2006年02月17日

アニマルラーニング(ブックレビュー)

ずっと気になっていた本ですが、Amazonで買ってみました。


アニマルラーニング―動物のしつけと訓練の科学
著:中島 定彦
ナカニシヤ出版

動物のしつけを行動療法、行動分析学(ABA)の枠組みで説明する本です。というよりは、もう少し根源的な、いわゆる「学習心理学」の概念を、動物のしつけという話題を使って説明した本、といったほうがむしろ正確かも知れません。

とても「薄っぺらな」本です。実質、50ページ強しかありません。値段を考えるとちょっと割高な印象は否めないですが、他のどの本とも似ていないという意味では、悪くない本だとも思います。

大きなポイントの1つは、行動療法で使う考え方を、いわゆるオペラント条件付けだけでなく、レスポンデント条件付け(古典的条件付け)まで含めて解説をしている点。
これだけ少ないページ数でレスポンデント条件付けに大きくページを割いている一般向け書籍というのはけっこう珍しいのではないかと思います。
自閉症児への療育で使う行動療法の方法論は、ほとんど常にオペラント条件付けになりますが、そのさらに前にある考え方として、レスポンデント条件付けを知っておくことは有用だと思います。

※レスポンデント条件付けとは、こちらが提示する刺激に対して、特定の反応を学習させる条件付けのことで、有名な「パブロフの犬」の実験は、こちらの条件付け学習になります。

また、しつける対象が動物だということも、多少皮肉ではありますが、参考になる部分です。
例えば、動物の種類や個性によって、学習させやすい行動とさせにくい行動があり、刺激や強化子の種類によっても学習の効率に大きく差が出るといった指摘があります。
目的の行動を学習させるためには、その行動がその動物にとって学習しやすいものかどうか、さらにはその学習のためにどんな方法を採用すればいいか、しっかり見極める必要があるということですが、これはまさに自閉症児の療育にも当てはまると思います。
つまり、自閉症児の学習特性や刺激に対する反応は、普通の子どもと100%同じということはありえないですし、恐らく自閉症児の中でも一人一人大きく違う部分がある可能性があります。
だとすれば、その大きく違う「個性」に対して、常に健常児と同じ視点に立ち、「普通ならできるはずだ」という思い込みの元に同じやり方を繰り返すことがいかに危険性が高く無駄が多いかも、容易に推測できます。

そういったあたりを考えると、「動物の個性に合ったしつけ」というのは、噛み締めれば噛み締めるほど味の出てくる含蓄のある言葉だなあ、と感じます。

例えばペットを飼っていて、かつ自閉症児の療育と動物のしつけの両方に役に立つ基礎知識を知りたい、といった方にはおすすめできる本だと思います。
ただし、具体的なしつけの方法などが書いてある本ではありませんので、その点はご注意ください。

※その他のブックレビューはこちら
posted by そらパパ at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 理論・知見 | 更新情報をチェックする
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