4.要求のコミュニケーションを教える(続き)
(5)ステップ3がうまくいかない場合
ステップ3において初めて、子どもは絵カードに「何が描かれているか?」を初めて意識する必要が出てきます。
それまでは絵カードはどれも全部真っ白でも、実はよかったわけですね。(絵カードに対応するアイテムは、場所に依存していたため)
ですから、このステップ3に入って、お子さんの学習が急に進まなくなる可能性も十分ありえます。相当長い期間ステップ3のトレーニングを続けても、絵カードをランダムにしか選べないといった場合は、絵カードに印刷された画像が区別できていない、ということになります。
ステップ3の本質は、この「絵カードの区別」にあるので、この区別ができない場合は、ステップ3は「習得できていない」ことになるのです。
そんな状態になってしまったときには、少し工夫することにしましょう。
ステップ3で目指している「絵カードを区別して選択して使用する」という行動は、ABAでいうところの「分化強化学習」です。
分化強化学習とは、違いのある2種類(でなくてもいいのですが、ここでは2種類だとして話を進めます)の刺激(ここでは絵カードの視覚的な違いのことを指します)を区別して、その違いに対して異なった反応をすることを学習することです。
もしも、ある分化強化学習がうまく進まなかった場合、その「区別するべき2種類の刺激」の「違い」を、より大きくして、「区別しやすくする」ことができれば、その分化強化学習の難易度を下げることができます。
つまり、今回の「ステップ3」の分化強化学習についても、「絵カードの絵柄が違う」という、その「違い」を、より大きな違いに変えていくことで、難易度を下げて子どもにマスターしやすくできる可能性がある、ということになります。
そう考えてみると、「形も絵柄以外のデザインもまったく同じで、絵柄だけが違う2種類の絵カード」という、本来ステップ3で区別することを求めている「違い」は、けっこう小さな違いだということに気づきます。ですから、ステップ3の難易度を下げるために、その「違い」を大きくしていく方法はいろいろあります。
具体的には、次のような違いを新たに加えることが検討できますね。
a.大きさを変えてしまう(片方の絵カードを大きくする)
b.色を変えてしまう(片方の絵カードの「地の色」をカラフルなものにする)
c.厚みを変えてしまう(片方の絵カードだけ分厚い厚紙を台紙にする)
d.手触りを変えてしまう(片方の絵カードだけ厚紙を直接使って、ラミネート加工を行なわない)
e.形を変えてしまう(片方の絵カードだけ丸や三角といった変わった形にする)
f.そもそも絵カードでなくしてしまう(実物をカードの上に貼りつけたものにする)
例えば、「ジュース」と「お茶」という2つの絵カードの区別が難しいお子さんのために、「違いを大きくする」ことに取り組むことを考えてみます。
簡単なやり方としては、「ジュース」の絵カードはこれまでと同じ形にして、「お茶」の絵カードはずっと大きな、長方形のはがきサイズにする方法が考えられます。これは、上記のなかの「大きさ」の違いを活用する例です。
(もちろん、複数の「違い」を組み合わせてより大きな「違い」をつけるのもアリです。組み合わせを増やした方が、基本的には「難易度」は下がっていくでしょう。ただ、あまりに違いを大きくしすぎると、後で説明するフェイディングが面倒になりますので、やりすぎは禁物です。)
この「大きさを変える」ことで区別ができるようになったら、大きくしたほうの「お茶」の絵カードのサイズを、少しずつ小さくしていきます。そして最終的には、元通りの標準サイズで、印刷されている画像だけが違うという絵カードが識別できるように少しずつトレーニングしていくわけです。この手続きも、「プロンプト→フェイディング」というABAのテクニックの一環です。
逆に、大きさを変えただけではうまくいかなかった場合は、さらに「お茶」のカードを厚紙にして赤く塗るなど、「違い」をより大きくしていくことを考えればいいわけです。
(次回に続きます。)
ここは、さら~っとクリアする子も多いし
ちょっと工夫したらクリア出来る子もいっぱいいるんですが
どんだけ頑張っても無理な子もいます。
うちのこうくんは
現在機能しているカードは「冷蔵庫開けて」と「お菓子棚あけて」と「HARIBOちょうだい」の3枚のみですが、めっちゃ便利です。
場所固定なので家族の誰でもわかりますしね。
でも、カードの区別はつきません。
どれだけ頑張ってもカードの区別はつかない子もいるんです。
何とか写真カードが理解できるようにならんもんかと格闘してきましたが
今は、具合物の方がカードよりレベルの高いコミュニケーションがとれているので、「質」のほうが大事なんだなぁと思っています。
カードにこだわるより、コミュニケーションの「質」にこだわりたいと思ってます。
なので
どうか「残念ながらステップ3は習得できていない」という部分の「残念ながら」を削除していただけないでしょうか?
決して絵カードが区別できないことは「残念なこと」ではないです。
このシリーズは私的にはとっても「ステキ♪」だと思っているので、カードの弁別ができない子もいることを前提に進めていただきたいなぁと思っています。
コメントありがとうございます。
記事の投稿日時の修正のため、コメント反映が遅くなりすみません。
ご指摘の文章についても、修正させていただきました。ご指摘ありがとうございました。
絵カードの導入も、写真や絵と実物がなかなか結びつかず、カードを見せられることを嫌がったり怒ったりするようになり、療育先の指導のもとで3年かけても理解できないということは、この子の発達がまだそこまで追いついていないのだろうと半ば諦めていました。
とはいえ、4月には就学。今まで「暴れたり泣いたりすれば過去の経験からなんとなくわかってくれる」という環境ではなくなりますし、施設の先生方も親もなんとかカードでの要求が出せるようになって欲しいとヤキモキして過ごしてきました。
そこでこのそらまめ式を試すことにし、今まで使っていたカードはすべて片付け、「冷蔵庫にジュースのカード一枚」からやり直したら、あっさりとステップ1をクリア。今はステップ2を実践中です。
ジュースを飲みすぎる毎日が続いていて、「今はダメなカード」や「タイマーで待つ」などなど合わせて理解して欲しいことがたくさんあって親としては焦ってしまうのですが、あれもこれもとなると我が子には難しいだろうし、子のキャパをオーバーしないようバランスを取るのが難しいところです。
何度も繰り返されるジュースの要求をスケジュールに組み込んでしまいたくて今は我流でやってますが、そらまめ式「スケジュール」の話に興味しんしんです。
そらまめちゃんは今どんな方式でスケジュール提示してるのかも気になります。
シリーズ再開をとっても心待ちにしてます!
コメントありがとうございます。
「そらまめ式絵カード療育」、ご参考にしていただいてありがとうございます。
また、「スケジュール」について、更新が停滞していてすみません。
ちなみに、我が家でのスケジュールの提示は大きく2つやっていて、1つはこちら
http://soramame-shiki.seesaa.net/article/20355069.html
http://soramame-shiki.seesaa.net/article/20933184.html
そしてもう1つはこちらです。
http://soramame-shiki.seesaa.net/article/33103648.html
前者は「これから出かけるところ」を提示するために、後者はちょっと長期のスケジュールを提示するために使っています。
ご参考になれば幸いです。