが)持っている人たちなんだ、ということを肝に銘じておく必要があると改めて思います。
ヒゲ達磨さん、
方向性としては、要はよくある「無認可薬品やサプリメントを売る」商売だとは思います。
宣伝文句はどんどん過激になってきていますが、日本の医師免許を持っていない人たちが自閉症に対して「治療」といったり、サプリメントを「自閉症を治す」と言って売るようなことがあるとしたら、医師法や薬事法上問題があると思われます。
そういった辺りも含めて、今回のセミナーでどういった話題が取り上げられるのか、興味深いところです。
場合は政府の補助金付きでしたが)日本を含めてアジアで一大キャーンペーンを張ったのを思い起こさせます。
http://kisekinoshijin.web.infoseek.co.jp/
コメントありがとうございます。
今に限ったことではありませんが、自閉症というのは養育者から見て、分かりにくくて、「治ら」ない障害なので、分かりやすくて治ると言ってくれる代替療法が付け入りやすいのでしょう。
「奇跡の詩人」みたいだ、という件についてはまさにそのとおりで、私も最初に見たときにすぐに思いました。
ところで、今回の件については、以下でトラックバックをいただいた「ベムのメモ帳」の記事に非常に詳しくまとめられています。
とても参考になる記事だと思いますので、今回の件に関心をお持ちの方には強く一読をおすすめします。
(DAN!ってどこかで見た記憶があるなあ、と思ったら、「言葉よりずっと大切なもの」を立ち読みしたときだった、ということをこの記事を読んで思い出しました。)
自閉症の原因がわかっていないということは「今までは治せなかったが 治らないと決まったわけではない」という解釈が正しいと思います。
TEECHでもABAでもコロロでも そのやり方がというよりも 療育者がすばらしければ(子供を観察して適切に指導できる)必ず子供は伸びていきますし、療育は一番重要なものと考えています。
私は最初は療育だけでしたが それだけでは難しいかも知れないという現実を見て、もしかしたら食事というものが大きく関与しているのではないかと息子を見ていて感じ、治療を始めました。
この治療はキレートが中心に思われているでしょうが、よく治療法をご覧になってください。うちの子は特に腸を治療しています。
私はこの治療法が絶対とは言いません。しかし これが合う子供もいるのではというのが
私の見解です。身内に医者が多いのですが、最初は疑いながらも、最近は治療にとても興味を持っています。それは うちの息子がこれだけ変ったからでしょう。
やるやらないは個人の自由ですが 表面だけ見て批判されるのはとても残念に思います。
諸外国での自閉症に関するアプローチは日進月歩です。
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
このコメントは帰省先から書いていますので、あまり時間をかけられませんが、手短に回答させていただきます。
まず、この記事では細かい内容にまで触れていませんが、トラックバックをいただいているベムさんのエントリで、かなり幅広く、このオーソモレキュラーなる代替療法の実体がまとめられています。
http://d.hatena.ne.jp/bem21st/20091128/p1
それから、この記事ではオーソモレキュラーはキレーション「ではない」と書いています。「よくご覧になってください」。できれば、「表面だけ見て批判」されず、しっかり相手の主張をお読みになったほうがいいように思います。
また、確かに自閉症に対する諸外国、あるいは日本でのアプローチは「多種多様」であり、「海千山千」ではあると思いますが、それがイコール「日進月歩」だということにはなりません。
特に、「治る」と主張すれば「治らない」と主張するアプローチより「進んでいる」と考えることは、完全に間違っていると思います。
自閉症は水銀の蓄積が唯一の発症原因とは言えませんが、因果関係が認められるのは確かです。それらを裏付ける有意な論文が幾つもありますし、実際にキレートを行って劇的に症状が快方に向かったという自閉症児の親御さんも知っています。こうした事実をどう捉えるんですかね。
>マーケティング的にいえば「売れ筋商品が衰退期に入ったから、売れなくなってきたセグメントに新商品を追加で導入した」ということになると言える
キレーションなどというのは信用できない、うちは行動療育を主にしていく。という考え方は全く否定しませんが、こうした物の見方はあまりにも
視野狭窄でゆがんでいますね。
これから治すという選択をするかも知れない人にとって、こういう自分本位な見方で貶めている言葉がどれほど可能性を削っているか‥このブログの主張を読んで良くなるかも知れない人の芽を摘んでしまっているかも、そういうマイナスの影響を及ぼすかもしれないことをほんの少しでも考えたことはないんでしょうか(いや、無いんでしょうけど
アメリカではすでに総医療費で代替医療の方が多くを占めるそうです。翻って日本はエビデンス万能主義で、科学的データに現れないものは認めようとしません。結果、患者側は有効な治療法を選べないという不幸な事態が生じています。
西洋医学だけですべての病気が治せる訳ではないし、先入観だけで一緒くたに代替医療を否定し受け入れないのは
治療を受ける側にとって、結局不利益
でしかないのではないでしょうか。
紹介に「科学的なものの考え方」と書かれていますが、自分の無能からエビデンスが見つけられないものをオカルトに堕とすようでは、真に科学的とは言えません。ただ単に硬直しているだけです。
治すという道を模索する方々に対して
は邪魔にしかならないこうしたやりくちだけを正しい、ナニナニの団体は胡散臭いと喧伝するのは‥言わせてもらうと「完全に間違っています」
コメントありがとうございます。
私のほうで細かにコメントするつもりはありません。
非常に強い信念をお持ちのようですし、私が何か書いたところで、意を翻されるわけでもないでしょう。
ただ、一点、「自閉症と水銀の蓄積に因果関係が認められるのは確か」という主張は私は正しくないと考えているので、査読を通過した有力な論文などを教えていただければ幸いです。(効いた人がいる、というのはただのエピソード主義にすぎず、自閉症の原因が何であるかも、その治療が有効であることも示していません。)
それと、エビデンスというのは「有効かどうかを判断する材料」ですので、「エビデンスがない」のに「有効」な治療法というのは、どのようなものかよく分かりません。(また繰り返しになりますが、「良くなった」という事例をいくら集めても、「有効性」は示せません。この辺りについては、ちょうど現在連載中の「3た論法から療育リテラシーを考える」というシリーズ記事も参照ください。)
それと、既に以前のコメントでも書いているのですが、このエントリでは、キレーション「ではない」新しいタイプの代替療法の話題について書いています。
なぜか、このエントリに対して繰り返し「キレーションを批判するな」というコメントをいただくのは、とても不思議なことだと思います。